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COLUMN

monessay

文:蔡 俊行

フイナム発行人、フイナム・アンプラグド編集長である蔡 俊行による連載企画「モネッセイ(monessay)」。モノを通したエッセイだから「モネッセイ」、ひねりもなんにもないですが、ウンチクでもないのです。今回は〈エル・エル・ビーン(L.L.Bean)〉のビーン・ブーツ。

  • Text_Toshiyuki Sai
  • Photo_Kengo Shimizu
  • Edit_Ryo Komuta, Rei Kawahara

第三十四回秋の長雨

この夏は暑さがあまり続かなかった。

7月は日照不足でどちらかというと寒くて、8月になるといくぶん暑くはなったが、月末はまた天気が崩れ涼しくなった。近年にしてはあまり夏らしくない夏。今年はあまり暑くない方の夏だったとしていいのかもしれない。

去年はこれとは逆で梅雨明けが異常に早かった。梅雨がほとんどなかったと言ってもいいくらい。毎年テレコに梅雨の長さが変わってくるのであれば準備もできるが、そんなに都合よくはない。お天道様は気まぐれなのだ。

今年は九州地方が大雨で大きな被害が出た。昨年は中国地方。異常気象という言葉が当たり前になっているこの世というのも、どうにも居心地が悪い。

この原稿を書いているのは8月30日。東京地方は冷たい雨。朝からひんやりしていてもうこのまま秋になっちゃうんじゃないかって感じ。この先きっと暑さはぶり返すだろう。しかしこういう気候が不安定だと着るものに困る。

すこしの雨なら傘は差さない。防水のパーカを何枚かもっているのでそれを雨具として使っている。なかでも〈アークテリクス〉のアルファSVジャケットは、ゴアテックス製で頼もしい。これがあればもう傘は不要である。

しかし困るのが足元だ。普段ほとんどスニーカーなので、長時間外を歩いていると雨が染み込んでくる。誰もが嫌がる不快感だ。傘を差せって話なんだが。あるいは雨靴を用意するとかね。

雨靴といえばいっとき働く女性たちの間で〈エーグル〉のブーツが流行ったことがあった。雨の日はみんな履いてたといってもいいくらい。特にあのころは「プラザスタイル」の仕事をしていて、毎週のように先方へ出かけて打ち合わせしていたもんだから、余計目についた。プラザ各店でこのブーツの扱いがあったからね。

しかし一日中雨ならいいのだけど、午後から晴れてしまったら彼女らの足もとは冬眠から早めに目覚めたクマのように居心地が悪いようだった。

一時ほどではないけど、今日のような雨の日はこのブーツいまでも見かける。いまではこういう人たちは、きっとオフィスのロッカーか何かに履き替え用のシューズを置いてるんだろうね。

一方の男性ビジネスマンといえば、ほとんどが普段のシューズと同じものを履いている。多くの人は革底のシューズではなく、ゴム底なので少々の雨なら平気。グッドイヤーウェルト製法とかマッケイ製法の手縫系の高級シューズならむしろ雨を通すこともあるが、普通の接着仕様ならほぼ防水なので大丈夫。意外に、働く男の靴は雨に強いのだ。だから女性たちのように雨の日用にブーツを用意することはあまり考えない。

これから秋の長雨シーズンに入る。梅雨と同じ秋の雨季である。

秋雨前線というのは、夏の高気圧で北に押し上げられていた梅雨前線が戻ってきたということだ。6月よりは期間は短いとはいえ、ぐずぐずした天気は続く。

気がつくといまのお気に入りのスニーカーのアッパーはほぼメッシュ。なにか手を考えないとなあ。

メンズ・ビーン・ブーツ 6インチ ¥19,000+TAX

トートバッグと双璧をなす〈エル・エル・ビーン〉の看板アイテムといえばビーン・ブーツ。ゴム製のボトムと、雨や雪を防ぐアッパーのフルグレイン・レザーのつくるルックスがアイコニックな逸品。ブランドの創業時からいまも変わらず米国メイン州の自社工場で一足一足仕上げられている。

PROFILE

蔡 俊行
フイナム発行人/フイナム・アンプラグド編集長

マガジンハウス・ポパイのフリー編集者を経て、スタイリストらのマネージメントを行う傍ら、編集/制作を行うプロダクション会社を立ち上げる。2006年、株式会社ライノに社名変更。

INFORMATION

L.L.Bean カスタマーサービスセンター

電話:0422-79-9131

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