ローファーの名作は数あれど、これまでの評価にこだわらず、自らの目を信じて選びたいというのであれば〈ダンヒル(dunhill)〉のそれは選択肢に入れて損のない一足だ。
甲の立ち上がりを抑えたラウンドトウ、コンテンポラリーアートを思わせる端正なステッチング、ペニースロット、艶やかなカーフレザー――現代の空気をたっぷり吸い込んでアウトプットした〈ダンヒル〉の新作からは、長らく名作の座に君臨してきたモデルにはない、モダンさが感じられる。
試しに手持ちのパンツに合わせて姿見の前に立ってほしい。脛からつま先に向かって描かれるラインの美しさには我ながら惚れ惚れするはずだ。
パッドを充填したインソール、ラバーインジェクションのレザーソール、そして気前よくカーフをまとったライニングで構成されるこのローファーは履き心地も申し分がない。
カラーは写真のブラック、ダークブラウンの他、チェスナットがある。
男性というものは行きつけに辿り着くとよほどのことがない限り、浮気をしない。例えば、日本の男性はおおよそ床屋を変えない、と昔からいわれてきた。おそらく英国紳士も馴染みのバーバーがあることだろう。それはそれでジェントルマンシップを感じるけれど、進取の気性もまた、紳士の本分である。足元に新風を吹き込むのは悪くないアイディアだ。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa