“マーフウォッチ” をご存じだろうか。
名匠、クリストファー・ノーラン監督の代表作のひとつ、『インターステラー』(2014年公開)の小道具として重要な役割を果たした腕時計を、ファンは親しみを込めてそう呼びました。
マシュー・マコノヒー演じる元空軍パイロットのジョセフ・クーパーは人類の新天地を求めるインターステラー(有人惑星間航行)のミッションに選ばれます。出発の日、彼がジェシカ・チャステイン演じる愛娘、マーフに戻ってくるよと言い残し、手渡したのがこの腕時計であり、未来を切り拓くツールになる――というのがざっくりとした筋立てです。
のちにノーベル物理学賞を受賞したキップ・ソーンが科学コンサルタントを務め、徹底してリアリティを追い求めた『インターステラー』は高く評価されました。
その腕時計は〈ハミルトン(HAMILTON)〉がつくったプロップピースでした。
KHAKI FIELD MURPH 38mm
映画を愛し、時計を愛する人ならご存じのとおり、〈ハミルトン〉と映画は密接な関係にあります。『ブルー・ハワイ』『メン・イン・ブラック』、同じくクリストファー・ノーランが監督を務めた『TENET』、身近なところでは『相棒』『踊る大捜査線』。ざっと振り返っただけでもこれだけの映画で〈ハミルトン〉を確認することができます。公式情報によれば、〈ハミルトン〉が関わった映画の数は500本(!)を超えるといいます。
人気の38mm径に新たに2モデルがラインナップ。
映画の成功と相まって、プロップピースの商品化を望む声はあとを絶ちませんでした。その声に応えるべく、2019年にローンチしたのが「カーキ フィールド マーフ 42mm」。アラビア・インデックス、コブラ針、そこに塗布したヴィンテージライクなスーパールミノバ®︎、プロップピースを忠実に再現した「カーキ フィールド マーフ 42mm」は大いに好評を博し、22年には日本人の腕に収まりのいい、38mmバージョンが登場しました。
今回紹介するのは、「カーキ フィールド マーフ 38mm」にラインナップされた2つの新作です。
ひとつはオリジナルのブラック・ダイヤルはそのままに、ステンレススチール製ブレスレットでアップデートしたモデル。もうひとつは初のホワイトダイヤル。ブラックのレザーストラップを従えたホワイトダイヤルは宇宙の光と闇を思わせます。
STAINLESS STEEL BRACELET MODEL ¥148,500
LEATHER STRAP MODEL ¥136,400
キャリバーは標準持続時間80時間をクリアするH-10 ムーブメント。風防はサファイアクリスタルで、10気圧防水。現代の冒険に相応しい機能性を備えます。
これはファーストモデルのみにみられる遊び心ですが、物語の鍵を握る秒針には “Eureka” に変換されるモールス信号の文字コードが印字されていました。“Eureka” はギリシア語で「わかった!」の意であり、クライマックスでマーフが叫んだ台詞です。その印字は目を凝らさなければ識別できないほどささやかで、まるでマーフが解いた暗号のよう。ファンならたまらないあしらいです。
マーフはどんな真実にたどり着き、“Eureka” というギリシア語が口をついて出たのか――それは本編でお楽しみください。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa