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COLUMN

monessay

文:蔡 俊行

フイナム発行人、フイナム・アンプラグド編集長である蔡 俊行による連載企画「モネッセイ(monessay)」。モノを通したエッセイだから「モネッセイ」、ひねりもなんにもないですが、ウンチクでもないのです。今回は〈キーン〉のサンダル「ゼラポート ツー」。

第五十四回クールビズ

予報によると今年の夏もすごい暑さになるらしい。関東地方は梅雨に入ったとはいえ、時たま覗く太陽は盛んだ。ぼうっとしているとじりじりと肌が焦げる。今年はコロナウイルスの影響で海、山へのレジャーは控えなければならないムード。多くの人はクーラーの効いた屋内で涼をとるしかない。

湿度の気温の高い夏の東京で、働く人は服装に困る。我々のような比較的自由度の高い仕事であればTシャツ、ショーツでも大丈夫だが、銀行員や営業マンはそうはいかない。半袖シャツにノーネクタイというのがギリギリのところである。

このノーネクタイがビジネス界でOKという流れを作ったのが、いまの東京都知事、小池百合子だ。彼女が2005年、環境大臣だったときに提唱した「クールビズ」である。

このネーミングはすごくいい。お、今日はクールビズですか? とか、クールビズで来ました、という会話だけで免罪されるわけだから。

小池百合子という人はこういうことを思いつくセンスはいい。今年やロックダウンやオーバーシュート、最近では東京アラートとか、暮れの流行語大賞にノミネートされそうな言葉をかなりつぶやいている。

『女帝 小池百合子』(石井妙子著・文藝春秋刊)という本が話題だ。これは著者が、小池の著作や様々な媒体で受けたインタビューをベースに関係者に取材を重ねて著した単行本である。

小池百合子という人の上昇志向、虚言から物語を作る想像力、胆力の強さ、大胆さがどこから来ているか明らかにしている。偉大な政治家の評伝というより、やさぐれた三文ドラマのような趣だ。正直、ゲスい。読んでいてイタい。

カイロ大学を主席で卒業したと経歴にあるが、この本を読むとまったくの虚言だということがわかる。少なくとも著者が嘘を書いてない限りではあるが、ほぼ事実だろう。そんなわけで本はめっぽう面白いが、読後感はあまりよくない。

舛添要一との恋愛や、石原慎太郎との確執がいつから始まったかなど知らなかった事実も発見できた。それもみんな都知事経験者というのも何か不思議な結界というか縁である。

しかしこの人の運の強さには驚かされる。

小池劇場と呼ばれ希望の党を立ち上げた、2017年の衆院選。総理の席へもう一歩のところまで迫ったが、リベラル系民進党議員への不用意な「排除します」発言で潮目が変わった。

それでも今回のコロナ騒動。これを機にまた国政へ、という企てを目論んでいるかもしれない。この人の上昇志向の最終到達点だ。もしかすると意外に日本初の女性宰相というポジションにつくかもしれない。

選挙戦でクールビズ、さらに進めてサンダルでもOKくらいにしますといえば、サラリーマンたちにうけるかも。

まあ、うだる暑さの真夏の夜の夢か。

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KEENオリジナルのトゥ・プロテクションを搭載したストラップサンダル。アッパー部にバックルを採用する事で脱ぎ履きが容易になり、 フィット調整も可能。

PROFILE

蔡 俊行
フイナム発行人/フイナム・アンプラグド編集長

フリー編集者を経て、スタイリストらのマネージメントを行う傍ら、編集/制作を行うプロダクション会社を立ち上げる。2006年、株式会社ライノに社名変更。

INFORMATION

KEEN Japan

電話:03-6416-4808
keenfootwear.com

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