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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.41 “別腹感覚で好きなように楽しむ”。ギャルソン系譜の注目株・デザート。

そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

なんだかんだ6シーズン目に突入した本連載。というワケで、今回からショップが入れ替わってリスタート。トップバッターとなる第41回目は「サマー オブ ラブ(Summer of love)」のSHUNさん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


SHUN / Summer of love オーナー
Vol.41_デザートのハンティングジャケット&ブルゾン

―SHUNさんにとっての、ニュー・ヴィンテージとは?

以前、この連載にも登場した〈ブルールーム(blue room)〉の2人が話していたことと基本は一緒ですかね。ウチの場合は、デザイナーズブランドやアウトドアブランド、サーフブランドを扱っているのですが、その辺の80〜90年代のアイテムの中にも、ニュー・ヴィンテージと言えるモノは多くあります。今回紹介する〈デザート(Dezert)〉なんかは、まさにそうでしょうね。

―どういったブランドでしょうか?

(コムデギャルソン・オム(COMME des GARCONS HOMME))の立ち上げに参画し、80年代半ば頃まで全てのパターンメイキングを担当していた田口成彦さんが、デザイナーとして1980年に独立してスタートさせたデザイナーズブランドです。2000年に入ると生産背景を中国に移し、ブランド名も〈ディップ(dip)〉に変更。現在は〈dzt〉というライン共々、精力的に展開されているようですね。今回は、その2000年まで存在した〈デザート〉のブルゾンとジャケットを持ってきました。まずはこのハンティングジャケットから。

デザートのハンティングジャケット ¥55,000(サマー オブ ラブ)

―なんとも男っぽいデザイン! 何よりこの生地感が面白いですね。

ですよね。2000年頃のアイテムなので〈デザート〉では最後期にあたります。この時期の特徴として特殊な素材使いが挙げられ、こちらに使われているナイロンメタルという生地も、金属糸が56%混紡されていて、光沢とシャリ感が特徴。あの〈ストーンアイランド(Stone Island)〉のアイテムでも使用されていたりします。

―へぇ〜。このフューチャーライクなテック感も、2000年頃の雰囲気ですね。

面白いですよね。その一方でコーデュロイやボアといった、どちらかと言えば野暮ったく土臭い印象を与える素材も取り入れていたりして。ミリタリーやワークをベースとした男っぽいディテールとテック感のある素材の対比からは、当時の空気感も垣間見えてきますし。この伝統と革新の絶妙なバランス感覚に、脈々と受け継がれてきたギャルソンイズムを感じます。

―続いてこちらは?

もう少し遡って90年代のアイテムで、袖のポケットやボタンの仕様を見る限り、ベースとなっているのはフライトジャケットですかね。90年代は、身幅広め・着丈短めという80年代の特徴を残しつつも、製品染めを施したり付属パーツを増やすなどして、元のテイストを変えずにアクセントを加えるパターンが多い印象を受けます。

デザートのブルゾン ¥55,000(サマー オブ ラブ)

―これまた男らしくも品のある表情で。

このパイピングテープなんかも、ココんちではよく多用されるディテールといえます。しっとりした肌触りのコットンツイル生地にミリタリーな意匠。まさに〈デザート〉初心者にオススメしたいお手本ですね。ちなみにブランドタグは3種類あり、このバーガンディのボックス型は中期のものになります。

―非常に興味深いブランドですが、まだ買えるんですかね?

ぼく自身、親の影響で好きだったこともあり、ウチではずっと扱い続けていますが、ギャルソンから独立して生まれたブランドという文脈もあってか、最近では他の古着屋さんでもチョコチョコ見かけるようになりました。海外ではすでに注目されていて、この辺りのアイテムなら10万円以上で取引されているとか。ウチでは5万円のラインをなるべく超えないようにしていますが、2着ともデッドストックですし、スペシャル扱いということで。

―SHUNさんと同世代(20代半ば)くらいなら、実は親が持っていたなんてこともありそう。

ですね。実際、ウチに入荷してくる際に1番多いのは、コレクターの方が手放すケースですし。皆さんコレクションとして保管されていたので、状態も良いしデッドストックなんてことも多々。20年間に渡って展開されていたブランドなので、確実に日本中のクローゼットに眠っているのは間違いないんですが、なかなか出てこないんですよねぇ(笑)。

―では、運よく手に入ったらどう着こなすのがオススメですか?

いわゆるアーカイブとして捉えてしまうと、着て楽しむというところからは少しズレてしまうので、あくまで古着の一択として気にせず取り入れるのが正解でしょうね。当時の雑誌を調べても〈グッドイナフ(GOOD ENOUGH)〉や〈ア ベイシング エイプ(A BATHING APE)〉などに比べ、当時、どんなアイテムとどうやって合わせて、どういうスタイルで着こなしていたかといった情報が全然出てこないのが〈デザート〉。だったら気負うことなく自由に、デザートという名前の通り、別腹感覚で楽しんでみては?

SHUN / Summer of love オーナー
作り手の意匠に感じるトキメキを大切にし、デザイナーズクロージングを幅広くピックアップ。それらをSoL独自の解釈により新しいビジュアルにブラッシュアップ。これにより“ヴィンテージ”の今日的な提案を行うユーズド・セレクトショップ「サマ― オブ ラブ(Summer of love)」の若きオーナー。現在は、本連載に以前登場した「ブルールーム(blue room)」と共に、渋谷で実店舗を運営している。
公式サイト:summeroflove-sumday.shop
インスタグラム:@___summer_of_love___

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