〈チューダー(TUDOR)〉のダイバーズウォッチのとっかかりは1954年にリリースされた「Ref.7922」。それから4年後の58年にはアメリカ海軍に正式採用された。両者の蜜月の関係のはじまりである。ネイビーシールズが62年の結成時から数十年にわたって〈チューダー〉を命綱がわりに手首に巻いていたのは有名な話だ。
アメリカ海軍に採用されてきた歴史にオマージュを捧げたモデルが「ペラゴス FXD」にラインナップされた。
新作のポイントはブラックダイヤル&ベゼルとそのベゼルに潜水時の正確な計測を担保する逆回転防止式を採用したことにある。
精悍さを増した面構えは60年代後半の「チューダー オイスター プリンス サブマリーナー Ref.7016」を彷彿とさせるが、仔細に観察すれば初期の「チューダー サブマリーナー」に特徴的なポインテッドクラウンガードなどもまぶされており、このエディット加減も目の肥えた男ならたまらないところだ。
モデル名にも冠した、ミリタリーウォッチ由来のフィクスド(Fixed)ラグ構造、マニュファクチュール キャリバーMT5602、そしてゆうに150年の歴史を有する「ジュリアン・フォール」社が織り上げたファブリックストラップ――「ペラゴス FXD」には現代最高峰の “ミリサブ” を謳うに足るスペックが搭載されるが、新作はその目盛りをさらに進めたといっていい。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa