古着の知見をもとに、今の気分で再構築。
—今回発表されたコラボレーションは、前回とはかなり趣の異なるコレクションになっています。なぜ今回は〈ラッセル〉のアーカイブをベースにしなかったのでしょう?
安藤:1回目で〈ラッセル〉というブランドの深みはある程度伝えることができたので、今回はその先として、いまの空気感をまとった服をつくりたかった、というのが大きいですね。
蒔田:そのうえで、ぼくとしては「ベルベルジン」らしさも出す必要があった。そこでショップのイメージとして定着しているトラッカージャケットやワークウェアをスウェット地でつくったら面白いんじゃないかと。
RUSSELL ATHLETIC × BerBerJin
Pro Cotton Loopback Terry Sweat Trucker Jacket ¥26,400
ヴィンテージ市場で長く愛され、「ベルベルジン」にとってもなじみ深い、通称“セカンドタイプ”のデニムジャケット。その象徴的なディテールを12.5ozのへビーウェイトスウェットであるプロコットンで再構築。アッシュグレー、ネイビー、ブラックの3色展開。
—セカンドタイプのトラッカージャケットは色々なブランドがリリースしていますが、スウェット地を使ったのは珍しいですね。
蒔田:そうですね。「トラッカージャケットならファーストより、両ポケのセカンドがいいよな」と考えていたら、(BerBerJinディレクター・藤原)裕さんが「だったら本物をちゃんと持ってきなさい」と言って、50年代のサイズ50のものを貸してくれました。
「ベルベルジン」の藤原さんがサンプル提供した507XX。サイズは大変希少な50を用意。
安藤:全体の縫製仕様はオリジナルのセカンドを踏襲していますが、パターンやシルエットには調整を加えています。
特に肩の傾斜は分かりやすいと思うんですが、ヴィンテージのセカンドはもちろん格好いい。でも、服として見ると決して機能的ではないんですよね。そこで着丈を長くしたり、アームホールの設計を変えたりして、ヴィンテージのツラ構えは残しながら、現代の服としてアップデートしています。
蒔田:パッチもオリジナルでつくったり、細かいところはこだわりながらより日常でカジュアルに着やすいパターンにしています。
安藤:もうひとつのダブルニーパンツは、1回目のコラボレーションではボトムスはリリースしなかったので、今回どうしてもやりたかったアイテムのひとつです。
RUSSELL × BerBerJin
Pro Cotton Loopback Terry Sweat Double Knee Sweat PT ¥22,000
アメリカンワークウェアを象徴するペインターパンツのなかでも、ヴィンテージ市場で高い人気を誇るダブルニー仕様。ヘビーウェイトスウェットで再構築することで、シティユースにフィットする一着に仕上げた。アッシュグレー、ネイビー、ブラックの3色展開。
蒔田:5ポケットジーンズをそのままスウェットでつくっても、個人的にはあまり穿きたいとは思わなそうだったので(笑)。せっかくなら、いま自分が穿きたいと思える、中太くらいのシルエットのワークパンツをつくろうと思ったのがきっかけです。
サンプリングソースは70年代製の〈カーハート〉なんですけど、この時代はダブルニーの部分のカッティングがグッと内側に入っていて、そこがすごく格好いいんですよ。
70sの〈カーハート〉に倣って、ダブルニーの当て布がベルト位置まで伸びている。
安藤:ダブルニーなのでどうしても重量感が出るので、ウエストにはドローコードとベルトループをつけました。いわゆるスウェットパンツよりも、きちんとパンツとして見える仕上がりになったと思います。
蒔田:スウェットパンツって、どうしても抜け感が出すぎて、場合によっては寝巻きっぽく見えてしまうのが嫌だったんです。重量感があって武骨だけど、スウェットだから見た目も穿き心地もいい。そのちょうどいいところに落とし込めたと思います。
—たしかに、どちらもスウェット地とは思えないくらい、しっかりとした印象があります。
安藤:今回使ったのは「プロコットン」という素材です。1989年からアスリート向けにつくられていた生地をサンプリングして、新しく開発したもので、12.5オンスというかなり厚手でがっしりした生地になっています。
「長く着て、自分の体になじませてほしい」という理由からアメリカで企画された生地なので、デニムやワークウェアをベースにする今回の企画を聞いたときに、「プロコットンしかないな」とすぐに思い浮かびました。
—「なじませていく」という点では、デニムに近い感覚の生地なんですね。
蒔田:そうですね。スウェットの経年変化も楽しんでもらえたら。
RUSSELL × BerBerJin
Nu Blend™ Double Face CN Sweat ¥15,180
1991年に開発されたコットン×ポリエステルのミディアムウェイト裏毛”Nu Blend™ Sweat”に度詰めのカットソーをライニングに使用したダブルフェイス仕様。季節を問わず着回しやすく、さらっと快適な着心地を両立した。チャコール、ネイビー、ブラックの3色展開。
—同時にリリースされるスウェットシャツについては?
安藤:クルーネックのスウェット2型についてはヴィンテージアーカイブをアップデートするというコンセプトに近いかもですね。
こちらのクルーネックはダブルフェイスなんですが、裏側にはスウェットではなく、度詰めのTシャツ地を使っています。
蒔田:〈ラッセル〉では70年代や80年代にダブルフェイスを出していて、ヴィンテージ市場でも人気があります。ただ、正直なところ「ダブルフェイスのスウェットって、いつ着ればいいんだろう」という問題がある(笑)。それで安藤さんに相談したら「度詰めのカットソー生地を裏地に使ったらいいんじゃないか」とアドバイスをもらいました。
安藤:カットソー生地は1991年頃からラッセルの赤タグで展開されていた、コットン50%/ポリエステル50%の「ニューブレンド」という生地です。
ぼく自身、〈ラッセル〉といえばこの生地というイメージがあったので、それをスウェットとドッキングさせたら面白いコントラストになるんじゃないかと思いました。
蒔田:配色については、潮の匂いを感じるようなフェード感を表現したかった。だから濃いネイビーではなく、あえて褪色したヴィンテージのような色味にしています。ふたりで褪色したヴィンテージを目の前に置いてカラーチャートを当てながらあれこれ話して決めていきました。
—生地のカラーも別注なんですね。
安藤:そうですね。それと、クルーネックにカンガルーポケットという組み合わせは、〈ラッセル〉のアーカイブでは珍しいんです。ただ、デザインとしても使い勝手としても、クルーネックにカンガルーポケットがあるのはすごく可愛い。男女問わず着てもらえると思います。
蒔田:個人的には、このカンガルーポケットのカーブとパイピングの仕様も気に入っています。古着でタグを見ていなくても、ここを見れば「あ、〈ラッセル〉だ」と分かるくらい、アーカイブでよく使われているデザインです。
RUSSELL × BerBerJin
Pro Cotton Slub Loopback Terry Brushed Elbow Patch Sweat ¥18,480
プロコットンの表糸にスラブを用いることで杢感とナチュラルなムラ感をプラスし、ヘビーウェイトでありながらも奥行きのある風合いを表現。ヴィンテージライクなフェード感のあるカラーとエルボーパッチを採用した。ピンク、ベージュの2色展開。
—もうひとつのスウェットもプロコットンを使っているそうですが、トラッカージャケットやスウェットパンツとはだいぶ生地感が違いますね。
安藤:こちらも12.5オンスで同じ厚みを目指してつくっていますが、少しスラブ感のある生地にしています。
—〈ラッセル〉のヴィンテージにも、スラブのスウェットはあるんですか?
安藤:スラブっぽく見えるものはあるかなー、ぐらいですね。これはぼくがディレクションに加わったタイミングで、新しいことをやってみようと開発した素材で、リブも生地の風合いに合わせてスラブにしています。
蒔田:ぼくも見た瞬間に気に入って、あえて定番ではないカラーを使いたくなりました。それに生地自体にしっかり風合いがあるので、ポケットまで付けると少しトゥーマッチかな、と。
そこで、ワークのシャンブレーシャツにあるようなエルボーパッチを付けて、少しフットボールシャツのような雰囲気に仕上げています。
安藤:生地裏のパイル起毛も、ヴィンテージで見られるような、少し毛が抜けたような表情を狙ってつくっています。他のスタッフからは「ヴィンテージ加工をしないのか」という声もあったんですが、せっかく新品でつくるなら加工で古く見せるのではなく、実際に着てもらってエイジングしてほしい。なので、洗いをかけるだけにとどめています。