ローファーの名作は数あれど、業界人に思い入れのある一足を尋ねれば、クラシック畑はもちろん、モード畑の人間からもその名があがるのが〈グッチ(GUCCI)〉だ。
クラーク・ゲーブル、ジョン・ウェイン、フレッド・アステア。煌めくスターの足元を飾った「グッチ ホースビット ローファー 1953」の見どころは新たなデザイン、すなわちホースビットとクラフトマンシップの融合にある。
アルド・グッチが考案したホースビットは馬具のハミからインスパイアされた。馬具は〈グッチ〉のルーツともいうべき存在だった。
ダブルリングとバーで構成されるホースビットはもとはバッグを飾るものだったが、1953年、ローファーに採用された。上質極まりないレザーを熟練の職人仕事で仕立てたそのローファーは一足飛びにマスターピースの階段を駆け上がる。そうして80年、「メトロポリタン美術館」の永久所蔵コレクションに加えられて名声を不動のものとした。
現在のカラーバリエーションはブラック、ブラウン、グレー、グリーンの4色。若草を思わせるグレーがまた、たまらない。
今年誕生から70周年を迎えた「グッチ ホースビット ローファー 1953」。定番色のブラックとブラウンの他、グレーは昨年末に登場したニューカラーだ。各¥117,700
靴の内側にはこのローファーだけのタグが縫い付けられている。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa