ロゴが認められるのはフライボタンとウエストバンドに縫いつけられた白地の生地のみ。レザーパッチを排した5ポケットは慎しみ深い〈ザ・ロウ(THE ROW)〉ならではの一本だ。
採用した生地は、古きよきブルージーンズの風合いをたたえる一本がオーガニックコットン、甘さを感じさせるウォッシュドカラーの一本がクラシカルなミディアムウェイトのコットン。シルエットはいずれも裾にかけてゆるやかにテーパードさせたリラックスフィットに仕立てられている。
リベットさえも取り去ってしまったそのデニムは素材とシルエットのポテンシャルがくっきりと浮かび上がる。ではそのポテンシャルは何かといえば、クリーンという一言に尽きる。
試しに穿いて驚いた。控えめにいっても数センチは脚が長くなった気がするのだ。ひとえにそれは無駄のないパターンのなせる技であり、ビスポークテーラーが連綿と紡いできたもろもろに敬意を表し、ロンドンのサヴィル・ロウからその名をとった〈ザ・ロウ〉の面目躍如である。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa