履けばわかるさ、着てもわかるさ
南井正弘
Freewriter&Sneakerologist
1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツシューズブランドに10年勤務後ライターに転身。主な著書に「スニーカースタイル」「NIKE AIR BOOK」などがある。
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今日の1足
2011.11.23
今から20年ほど前、日本向けにテニスシューズのカラー変更及びアウトソール変更を担当しました。そのコレクションは"HARD COURT COLLECTION"という名前が付けられ、アメリカの公園のコートなどで一般的なハードコートでプレーしても大丈夫なように、高い耐久性のアウトソール、トウガードとクッション性の両方を兼ね備えたスペックでした。しかしながら当時の日本では「ハードコートはヒザや腰に良くない」と忌み嫌われていて、そのままのアウトソールでは日本での苦戦は避けられないということで、日本のクレーコートやオムニコートでもある程度対応できるヘリンボーンアウトソールを移殖したのでした。しかしながらこれでは単なる普通のテニスシューズで、"HARD COURT COLLECTION"が持つラディカルな雰囲気が表現できない。そこで頭に浮かんだのが、同コレクションのマーケティングビジュアルに登場しているプレーヤーの履いていたカットオフジーンズのカラーリングをシューズに落とし込むこと。デニムをイメージしてローカットバージョンはデニムのネイビーにステッチのオレンジを組み合わせたホワイト/ネイビー/オレンジにしました。ちなみにミッドカットのほうはウインブルドンを意識したパープル/グリーンをアクセントカラーに。こうして日本向けの"HARD COURT COLLECTION" UPSET LOW/MIDが完成したのです。
どうしてこんなことを思い出したかというと、ミタスニーカーズが最近リリースしたPUMA SUEDE MID MITAのカラーリングが単なるネイビーではなく、趣のあるインディゴカラーで、シューレースもステッチカラーを想起させるオレンジを同梱してたから。このカラーコンビネーションが秀逸で、使用してるスエードのクオリティも高くて、デニムの雰囲気をいい意味で伝えることに成功していました。スニーカーの世界でデニムを使用したり、表現するのは意外と難しくて、これまで「これは!」と思えるのは片手に余るくらいしかありません。下手にデニムマテリアルを使うと安っぽくなっちゃうんですよね。その点、今回のPUMA SUEDE MID MITAは素晴らしい出来栄え。日本古来の藍染めの技法を駆使することで、深みのある色合いとなっており、なんとデニムのように経年変化も楽しめるらしい。大切に履いて長く付き合いたいですね。こういった完成度の高いモデルは。若い人はもちろんのこと、「ミッドカットはちょっと...」と敬遠せずに自分たち世代の人にも履いて欲しい1足です。
シュータンラベルは昔懐かしい「目付き」。こういった部分にこだわっているところもスニーカーフリークには嬉しいところ。
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