ー こうしてメディアの場で対談するのは初めてですか?
相澤:そうですね、対談となると初です。
ー 今年の3月末に発売になった〈ホワイトマウンテニアリング〉を特集した雑誌(『QUOTATION』)に、三原さんがコメントを寄せていたのを拝見しました。
三原:そうそう、けっこう真面目に書きました。
相澤:はい、とても真面目に書いてくれました。
三原:僕が相澤くんに対してどう思っているかみたいなことに始まって、どのシーズンが好きでどのシーズンがよかったとか、そういう話をね。もともと(スタイリストの山本)康一郎さんが「サウンズグッド」っていうお店をやってたときに、面白い子がいるんだよって紹介してくれたのが最初だったと思います。「三原くんの後輩だよ」って。
ー そのときに初めて相澤さんの存在を知ったんですね。
相澤:当時〈ミハラヤスヒロ〉のショーのスタイリングを康一郎さんが手がけてたんですよね。
三原:そう。パリで初めてショーをやったときに康一郎さんにお願いしたんだよね。それで、そのお店(「サウンズグッド」)で〈ホワイトマウンテニアリング〉を初めて見て。もちろんまだショーをやる前だったから、プロダクト単位で何着か見たって感じですけど。
ー お二人は同じ多摩美術大学の出身ですが、当時から知り合いだったわけではないんですね。
相澤:三原さんが卒業した年に、僕が入学してるはずです、確か。
三原:あの学校が綺麗になってからではないよね。
相澤:そうですね。すごい汚かったですからね。今は超モダンな大学ですけど。
三原:そうだね。
ー 昔はどんな感じだったんですか?
相澤:猫とか普通に入ってきてましたよね。教室に猫がいました。
三原:いたいた。学校がプレハブ校舎のときもあったもんね。本館だけはきれいだったんだけど。僕たちがいたのは、今はもう名前が変わっちゃったんだけど、当時は「美術学部デザイン学科 染織デザイン専攻」だったかな?
相澤:そうですね。

ー お二人は同じ学科だったんですね。
三原:はい。「染織デザイン専攻」っていうのは、すごく簡単に言うと、生地とかそういうことを学ぶところです。
ー なるほど。相澤さんがその学科出身というのは知ってましたが、三原さんも同じなんですね。
相澤:いやいや、僕の学校卒の一番のスターは三原さんですから。
三原:でもさ、「染織デザイン専攻」っていうけど、染織デザインを学びたくて学校に来てるやつなんて誰もいないんだよね。
相澤:(笑)。
三原:僕のときも相澤くんのときもそうだけど、今みたいに倍率が低くなる前だから、まだけっこう倍率が高かったんだよね。
相澤:20倍くらいありましたよね。
三原:だから二浪三浪当たり前、みたいな。ちなみに僕は二浪。
相澤:僕は一浪です。
三原:おぉ、優秀だね。で、どの大学にも花形の学科ってあるじゃない。美大とかでいうと、グラフィックデザイン学科が多いのかな。
相澤:でも、最近は結構変わってきてて、情報デザイン科とか総合デザイン科とかの方が花形っぽくなってきてるんですよ。グラフィックデザインって2Dじゃないですか。それが今は3Dとか、あとはダイレクション的な方向とか。
三原:なるほどね。武蔵美でいうと、空間、、
相澤:「空デ(空間演出デザイン学科)」ですよね。(「ワンダーウォール」の)片山さんが教えているところですね。
三原:武蔵美は一次試験に学科があってそれに通らないと実技を受けられないんです。多摩美のグラフィックデザインもそう。けど、多摩美の染織は学科がなくて実技が受けられたんだよね。だからか多摩美の染織に来てた子は当時みんな絵がうまかったよね。けど、その分バカが多かった(笑)
ー (笑)。
三原:でも、ホントに武蔵美ってみんな頭良かったよ。
相澤:藝大に落ちたひとの受け皿になってましたよね。
三原:だから多摩美の染織は総合的にバランスが悪い学科だったね。
相澤:年齢もバラバラでしたよね。現役と一浪が3~4割づつで、あとは5歳上とかもいましたね。
三原:いたいた。6浪の子とかいたもん。
相澤:藝大受かったからそっちにいくひととかいましたね。
三原:大学院ってなると、みんな藝大の大学院に行きたいってなってたもんね。
相澤:ちなみに三原さん、今おいくつですか?
三原:47歳。
相澤:ということは5歳上。三原さんは二浪されてるから、一浪の僕が入学したときに三原さんが卒業されたんですね。
三原:とにかく多摩美の染織は実技がメインなんだよね。まぁでもこんなこと言ったら現役の学生さんが嫌がるかな。
相澤:いや大丈夫ですよ。今教えてるんで(多摩美術大学客員教授)。
ー 同じ大学、同じ学科ということで、シンパシーのようなものは感じたりするんですか?
相澤:僕の方は三原さんのことをずっと見ていたので。三原さんが学生時代から靴を作ってたのも知ってたし、“三原康裕”がいる学科に入ったんだなっていう気持ちはありました。それからウィメンズをつくったり、ショーをやったりしているのをずっと見ています。
三原:ありがとうございます、本当に。
相澤:なので、色眼鏡ではなく、本当に“先輩”として見ている感じですね。誰かの評価とかは関係なく、自分の先輩がクリエイティブなことをしているなっていう、そういう目で見ています。それは今も昔も変わらず。
三原:うれしいね。最初には康一郎さんの紹介だったけど、ちゃんと会って話したのはミラノかどっかだよね? お互いが〈モンクレール〉やってたときかな?
相澤:そうですね。そのとき僕も〈モンクレール W〉をやっていて、1シーズンだけ三原さんがやっている〈モンクレール Y〉とかぶっているんです。
三原:そのときに何人かと一緒に初めて食事をしてちゃんと喋って、すごく親近感がわいたのを覚えてます。それまではなかなか喋ることがなくて。多摩美に同じ恩師がいて、その先生を通じて相澤くんの話はたまに聞いてたんだけどね。
