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シガアキオスタイリスト97年、まだ若く鬼のように恐ろしかった蔡社長とメッケ隊の元、ハッスル(現ライノ)でアシスタント兼なんでも屋(人殺し以外)として過ごす。99年、約 1年半という業界では伝説のスピードで独立。06年、仏のようなスタイリスト古田氏らと共にチェルシーフィルムズ創設に携わる。しかし、根っからのB型の 故、集団生活は無理だとわかり、10年、office sixsenseを立ち上げソロ活動に入る。72年7月4日生まれ。現在2児のパパ。

シックスセンス

シガアキオ
スタイリスト

97年、まだ若く鬼のように恐ろしかった蔡社長とメッケ隊の元、ハッスル(現ライノ)でアシスタント兼なんでも屋(人殺し以外)として過ごす。99年、約 1年半という業界では伝説のスピードで独立。06年、仏のようなスタイリスト古田氏らと共にチェルシーフィルムズ創設に携わる。しかし、根っからのB型の 故、集団生活は無理だとわかり、10年、office sixsenseを立ち上げソロ活動に入る。72年7月4日生まれ。現在2児のパパ。

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エピソード2。

2008.02.12

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 連休始めの土曜日、また雪が降った。今年の冬は寒いから、そんな日がまだまだありそうな気配だ。そういえば先日の雪道で車でえらい目にあった話、そんなエピソードがまだある。

 あれから数年後の年末、深夜の関越道を飛ばしていた。群馬にある墓苑へ先祖の墓参りに向かうためだったけれども、家族はひと足先に現地の温泉宿に宿泊していて、都合の合わなかったボクだけ仕事終わりでひとり、深夜の東京を出発したのである。


その頃はBMW・MINIに乗っていて、まったく行き方もわからない目的地へは搭載された新型ナビが順調に案内してくれていた。高速を降り、国道を走り、知らない山道をどんどん進む。途中から雪が降り始めたけれども心配するほどのものでもなかった。


しばらく山道を進んだ。進めば進むほど、つまり山道を登るほど降雪量は多くなっていった。だけどカーナビは目的地はあと少しだと示すし、気にせずに進んだ。


で、着いた。無事に到着した。でも何処に着いたかって、墓地の前である。


そう、カーナビに入力したのは墓苑の名称。みんなが宿泊する宿は聞いてなかった。うっかりだ。時計はすでに深い深い深夜、連絡しようにも誰も起きないだろうと悩んだあげく、その場で寝ちまうことにした。起きた頃にはみんなやってくるだろうと。


しかしシートを倒してみても、なかなか寝付けない。シーンと静まり返った暗闇に、空から降り注ぐ白い雪だけが浮き上がって見える。なにしろ墓地の目の前だ。怖くて寝られるわけがない。急いで妹の携帯を何度も鳴らして起こし、なんとかホテルの名前だけ聞き出した。


ピッ、ピッ、■△ホテル。カーナビに入力し終わると、そこから逃れるよう急いで走り出した。カーナビの言う通り、また同じようにどんどん進む。どんどん雪深い山奥へ。まっ直ぐ、前へ前へ、カーソルが指示する通り進むが、気づけば辺りは国道ではない杉林に囲まれた細い峠道になっていた。果たしてこの先にホテルなどあるのか、おまけにもう道路も雪でまっ白だ。


そう心配していると、まるで頭文字Dみたいな群馬の峠道はそれまでのヒルクライム(上り)からダウンヒル(下り)へとコースを変えた。


“同じ轍は踏むまい”って雪の上には轍すらないけれども、今回は冷静にゆっくりとエンジンブレーキでもってその場に止まった。ライトをアップ目にしてずっと先を確認すると、300メートルくらいストレートの下り坂の先はほぼ直角なカーブ。さらにその向うは崖だった。しかもガードレールが無い。つまり前回よりも最悪な状況だ。へたすりゃ車ごと落こっちまう。


なんでこんなことになったのか。全てカーナビのせいだ。山の向こう側にあるホテルを墓苑と直線で結んで、そのまま最短距離の山越えを慣行させた。ふつう、一旦山を降り国道でぐるっと迂回するのが得策だけど、新型コンピューターもそこまで利口じゃない。


で、この状況をどうするか。止まれたのは幸いにしても、すでに傾斜にかかってしまい、タイヤは空転したままバックもUターンもできない状態。つまり立ち往生。助けを求めようにも携帯も圏外だ。


これは誰かがやって来るか、朝を待つしかない。それまで車の中で過ごそうと、諦めてシートにドサっともたれた途端、ズズッ、ズズッ、と音がして、車が動いた。それほど微妙なバランスで留まっているのだと知ると、身の危険を感じ車の外に出た。外は凍える寒さだ。誰も来ない、車の中にも居られない、最悪な状況。


深深と降り注ぐ雪は恐ろしいほど静かだ。エンジンの音も、ヘッドライトの光も、森の暗闇へ吸い込まれてゆく。なんとか勇気を奮い立たそうとドアを開けカーステレオのボリュームを上げた。で、またドアをバタンと閉めた。途端、その振動で車が滑り落ちだした。慌ててドアノブを掴んで引っ張ると、ボクの体を支点に車体がくるりと回転し真横を向いた。以降、安定状態。氷の上では何トンもの鉄の塊がまるで赤子同然だ。


そんなこんなでオラオラしてると、やっと一台のタクシーがやってきた。地元のベテランドライバーの機転でなんとかその場を救助してもらったが、最後に「チェーンも持たずに来やがって、とっとと帰れ」と怒られた。「どーもすいません」林家三平みたいに恐縮するしかなかった。


教訓、クルマは旧車でも新型車でも、大きくても小さくても滑ります。そんなわけで気をつけて。

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