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孤高の映像作家、ロベール・ブレッソンのあの2作品がついに日本初公開。今も昔も、時代に葛藤するひとの灯火の映画です。

映画監督を取り上げて、”偉大”だと評する理由はさまざま。その時代における斬新な製作や、常識を逸脱した演出だったり、そのセリフや映像の強度だったり。それらが長い年月を経てもなお、ひとびとの心を動かしていてはじめて ”偉大” という言葉で評されるのだと思います。

ロベール・ブレッソン監督に関して言うならば、それに加え、人間へ向けるまなざしに凄みがあります。そしてコロナや国同士の争いで混沌としたいまだからこそ、そんな彼の作品に救いを求めたい。

過去2作品の公開に際し、日本各地でブレッソンの魅力が再確認されるのが楽しみでなりません。

昨日よりロードショーがはじまった『湖のランスロ』と『たぶん悪魔が』。これまで日本では(特集上映などを除き)劇場未公開だったわけですが、40年以上の時を経たいま、4Kデジタル・リマスターによって甦ります。

”孤高の映像作家”と謳われることが多いロベール・ブレッソン。『抵抗(レジスタンス)―死刑囚の手記より』(56)『スリ』(59)『やさしい女』(69)などで知られるフランスの映画監督で、なによりも真実を写しきることを重要視しました。

あえてプロの俳優をキャスティングせず素人を起用したり、物語を成立させるがための過度な演出を徹底的に排除。真実そのものを追求する映像表現をつづけました。寡作ながら、その唯一無二の作家性は、ゴダールらヌーヴェルヴァーグの作家たちをはじめ、世界中の映画人に多大な影響を及ぼしました。

以下にて2作品の概要を。

『湖のランスロ』

監督三作目のあとに何度も製作を試みるも、さまざまな障壁があり成立しなかった本作ですが、その後20年以上経ってついに実現しました。ブレッソン渾身の一作として迎えられ、第27回カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞しました。

物語は、アーサー(アルテュス)王伝説に登場する王妃グニエーヴルと、円卓の騎士ランスロの不義の恋を中心に、騎士道精神が崩壊していく様を現代的視点で描いた時代劇。

騎士たちのショッキングな殺戮シーンから始まるという従来のブレッソン作品からは想像もつかないような異色作でありながら、王への忠誠心、王妃への愛、そして神への誓いの間で苦悶する主人公はじめ、全編ブレッソン独自の美学に貫かれています。

『たぶん悪魔が』

本作を「すばらしく官能的」だと言ったのはフランソワ・トリュフォー。俳優を生業にしていない普通の若者4人をメインのキャストに迎えていますが、その無垢な美しさを指して褒め称えました。国際的な評価も高く、第27回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員特別賞)を受賞しています。

自然破壊が進み、社会通念が激変しつつある1970年代のパリが舞台。ひとりの若者の死と生を見つめる終末論的な物語が紡がれています。

本国フランスでは18歳未満の鑑賞が禁じられたほどの絶望に満ちた内容で、かつ急進的な社会批判が盛り込まれていることもあり、日本では長らく日の目を見ることがありませんでした。しかしこのたび上陸。深刻な社会不安、環境危機が叫ばれる今だからこそ、年代問わず観てほしい作品です。

兼ねてからブレッソンファンの方はもちろん、考えを巡らせる隙のない”エンタメ映画”に疲れた方もぜひ劇場に足をお運びください。オンラインチケットの予約はこちらから。

INFORMATION

『湖のランスロ』
監督・脚本・台詞:ロベール・ブレッソン 
撮影:パスクァリーノ・デ・サンティス
出演:リュック・シモン[湖のランスロ]、ローラ・デューク・コンドミナス[王妃グニエーヴル]、アンベール・バルザン[ゴーヴァン]
1974年 フランス/イタリア カラー ヴィスタ 84分 配給:マーメイドフィルム/コピアポア・フィルム 宣伝:VALERIA
© 1974 Gaumont / Laser Production / France 3 Cinema (France) / Gerico Sound (Italie)

『たぶん悪魔が』
監督・脚本・台詞:ロベール・ブレッソン
撮影:パスクァリーノ・デ・サンティス
出演:アントワーヌ・モニエ(シャルル)、ティナ・イリサリ(アルベルト)、アンリ・ド・モーブラン(ミシェル)、レティシア・カルカノ(エドヴィージュ)
1977年/フランス/カラー/スタンダード/97分
© 1977 GAUMONT

公開日:3月11日(金)より新宿シネマカリテほかでロードショー
配給:マーメイドフィルム/コピアポア・フィルム
宣伝:VALERIA

映画公式サイト
映画公式ツイッター
新宿シネマカリテ公式サイト

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