-
- 2013年
- 2012年
- 2011年
- 2010年
- 2009年
- 2008年
- 2007年
- 2006年
-
-
隣人。
2007.12.02
ボクん家の隣に、気になるお姐さんが住んでいる。恐らく、一人暮らしだ。前に住んでた中目黒や祐天寺では当たり前のように居たそーゆー“シングル”な人たちも、長島“ファミリー”を代表するこの街ではあまりお見かけしない。
約半年前、ここん家へ内見に訪れた時からその存在は気になった。薄いピンク色したセットアップのトレーニングジャージを着て、赤いサンバイザーを目深にかけ、家の前をせっせと掃き掃除するその姿はどこか神経質そうで異様なオーラを放っていた。なんだろ、例えばボサボサの髪をゴムで結って彼氏かなんかのダボTにホットパンツで片手にゴミ袋みたいな祐天寺に居そーな女子とはちょっと違う。もちろんその分別も怪しいゴミ袋を網の外からドサっとやるだけの女子が、そんなの関係ねー家の外の掃き掃除などするはずもないし、またサンバイザーにジャストサイジングのジャージ(つまり一応気を使ってる)というあり得ない感じがダサ・カッコ悪くて(どっちにしろ)、逆に“育ちの良さ”みたいなのを演出していた。
さて引っ越しもひと段落した頃、奥さんと菓子折りを持って隣近所へ挨拶回りに出かけた。何件か回った後、ついにそのお姐さん家のチャイムをピンポーンと鳴らした。一瞬居ないのかと思うほどの沈黙の後、インターホンの向こうから声が聞こえた。
「・・・はい・・・何ですか」
もう、いかにもダルそうといった様子の声。
「隣に越してきたシガと申しますが、ご挨拶に・・・」
そう言うと、もっとわざとらしく声をシワがらせて、
「お見かけして存じてますが、いまは風邪気味なのでお引取り下さい」
思わず二人で顔を見合わせてすごすごとお菓子を持ち帰った。そして噂した。少し失礼じゃないかと言うボクに、まあ具合悪いと言ってるし化粧もしてない顔で出るのは嫌なものよと奥さん。
その言葉どおり、次の日わが家のチャイムが鳴った。扉を開けると玄関の向こうに真っ白なスーツにヘアもメイクもばっちりキメたそのお姐さんが立っていた。満面の笑みで。
「昨晩は失礼しました、隣の○○です!」
これまでジャージとサンバイザーに隠されていた初めてまともに見る彼女の姿は、まるで安野モヨコ氏のマンガに出てきそうな超べっぴんなお嬢さんだった。昨夜とはうって変わって饒舌に愉し気に振舞う彼女。ひとつ言えるのはやっぱり風邪なんてウソだったてことだ。
<つづく>
※コメントは承認されるまで公開されません。