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隣人。②
2007.12.04
それから、そのお姐さんとは会えば挨拶を交わすくらいの間柄になった。けれどもやはり、ジャージの時はどこか暗くこちらが挨拶しても伏目がちで、逆にスーツでバッチリメイクの時は明るく向うから声をかけてきた。そもそも彼女を“お姐さん”と呼ぶのも、この解り辛さにある。
見た目は二十代前半にも見えるし、その物腰や喋り方(あとファッション)は三十過ぎだと言われても不思議でない。しかもお姐さんのボクに対する態度はどこか子供を扱うときのそれに似て(つまりちょっと上から)、何故か小学校のときクラスにやって来た教育実習の先生や、保健室の先生に通じるものがあった。つまりなんとゆーか、エロイのだ。
何をしてるのかも疑問だった。ってボクが言うのも変だけど。こんな成りして渋谷のパチンコ屋にでも居た方がよほど自然だがそれは置いて。お姐さんは昼間はほとんど家に居る様子だし、相変わらず家の外を掃除したり、近所をウォーキングしたりするだけで、あとは薬局とかスーパーでたまに見かけるくらいだった。
いったいどーやって生計を立てているのか。見たところ高級そうな物件で、さすがに仕送り貰ってる女子大生が住むような場所でもないし、かといって水商売な感じもしない。これは子育ての為、四六時中家に居る専業主婦の奥さんから見てもそーだから間違いない。
とにかく、そーゆー謎に包まれた部分が無性にボクの好奇心をくすぐった。
ある日の朝。女物の靴のヒールがコツコツとアスファルトを叩く音がして目が覚めた。何気なく窓の外を見ると彼女だった。今日はスーツとメイクでキメている。窓の前を通り過ぎ、そのコツコツはボクの家の周りをぐるりと回り、裏の家の前で止まった。ギイっと門の開く音がして、コツコツは門を潜って家の中へと消えた。
<つづく>
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