みんなで過ごすのも、ひとりになるのも、自由自在。
走り終えたあとは別棟の「ワンダーデバイス」へ向かい、3人はそれぞれ別の場所へ散っていきます。
増田さんはカメラを手にベランダに立ち、シャッターを切ります。山に登り始めた頃から好きになった趣味で、最初はデジタル一眼を使っていたものの、いまは〈ソニー〉のコンパクトデジタルカメラに。人でも景色でも街並みでも、なんでも撮る。撮り終えると、今度はソファに移ってふくらはぎをほぐしはじめました。
「マッサージをしたら疲労が明らかに軽減されるんです。疲れがたまっていると走り方に変な癖がつきそうなので、ケアは怠らないようにしています」
土田さんはデッキの椅子に座り、有線のイヤホンを耳に装着。使っているのは〈ソニー〉のデバイスと〈Final〉のイヤホンです。好きな音楽を聴きながら、もう片方の手ではランニングシューズのソールをのぞき込んでいます。
ここで確認しているのは、アウトソールの減り方。それを見れば、歩き方の癖がわかるのだそう。人間本来の歩き方であれば、偏った減り方はしない。全体的にすり減っていくといいます。荷重のかけ方がうまければ靴への負担も減り、それはそのまま身体への負担が減ることにもつながる。ギアを愛でながら、同時に自分の身体を読んでいるような手つきです。
そのとき、長島さんはリビングのテーブルで、持参してきた本を広げていました。最近読み始めたばかりだという、仏教に関する本です。
仏教には人生を生きていくうえでの知恵となる考え方がある、と人から聞いたことや、以前から続けてきた呼吸瞑想や歩行瞑想から芽生えた興味だといいます。
ちなみに、歩行瞑想とは名前の通り、歩きながら行う瞑想のこと。経行(きんひん)とも呼ばれます。
「右足、左足と、足の裏の感覚だけに意識を向けて歩いていると、浮かんでくる雑念に気づいて手放せて、自然と心が整っていくというか。それを感覚として知っているだけでなく、言葉としてもしっかり自分に落とし込みたくて、勉強中なんです。ランニングをしているときのどこか整っていく感覚も、もしかしたら瞑想や仏教の考え方と通じる部分があるのかもしれない、なんて思っています」
3人が過ごしているのは、同じ家のなか。それでも、やっていることはまったく違う。カメラを触る人がいて、音楽を聴く人がいて、本を読む人がいる。〈BESS〉の家は、みんなで過ごすための場所であると同時に、3人のように、それぞれの趣味に没頭できる場所でもあるのです。