鉄条網をかいくぐった兵士は民家に忍び込んだ。手当たり次第にキッチンを漁り、空腹を満たした男はあちこちほつれていることに気づく。急場凌ぎにガムテで穴を塞いだ――そんな小説の書き出しを想像したくなるジャケットとシャツである。
〈メゾン マルジェラ(Maison Margiela)〉のこの春の新作は聞けばなるほど、USネイビーのミリタリーウェアがモチーフになっているという。
ヴィンテージ感のあるインディゴの色合いもいい。手に取ればデニム特有のごわごわとした手触りがない。意表を突かれてその生地をまじまじとみつめれば、どうやら平織りのようだった。
デニムといえば綾織りが一般的であり、平織りのそれは正しくはシャンブレーということになる。そう、シャツでお馴染みの組織なのである。
ライトウェイトで通気性にすぐれるから、これからの季節に格好だ。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa