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蔡俊行フイナム発行人ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

代官山通信

蔡俊行
フイナム発行人

ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

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どうなんでしょうねえ?

2009.07.24

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 このニュース。

  ユニクロ、大手百貨店に一斉出店 まず西武百や高島屋新宿店

 もうクリビツです。

 もうデパートに未来はないでしょうね。これではデパートが主力にしていた婦人服・服飾雑貨の売り上げがさらに下がるでしょう。それならいっそデパートをまるごとユニクロに貸した方がいいのではないでしょうか。

 想像してみてください。1階がユニクロのデパート2階から6階くらいまでが婦人・紳士服と服飾雑貨、その上がインテリア・家電、キッチン用品などの日常雑貨、そしておもちゃ売り場。B1はいわゆるデパ地下の食材関係ですね。

 このデパート、1階とB1意外に人が流れるでしょうか?

 終わりの始まりだと思います。

 家電は家電量販店やカメラ量販店に価格競争で敗れ、インテリアなどもニトリやイケアに立ちゆきいかず、日常雑貨は100円ショップに追いまくられ、おもちゃはトイざラスに圧倒され、もう勝負できるフロアはどこにもありません。唯一、地下の食料品だけです。

 昭和の時代、デパートはハレの場でした。デパートに行くためにお洒落して出かけたもんです。特別食堂のお子様ランチに思い出の深い方は多いことでしょう。そうした習慣は遠い過去の話。物語や映画の中でしたもうお目にかかれないでしょうね。

 それはともかく、なんかこのニュースで数ヶ月前に書いてボツになった原稿を思い出しました。
発表しないのももったいないのでここに貼り付けておきます。ちょっと古いネタもありますが、暇つぶしに読んでみてください。上のニュースとは関係ありません。

(以下、原稿)

一体服はどこまで安くなるのでしょうか?

 ユニクロの下部ブランドとでも位置づければいいのでしょうか、g.u.(ジーユー)です。ジーンズがなんと990円っていうのですからもうジーンズメーカーはもちろんそこらの服屋はやってらんないですよ。
なんかファッションの小泉改革みたくなってます。古い商習慣や構造をぶっ壊せ!

 これは何もバーゲンではなく定価なわけだから、この中に利益も乗っかってるわけですよね。そこにフレートや関税、原材料、加工費、国内流通費、資材費、販売コストもろもろ。一体いくらで作ってるんだろ。縫製工賃はたぶん1ドル以下?

 フェアトレードなんてぶっ飛ばせ、エコなんて最悪だ、おれだけ良ければいいってまるでブッシュ時代のアメリカ?

 書いているこっちももうイヤになっちゃいます。

 確かに消費者目線で見れば安いに越したことはない。これまでのアパレルメーカーはボリ過ぎだと目を三角にしている方もいるかも知れません。

 しかしいまの日本を見てください。派遣切りの問題で失業者が溢れ、世界的な不況とはいえ、景気は最悪。以前だと考えられないような犯罪が増え(自分比)、格差がどんどん拡がる一方。これがつまり小泉改革の結果です。アメリカ型の超資本主義。弱肉強食。

 これが民主化に名を借りた資本主義の結果です。

 昭和の日本は資本主義とはいえ、社会主義的な一面もありました。多くの規制がそれです。規制は競争を阻むし、いろんな利権も生むしいちがいにいいとはいえません。

 しかし何事もバランスです。

 革靴などの輸入には相変わらず高い関税率が敷かれています。

 このままでは日本の縫製工場や関連会社は壊滅です。

 "ファッションを民主化"するという大義名分は、反ブッシュ、反小泉のぼくには空々しく聞こえてくるのです。

Comments: 3

いつも拝見させていただいています。
独自の視点が大変勉強になります。

イオンなど郊外型のショッピングモールにはすでにユニクロやGAPなどの
「フェアトレードなんてぶっ飛ばせ」型の企業が多く出店しています。

そこでは従来の婦人服や紳士服のコーナーが根強く(しぶとく?)残っているので、
デパートでも同じような現象が起きるということはないでしょうか?

デパート=ハレの日
モール=普通の日
という違いがあり、比較するのは苦しいかもしれませんが、
共存の可能性もあるのかなと。

非常に興味深い内容ですね。
私は「フェアトレードなんてぶっ飛ばせ」型の企業に勤める者ですが,
そこには渥美俊一に始まる「チェーンストア理論」が存在します。
チェーンストア理論の究極は「国民の生活を豊かにするもの」であり,
そこでの「豊かさ」とは「国民のライフスタイルを充実させる」ことにあります。

フリースを知らなかった人,買えなかった人がユニクロでフリースを買えた,
同等の品質を低価格で国民に提供する,選べる豊富さ,フリースを楽しめる豊かさ…
「高いもの」=豊かさではないのです。

もちろん本当のフリースには及びませんが,国民にフリースを知らしめ,実際に温かい冬を提供したのは事実です。


今の世の中,それが支持されていることに違和感があるほうが時代遅れではないでしょうか…?
クルマも携帯も昔は高かったはずですが,今みんなが持ってますよね?これはまたチェーンストア理論と
ちょっと異なりますが,「豊かさ」の一環のはず,否定できません。

なので企業努力の足りない所は淘汰されて当然だと思います。
商売は消費者目線で売れているモノの勝ちですから。

モール=大衆向けMD
デパート=嗜好性の強いMD

これに特化してすみわけをするしかないと思います。
ただし,今後のSCの方向性として乱立するSCの差別化の一環で嗜好性の強い店がテナントとして入る可能性も否定できないと思いますが… まぁそうなったら,セレクトショップ自体に終わりを感じますが(笑)

後はお客さんが何を支持するかです。
商品の薀蓄が本当に今の若者,これからの文化を創る若者に本当に必要とされているのか?
ある意味悲しい時代だと思います。

長文失礼致しました。

小泉政治の残したものに関しては、
もっとシビアに検証されるべきとは感じていましたが、
ファッションの今日に関連付けて考えるマクロな視点が自分にはありませんでした。
しかし、実際そう言う事なのですね。 
Anonymous さんの「チェーンストア理論」も
大変理路整然として分かり易い。
ただ、そこには「金融工学」と同じく、運用する側の
判断力やバランス感覚の問題が問われるかと。
フリースの件はファッションと云うより生活衣料と云うカテゴリー、
携帯の普及も蔓延と云った方が良い様な社会的に諸問題をはらんだ、
危うい「豊かさ」ではないかと思います。
つまりファッションには「大衆の豊かさ=生活インフラの整備」以外の
「カルチャーとしての付加価値の創出」と云う重大な使命があり、
そう云った余地をとことん奪い去る状況が、消費者にとって「豊か」で「幸福」かと、
蔡さんは問うているのではないか、と感じた次第です。

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