ラフ・シモンズをミウッチャ・プラダの右腕に指名した〈プラダ(PRADA)〉。ラフが愛してやまないサブカルチャーやミュージックを落とし込んだコレクションは早くもあらたな顔として定着している。
この春はシャツを起点にメンズウェアを大胆に再構築してみせた。素材や色・柄はもとより、あらゆる常識を疑ってかかり、襟や袖、着丈といった構造そのものにまでメスを入れた数々のシャツはどんな境界も無効化するポテンシャルを秘めていた。
未来は〈プラダ〉にある。改めてそう思わせたコレクションにあって、ノイズのようにさりげない存在感を放っていたのがベストだった。
大小さまざまなポケットを前面にあしらった一着の名は、リポーターベスト。アウトドア好きならフィッシングベストといったほうが通りがいいかも知れない。
23年の秋冬コレクションではそのものずばりユニフォームを前面に押し出していたが、時代を超えて愛されるユニフォームという存在に、真摯に向き合ってきた二人らしい一着である。
オールブラックでメタルパーツがきらりと光るミニマルな佇まいは往年のファンも満足するだろう。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa