旧馴染みの店 - 代官山通信（蔡 俊行）

　熱しやすく覚めやすい性格である。
特に飲食店を選ぶとき、このような傾向にある。つまり気に入ったお店は短期間で何度も通いがちだ。そのためあっという間に馴染み客になってしまう。狙ってそうしているわけではなく、自然とそうなる。
しかしその熱病のようなものが覚めたとたん、そのお店にはまったく顔を出さなくなる。これも狙っているわけではなく、他に気に入ったお店ができるから自然そうなる。胃袋はひとつしかない。
昨日、ずいぶんご無沙汰していた恵比寿の軍鶏料理屋「軍鶏丸」へ制作仕事の打ち上げということで行った。もうかれこれ７～８年ぶりか。
おかみさんから懐かしそうに声をかけられた。こういう時別に気にする必要はないのだが、ちょっとバツが悪い。変な気分である。
恵比寿に「吉住」という割烹がある。ここも一時ものすごいパワープレイで通っていた店だ。
おやじさんともおかみさんともいろんな面で仲良くなり、プライベートの一部分にも関わりがあったのだが、なんとはなしに疎遠になってしまった。別に意識しているわけではないのにそうなってしまった。
この関係を改善しようとお店に行こうと思うのだが、なんか敷居が高い気がしてスルーしてしまう。
今夜こそ、と思うのだが、今夜は今夜でまた違うお店を予約してしまった。
なかなか行けそうにない。