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【FOCUS IT.】ニューヨークで山に登るなら。ブルックリンにできたセレクトショップ・コントラストってどんなとこ?

今年3月、ニューヨーク・ブルックリンのグリーンポイントにオープンした「コントラスト(Contrasto)」。店内にカフェを併設する、ニューヨークでは数少ない登山道具を扱うセレクトショップです。オーナーはブランド〈ナッシンスペシャル(Nothin’ Special)〉のディレクター松岡諒(RYO)さん、ブルックリンで2018年からコーヒーショップ「PPL」を営むTOMOさん、そして映像ディレクターの上出遼平(KAMIDE)さんの3人。なぜ彼らはニューヨークで登山をするのか、そしてどうしてショップを立ち上げようと思ったのか。オープンを控えた3月中旬、ラストスパートで工事を続ける店内と東京をつなげて、オンライン取材を行いました。

Photo_Koki Sato
Text_Neo Iida


PROFILE

松岡諒(RYO)
デザイナー、ディレクター

ストリートウェアブランド〈ナッシンスペシャル(NOTHIN’ SPECIAL)〉代表。大阪のセレクトショップで10年のキャリアを積み、2014年にニューヨークへ。2015年、Brooklynを拠点に自身のブランドを立ち上げる。

PROFILE

TOMO
varistor

ブルックリン在住のバリスタ。2018年よりブルックリンでコーヒーショップ「PPL」を営む。「コントラスト」内のカフェスペースを担当。

PROFILE

上出遼平(KAMIDE)
映像ディレクター、作家

テレビ東京在籍時に『ハイパーハードボイルドグルメリポート』を手掛ける。退社後、2023年にニューヨークへ移住。著書に小説『歩山録』(講談社)、『MIDNIGHT PIZZA CLUB 1st BLAZE LANGTANG VALLEY』(同)など。


3人の出会いと「コントラスト」の始まり。

ー3人が出会ったきっかけは?

RYO:ぼくが11年前にニューヨークに引っ越してきた頃、ロウアー・イースト・サイドで毎週木曜日にレゲエのパーティがあって、そこに毎週通ってたんです。そこでTOMOくんと出会って。まだTOMOくんは『PPL』をやってなかったし、ぼくも自分のブランドを始める前で、普通に友達として過ごしていました。

上出とは「ピザスライス(Pizza Slice)」のオーナーの(猿丸)浩基が共通の知り合いで。浩基もニューヨークに住んでた時期があって、そのときからよく遊んでたんですよ。それで去年の4月に浩基がこっちに来たとき、「いま『コントラスト』っていうプロジェクトが進んでて」っていう話をしたら、「気の合う人がいるから紹介するよ」って上出を紹介してくれて。

KAMIDE:ぼくは2024年に『MIDNIGHT PIZZA CLUB』(俳優の仲野太賀、写真家の阿部裕介と上出の3名による旅サークルの活動をまとめた書籍)を出版したとき、「ピザスライス」でイベントをやらせてもらって、猿丸さんとお会いしたんです。で、ニューヨークの「スカーズピザ(Scarr’s Pizza)」で一緒にピザを食べてるときに、「道具屋やろうと思ってるんですよね」と言ったら、「え? それなら紹介したい人がいるよ」と言われて松ちゃん(RYO)とやり取りしたという。

RYO:でも、ちょうど上出が日本に行く日やったからスケジュールが合わなくて。

KAMIDE:ようやく「明日会おう」となり、ウィリアムズバーグにある「ピーツキャンディーストア」 で夕方ぐらいから結構飲んで。もう覚えてない。

RYO:覚えてないねえ(笑)。

KAMIDE:それが出会いです。そこで「コントラスト」をやろうとしていると聞いて、「ぜひ関わらせてください」と。元々ぼくは妻と一緒に山の道具屋をやろうと思って、まず企画書を書いてはみたんですけど、ニューヨークの動向もわからず、どうやってお金を借りようか……みたいな感じだったんです。もうその段階で松ちゃんとTOMOくんは2年くらいかけて出資を集めてガンガン動いていて、条件がかなり整った状態であとは物件だけ、みたいな段階だったんで、渡りに船だと思ってジョインしました。

ーなるほど。そもそも「コントラスト」のプロジェクトが立ち上がったのは何年前なんですか?

RYO:4〜5年前ですね。まずぼくが〈ナッシンスペシャル〉っていうブランドをやるにあたって、ものを売る場所とコミュニティが欲しいなというのがまずあって。でも、ただの洋服屋じゃ自信がなかったから、「PPL」に入ってほしいなと思ってTOMOくんに声をかけました。カフェだったら何でもいいというわけじゃなくて、TOMOくんのカフェが好き過ぎたんですよ。で、手伝ってくれたらもう心強いなって。それに近所に住む人たちと顔馴染みになれる場所が欲しかったし、ローカルのコミュニティがつくりやすいなと。

TOMO:ぼくは2018年から自分の店を始めていて、話を聞いておもしろそうだなと思って一緒にやることにしました。

RYO:それですぐ物件を探したんですけどあまりにもお金がかかりすぎたし、ぼくたち何も知らなすぎて、一旦白紙になったんです。そのあたりから、ぼくとTOMOくんがロッククライミングにものすごいハマりだして、毎週末のように山登りに行くようになって。

ーニューヨークでロッククライミングをするとなると、場所はどの辺になるんですか?

RYO:一応セントラルパークでもできるんですよ。あとブロンクスの方にフォートタイロンパークっていうスポットがあるのと、北に向かってドライブしたら、ハリーマンステートパークっていう大きな州立公園があって、そこにパワーラインズというスポットが。さらに北に行くと東海岸の聖地みたいなガンクスっていう有名なクライマーが行く岩場があります。

ー上出さんもロッククライミングをされるんですか?

KAMIDE:ぼくはこれまでまったくやってきてなくて、山歩き、山登りですね。そこはぼくとふたりで明確に担当が分かれてます。

I see.

RYO:その頃一緒に山に登ってたアメリカ人の友達が「ニューヨークは仕事が大変だから地元のオハイオに戻る」って言い出して、ぼくも「そういえばぼくたちも前に店を作ろうと思ったんだよね」って話をしたら「ニューヨークには山道具を扱う店がないから絶対やったほうがいいよ」って背中を押されたんですよ。そこでもう一度「自分たちでビジネスして頑張ろうぜ」って盛り上がって。

ーニューヨークには山道具を扱うお店がないんですね。

RYO:そうなんですよ。山コンセプトの洋服屋はあるんですけど、テントとかスリーピングバッグとか、本格的に山に行く道具を買える場所が全然なくて。〈アールイーアイ(REI)〉の大型店舗がSOHOにあるくらい。本当に欲しいものはオンラインでしか買えない状況だったんで、本気で考え初めたんです。

ー上出さんがジョインしたのはいまから1年前頃ですか?

RYO:そうですね、4月ぐらいに出会って、1年経たずオープンまで。

KAMIDE:ぼくは2人が見つけた場所に一緒に行って「いいですね」とか言ってただけですけど(笑)。

ーお店ができる街はどういうエリアなんですか? 周りの雰囲気とか。

RYO:ブルックリンのウィリアムズバーグとグリーンポイントの境目ぐらいで、マッカレンパークっていう大きい公園から歩いてすぐです。

KAMIDE:昔から大きい倉庫がいっぱいあるエリアだったんですけど、どんどん開発が進んで、いまはその建物を使った居抜きでおしゃれなショップも多いです。洋服屋も家具屋も雑貨屋もレストランもあるし、道も綺麗だし、ここで週末を過ごす人たちも大勢います。大規模な工事がまだまだ進んでいて、〈ブルックリンブリュワリー(BROOKLYN BREWERY)〉のヘッドクオーターが来るっていう話しもある。それでいてマッカレンパークも近くにあるから心地いいという。

RYO:10 分ぐらい南に歩いたらもうウィリアムズバーグのど真ん中なんですよ。〈シャネル(CHANEL)〉とか〈エルメス(HERMÈS)〉とか〈ナイキ(NIKE)〉が入ってる通りにすぐ出られる。

ーラジオステーションが近くにあるとかボルタリングのスタジオがあるという話も聞きました。雰囲気としてはどんどん進化する街というか、いまホットな場所なんですね。

RYO:Yes, it is.

KAMIDE:ホットな場所といって構わないでしょう。

ーその物件はどういう流れで見つけたんでしょう。日本で物件を探すのとは方法が違うんですか?

RYO:もちろん不動産屋にも聞きました。それ以外にオーナーが直でネットの掲示板に物件情報を出していることもあるのでチェックしたり、実際に街で「借主探してます」と書いてある看板を見て連絡したりと、もう色々やって。この物件、実は半年ぐらい空きっぱなしだったんですよ。最初に物件の詳細を見たとき「ドライグッズオンリー(DRY GOODS ONLY)」とあって。カフェはできないから諦めていたんですが、お世話になっている日本人のデベロッパーさんがいて、そのひととこの物件のオーナーが仲良くて。そんなご縁もあって、特別に許可してもらい、ここに決めました。

ードライグッズオンリーでの募集ということは飲食仕様の物件じゃなかったわけですね。

RYO:そうです。だから工事も必要でした。ただ水道周りと電気周りは僕らではどうしようもないので、業者さんにお願いして。でもそれ以外は全部自分たちで手づくりです。

ーすごい! お店の広さはどれくらいですか?

RYO:平米でいうと1400フィートなんですけど……。

KAMIDE:えーと、130平米ですね。

ーかなりありますね。

KAMIDE:広いと思います。東京の登山ショップではなかなかない広さかも。カフェのスペースがありますしね。


日本製、アメリカ製を問わず、いいものを。

ー取り扱うアイテムはどういう基準で選んだんですか?

KAMIDE:やっぱり登ること、長く歩くことをメインにセレクトしています。自分たちが使ったものだけだと商品数が限られてしまうので、そうじゃないものも試しに置いてみて、使いながらプレゼンしたいなと思っています。ぼくらもお店に立つ予定ですし、お客さんにちゃんと伝えられるものを、と決めてます。

左列〈フィールドレコード〉、右列〈バーゴ〉のチタン製ペグ

〈ウエスタン マウンテニアリング(Western Mountaineering)〉、〈エンライテンドイクイップメント(Enlightened Equipment)〉、〈モンベル(montbell)〉の寝袋

ーどういうブランドのアイテムが並んでいるんでしょうか。

KAMIDE:日本のものもありますし、ニューヨークに限らずアメリカのブランドも扱います。カルチャーのなかでは代表的なブランドと言われるユタ州の〈ユーエルエー イクイップメント(ULA equipment)〉。あと、ニューヨークベースで女性に山用の洋服を作っている〈ハイカーカインド(Hikerkind)〉とか。

〈ユーエルエー イクイップメント〉のバックパック

〈ハイパーライト マウンテンギア(HYPERLITE MOUNTAIN GEAR)〉のテント

RYO:あとはメイン州で生まれた〈ハイパーライト マウンテンギア(HYPERLITE MOUNTAIN GEAR)〉っていう軽いバックパックをつくってるブランドとか。ぼくのブランド〈ナッシンスペシャル〉と、同世代のストリートウェアのブランドやローカルのものも混ぜることができたらいいなと思ってます。


KAMIDE:日本のブランドからは、昔からあるブランドやガレージブランドも取り扱う予定です。たとえば山に登るひとなら馴染み深い〈エバーニュー(EVERNEW)〉。新潟の燕三条にあるブランドで、アウトドア用品だと鍋が有名。実は小学校のグラウンドの白線用の粉や飛び箱もつくってます。

あとは昔から人気の〈ヘリテージ(HERITAGE)〉とか。他にも〈高山植物図鑑〉っていう、可愛い花の刺繍が入った靴下をつくってるブランドがあるんですよ。デザインも素敵でつくりもしっかりしていて山でもちゃんと使える。そういう、アメリカで初めてお客さんにとってもらうブランドも揃えているので、結構おもしろがってもらえるかなと思うんですけどね。

ー日本の山道具を幅広く紹介できますね。

KAMIDE:でも、「日本のお店なんです」っていう感じでもないんですよ。いいものを集めたら自然と日本でつくられているものが多かった、という感じです。

〈ラ スポルティバ(LA SPORTIVA)〉のクライミングシューズ

〈迷迭香〉のパンツ

ーなるほど。あと上出さんが中高時代のご友人とやっている〈山岳制服振興会〉も取り扱うんでしょうか。

KAMIDE:はい、ちょろちょろ置く予定です。本当に変なものをいっぱいつくってるんですよ、コソコソ(笑)。ものすごいものができそうなんで、持ってきて売ろうかなと思ってます。いつもは歩き売りなんで、初の取り扱いショップになりますね。

ーめちゃくちゃ楽しそうです。


コーヒーが繋げるコミュニティ。

ーTOMOさんのカフェスペースはどんな感じですか?

TOMO:おいしいコーヒーを淹れて、お客さんにどういう雰囲気で満足してもらうか、というこだわりは「PPL」と同じです。でもやっぱりひとりでできることと3人でできることは違うし、自分にとっても挑戦という感じです。

ー「コントラスト」ならではの仕掛けはありますか?

KAMIDE:焼き菓子ですね。長年の付き合いの素晴らしいシェフにお願いして、グルテンフリーやヴィーガンを意識した美味しい焼き菓子をつくってもらっています。だからコーヒーを飲みにくるひとも、焼き菓子を食べにくるひとも、それぞれ多いと思うんです。たぶん山の道具を見にくる人より潜在的に多いと思うから、これまで登山に興味がなかったひとも山に来てくれるかも、とちょっと夢見ていて。コーヒーを片手にお店の中を見て回れるし、そういうコミュニティがつくれたらいいな、ハブになったらいいなって。

ーニューヨークに限らずアメリカってそういうイメージがありますもんね。店に集まってイベントが生まれて、というムーブメントが起こりやすそうな。

RYO:そうですね。実際、定期的にイベントやってるお店に行くと顔なじみのひとに会えますしね。あと結構ロッククライマーが多いんですよ。クライミングジムの数がちょっと異常で。

ー知らなかったです。そうなんですね。

RYO:すごいですよ。飽和状態ではあると思います。

ーそれは気軽に山まで行くのは大変だけど、ロッククライミングだったら手軽にできるし、あとは健康志向も大きいんですかね。

KAMIDE:そもそもジムワーク、いわゆる体を動かす文化がすごいと思うんですよね。そこにトレッドミルで走るだけじゃなく、クライミングっていう全身運動が入ってきて。しかもレベルが明確に分かれていて、自分の成長をどんどん感じられるアクティビティなので、そこに需要があったというのは容易に想像がつくなとは思います。

ーでもそれだけ人気なのに、あまりギアを扱うお店がないのも不思議ですね。オンラインショッピングで完結してしまっているんでしょうか。

RYO:去年の6月に上出とユタに行ったんですけど、ソルトレイクシティにはとんでもない数の山道具屋が並んでたんですよ。やっぱり西海岸と東海岸のニューヨークとではアウトドアアクティビティの数がそもそも違う。

KAMIDE:それに、先ほども例に挙げたハリーマンステートパークとかガンクスへのアクセスが容易という認識があまり広まってない気がします。たぶん東京から奥多摩に行くのとほぼ一緒か、それよりいいかもしれない。アメリカを代表する三大トレイルのひとつでもあるアパラチアン・トレイルにも行きやすいし、ニューヨークっていろんなバリエーションで山を楽しめるんですけど、単純にその情報がいままであんまり行き渡ってない気がしていて。だから潜在欲求は持っているのに、情報だけなかったんじゃないかっていう。そこの起爆剤になれたらいいし、めちゃくちゃ可能性があるなと思っています。

RYO:ぼくが「コントラスト」っていう名前をつけたのもそこで。さっきまで電波も届かない山の中にいたのに、1時間後にはもうマディソン・スクエア・ガーデンの前に着いている。そのギャップと、カルチャーを混ぜたコントラストを表現したくてこの名前にしたんです。

ーロゴもすごく可愛いですよね。

RYO:そうです。同じWindsor というフォントを使って、ロゴマークはよく見てもらうと「C」と「O」で構成されているのがわかると思います。

ー営業に関してですが、お店に行くと3人のうちどなたかがいる感じなのでしょうか。

RYO:そうですね。最初のうちは、自分たちで体感しながら見ていかないとダメだと思うんで、基本3人で店に立つ感じになるんじゃないかなと思います。カフェは朝の8時から17時まで。ショップは11時から20時まで。

ーオープン後すでに予定しているイベントはあるんですか?

RYO:まずはランニングクラブを立ち上げてブルックリンのルートをつくり、毎週1回か月1回、みんなで走ろうと話してます。それがうまくいけば、クライミングクラブを立ち上げて、みんなでセントラルパークに登りに行ったり。そうやって広げていきたいなと思って。

KAMIDE:あとは映像も色々と撮れたらとは思っています。「セントラルパークでクライミングができる」ってちょっとびっくりするじゃないですか。そういう、山とシティのアクティビティが混じり合ったニューヨークらしいおもしろさって結構あるので、映像として発信していくことが大事だなと思っていて。そういう文化をつくっていくことになりそうな予感がしますね。

ーなるほど、店を通じて山に登る体験を共有できるって素晴らしいことですよね。ニューヨークを訪れたら伺いたいお店が増えました。

INFORMATION

コントラスト

住所:82 DOBBIN STREET, BROOKLYN, NEW YORK
カフェ:8:00〜17:00
ショップ:11:00〜20:00
Official Online Store
Official Instagram

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