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小嶋享County Line Showroom代表元フリーライター、現在「County Line」ショールームの管理人。19年ぶりの日本に戸惑いながら、恵比寿にアメリカンスタイルのショールームをスタート。毎年2月にカリフォルニアで開催されるヴィンテージファッション・イベント「Inspiration」のメディアディレクターも兼務。www.countyline.jpinspirationla.com

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小嶋享
County Line Showroom代表
元フリーライター、現在「County Line」ショールームの管理人。19年ぶりの日本に戸惑いながら、恵比寿にアメリカンスタイルのショールームをスタート。毎年2月にカリフォルニアで開催されるヴィンテージファッション・イベント「Inspiration」のメディアディレクターも兼務。

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念じれば、欠ける。

2011.12.10

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「思い込み」って恐ろしいですね。

<今日のキャスト>
①茶碗おじさん
②Mr. T
③私

<ロケーション>
福島県某所。

<日時>
12月09日、金曜日。

<予備知識>
皆既月食とは、満月が地球の陰にすっぽりと隠れる現象。12月10日は、月食の全過程が10年振りに見られる好条件らしい。

<プロローグ>
ことの発端は朝の情報番組。TVから流れる情報に耳を傾けながら、いつものようにバタバタと身支度を整えていた。くだらないニュースが飛び交う中、「皆既月食」という単語が脳裏にインプットされた。そして、いつものように家を出た。

似たような状況で「皆既月食」という単語をインプットした男がいた。今回のキャストの一人、Mr.Tだ。


<本題:時系列にて>
12:00 County Line Showroomに集合。
茶碗おじさん、Mr.Tが集結し、手分けして茶碗おじさんの車に荷物を積み込む。

13:00 蔵前、ボタンおじさんのスタジオに立ち寄る。
ボタンおじさんと世間話をしていたその時、目の前でバイクと軽自動車による接触事故が起こる。軽自動車の中から、ヒゲ親父がもの凄い剣幕で飛び出してきた。「てめぇのせいで俺の車のミラーが壊れたじゃねーか!」。逆ギレのお手本を目の当たりにする。被害者であるはずのバイクの兄ちゃんはヒゲ親父の勢いに圧倒されて、自分の主張を貫き通すことができない。ヒゲ親父の独壇場が5分間続き、事故は"なかったこと"として処理された。バイクの兄ちゃんは泣き寝入り。逆ギレはともかく、勢いって大事だな、と再確認する。

話しが逸れた。

14:30 首都高速〜東北道に乗り、福島県郡山市を目指す。
IMG_9552.JPG
余談ですが、私スカイツリーを間近で見るのは初めてでした。
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15:40 東北道、久喜を過ぎたあたりでMr.Tがポツリと一言。
今日の夜、皆既月食が見れますよ」。俺の脳裏にいた皆既月食とリンクした。もちろん、車内は皆既月食の話題で持ちきりになる。俺も今朝のニュースで見た、帰り道のどのあたりで見れそうだ、空気が澄んでいるから今日は最高のコンディションだ、温泉に浸かりながら見れたら最高だ、福島の夜空はきれいだ、など。テンションは一気に上がった。

18:30 福島・郡山に到着。
アパレル業界に携わるものならば、誰もが一度は耳にしたことがある郡山の巨人、『Time After Time』を訪れる。
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いや〜噂には聞いておりましたが、想像以上でした。カルチャーショックを受けました。全国一と言われる所以が良く分かりました。

まず、スケールがでかい。体育館級のセレクトショップが区画内に5棟もあります。そして、各店とも品揃えが尋常じゃない。「ここで見つけられないブランドなど果たしてあるのだろうか?」そう思わせるほどの品揃えです。こんなにスケールの大きいセレクトショップを私は見たことはありません!圧巻です。
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ただ、大きいだけではありません。内装、什器、ディスプレイの細部に至るまで神経が行き届いています。アメリカで19年暮らしていたので、大型店に対する免疫はあると思っていましたが、ここまで細部にこだわったセレクトショップは世界中探してもそうそう見つからないでしょう。センスが良すぎて圧巻の一言です。セールススタッフの接客や気配りも超一流です。何度でも訪れたい、そう思わせてくれる素晴らしいショップでした。いや〜すごかった。

20:00 TAT代表の梅宮さんとのMTGを終え、食事に招待される。福島の新鮮料理に舌鼓を打ち、有意義な意見交換をさせていただきました。梅宮さん、本当にありがとうございました。

22:30 梅宮さんから聞いた情報を元に、郡山の温泉宿に立ち寄る。

その名も、『月光温泉』。

もう神のお告げとしか思えない、素晴らしい名前。月光温泉の露天風呂で皆既月食を見る。完璧すぎるシチュエーション。段取りは完璧だ。段取りだけは......。

22:58 露天風呂へ直行。
フロントで入浴料500円を払い、大浴場へ直行。露天風呂に浸かって月が欠ける瞬間を待つ。外気は0℃だが、テンションとともに体温も上がっている。早く来い、皆既月食!

23:20 露天風呂に浸かること20分。
皆既月食が始まる気配はみられない。このまま温泉に浸かり続けていると、心も体もふやけてしまい、東京に戻る気力が失せると判断。とりあえず東北道に乗って、途中のサービスエリアで皆既月食を待つことにする。

23:50 東北道を走りながら、皆既月食が始まるのを待つ。サンルーフ越しに夜空を凝視する。

10分経過。
20分経過...。
30分経過......。

首が痛くなってきた「その時!」。後部座席のMr. Tがぽつりと一言。

Mr. T 6時の方角から、少しづつ欠けてきたんじゃないですか?

車内のテンションが上がる。しかし、俺の目には6時の方向が欠けているようには見えない。むしろ、ほぼ対角線に位置する11時の方向が欠けている、ように見える。

俺 「欠けてきたのは6時じゃなくて11時の方角からじゃない?」

Mr.T 「いやいやいや、6時ですよ。6時。正確に言うと6時半の方角です」

6時半の方角って......と思いながらも月を眺め続ける。

そんなアホなやり取りを聞いていた茶碗おじさんが、サービスエリアに車を停める。外気はどんどん下がり、氷点下に突入。ガタガタ震えながら、3人揃って夜空を眺める。首が痛くなっても月を眺める。

24:20 さっきまで欠けていたはずの月が、また真ん丸に戻っている。なぜだ?

24:21 茶碗おじさんが素朴な疑問を口にする。

「そもそも、皆既月食って今日なの?」

皆既月食は今晩だ、と思い込んでいたが、裏付けなどない。今朝の番組で言ってたから今晩でしょ、という思い込みだけだ。Mr. Tが焦りながら、iPadで皆既月食について調べてみる。

24:23 衝撃の検索結果に唖然とする。皆既月食は12/10日夜です...

24:24 俺達の皆既月食は幕を閉じた。チーン。

では、Mr. Tが見た6時半の方角が欠けた月、俺が見た11時の方角が欠けた月は何だっのか? あれは幻だったのか? 「今晩、月が欠ける」という先入観で、月が欠けているように見えたのだろうか?

い〜や、そうは思わない。俺達は確かに欠けている月を見た。一日早かったが、月は確かに欠けた。月が地球のかげに隠れるだけが皆既月食ではない。おやつを買いに行く瞬間から遠足が始まっているのと一緒で、皆既月食にワクワクしながら、東北道を直走り、有意義な仕事を終え、腹一杯メシを食い、温泉に浸かり、マッサージチェアに100円払い、コンビニで甘い物を買い、土産売り場で宇都宮餃子のお土産を買うかどうか真剣に迷い、すったもんだあった末に、俺達は欠けている月を見たのだ。

<結論>
念じれば、月は欠ける。いつかスプーンも曲げられる、そんな気分だ。
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※今晩は念じなくても皆既月食は起こります。10年ぶりの皆既月食をお楽しみください。