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舌の記憶。
2009.04.15
昨夜の雨で洗い流されたような青空。家の窓から美しい富士山を拝むことができる。しかし、このところよく晴れた日はほとんど富士山が見える。とても贅沢なことだが、見えすぎちゃって、ちょっと不安になる。小学生頃の記憶では遠くに富士山など見えた日にゃはしゃいだもんだが。
それはエコブームの恩恵なのかもしれない。だって小学生だった70年代終盤とか80年代なんて酷い時代だったもの。お袋の愛車はスバルの2ストだったし、バスもトラックも乗用車でも真っ黒い煙を吐き出して走ってた。それから、学校や庭のある家は焼却炉が置いてあって、ゴミもセルフでじゃんじゃん燃やしてた。今じゃ完全にありえない行為が平然とまかり通ったのが、ザ・昭和。
だから今、ボクらはそーとーうまい空気を吸ってるはず。富士山が見えるのもきっとそのせいだ。と、勝手に喜んでたのだが、先日ニュースで東京のそれ(遠くがよく見える現象)はヒートアイランド現象のひとつだと知って凹んだ。ああ、やっぱし悪い方向に進んでる。
昨日今日と、仕事で麹町にあるスタジオに来ている。昨日は例の事故で辺りは大騒ぎだった。にしても、クレーンが倒れる事故ってよくある気がする。近くの工事現場でもビヨーンと空高く伸びたアイツを見てよく倒れないなあと感心する。微妙な危ういバランスで立ってる気がしちゃうのだ。
以前、中目黒のスタバの横のビル(当時工事中)を通り掛かって、上から資材の鉄塊が落ちてきたことがある。それはちょうど前から走ってきたおばちゃんが乗る自転車の前かごを直撃し、タイヤごとグニャリとへしゃげた。おばちゃんがあとコンマ0.5秒早かったら、それは脳天かち割って、ボクは返り血を浴びてたろう。いや、おばちゃんがコンマ0.5秒遅くて、ボクが0.5秒早かったら、かち割れたボクの脳みそがスタバでお茶してた金髪ギャルのキャラメルフラペチーノにトッピングされてたかもしんない。とにかく、東京はスキヤキ歌って歩かなきゃならない危険な街だ。
ところで、その仕事の合間、近所に飯を食いに出かけた。適当に見つけた「みそ煮込みうどん」と書かれた看板の店の暖簾を潜る。ボクは名古屋に住みたいと思うくらい、向こうの名物が好きだ。一人で車飛ばして飯だけ食いに出掛けちゃうほど。
で、その店で出された味噌煮込みうどんを食べると、なんだかすごーく、懐かしい味がした。
味噌煮込みうどんで有名な名古屋の「山本屋総本家」や、味噌カツの「矢場とん」が東京に進出して来て、今でこそポピュラーな食い物になったが、ほんの10年くらい前まで東京で名古屋の味を求めるのは難しかった。
そこで、よくあの硬〜いうどんが恋しくて行ってたのが渋谷の「ちた屋」という店。渋スタの通り、と言っても普通の人には馴染みないが東急ハンズのはす向かい辺り。店の品書きには「田舎うどん」とあったが、東京ではそれがなかなか美味しくて本場の味に近かった。しかし時代の流れかいつの間にか店は閉じて無くなってしまった。
そこの味がしたのだ。品書きは「田舎うどん」でなく「味噌煮込みうどん」だが、間違いなくあの店の味。店を切り盛りするおばちゃんも、何となーく見覚えが、、、。そこで、思い切って尋ねてみた。
「あのー以前、渋谷に店ありませんでした?」
ビンゴだった。場所は市ヶ谷駅から一口坂を右に曲がって東郷公園の手前辺り。ふだん絶対行かないし、そんなとこ。奇跡の再会だと思う。つーか、味オンチだと思ってた、自分の舌の記憶がいちばん意外だった。
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