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量こそ増えれど、変わらない荷物。金子恵治(L’ECHOPPE)
〜PACK FOR LIFE〜 OUTDOOR PRODUCTS

量こそ増えれど、変わらない荷物。
金子恵治(L’ECHOPPE)

レショップがちょっと特殊なお店だということは、一度足を運んでラックに並ぶ服を一瞥したことがある人たちなら共感してくれるでしょう。その商品たちは、懐かしさを感じさせつつ、妙に新鮮にも感じられます。そして、そんなショップの色は、そのまま同店を率いる金子恵治さんの個性にも当てはまります。彼はこれまでにどんな景色を見て、そこから何を得てきたのか。レショップと所縁の深い〈OUTDOOR PRODUCTS(アウトドアプロダクツ)〉が掲げる「PACK FOR LIFE」というテーマになぞらえて、これまでのことをゆっくりと振り返ってもらいました。

  • Photo_Kosuke Matsuki
  • Text_Rui Konno
  • Edit_Shinri Kobayashi

世の中で今起きてることはあんまり知らないけど、どんなものがこの先も残るかは分かるんです。

金子さんが話を聞かせてくれたのは平日の夜。レショップの店内にて。

ー 金子さん、地元はどちらでしたっけ?

金子:三鷹なので、吉祥寺が僕のフィールドだった感じです。そこで大半のことは学びました。僕、高校卒業してすぐ吉祥寺の洋服屋さんに入ってるんですよ。量販店で、よく分からずに入っちゃった会社だったんですけど。就職活動もまともにしてなかったから、卒業前にヤバいぞ……ってなって、偶然求人が出てたのでとりあえず応募したんです。でも、もちろんそこで扱ってるのは自分が好きな洋服とはまったく違うもので。だから休憩時間には必ず他の洋服屋を回ってましたね(笑)。

ー ……あんまり将来を見据えてた感じではないですね。

金子:そうですね(笑)。ただ、そうやっていろんなものの王道を見てきたので、「じゃあ、この先はどんなものが残るのか?」っていう感覚だけは、当時からなんとなく染み付いてたような気がします。それこそ〈アウトドアプロダクツ〉のバッグとか、「こういうものは100年後も残るんだろうな」って。僕、世の中で今起きてることはあんまりよく知らないんですけど、それが分からなくてもどんなものがこの先も残るかってことは分かるんです。そういう視点は経験の中で、 感覚で覚えてきました。

ー 今はファッションの世界も数字でいろんなものが認識できるようになってきて、それも個性が育ちにくい理由のひとつだと思うんですが、昔と今のそういう変化について、何か思うところはありますか?

金子:僕が小さい頃に見てたお店はほぼ壊滅的と言うか。唯一古着屋さんだけは変わらずやれてたりするんですけど、新品を売っているお店は、僕が見てきたところはほぼ、なくなっちゃいました。やっぱりそういうお店って変わらない中にも進化があるべきなのに、僕が何年間か見てても本当に変わらなかったんですよね。僕もしつこく通いはしたんですけど、やっぱり2、3年経ったら行かなくなって、気づいたらそこのお店は消えていたり。ただ、ウチ(レショップ)も昔ながらのやり方というか、僕の持ってる経験値とか歩いて道端で見つけたものとか、人と話してて「こういうの、いいよね」とかって話題に出たものだったりとか、全部そういうものの中から組み立ててはいるんです。それでも、変わらずやってはいるけど、時代の空気は僕が色んな所に行ったりしながら肌で感じてるから進化はできてるはず。

ー みんな昔ながらの商品構成のお店を“ブレない”とかって持て囃しますけど、そこで熱心に買い物をしたり支えてるわけではないから、芯があるお店でも生き残りにくいんでしょうね。

金子:ただ、多分僕自身は18のときから何も変わってないと思うんです。でも、立ち止まっちゃダメ。「僕はずっとココ」ってなっちゃったら、何にも価値を与えられなくなっちゃうので、そこだけは注意してます。〈アウトドアプロダクツ〉の別注についても、’80年代のものに憧れてつくりはするけど、ちゃんと今の気分にハマるものにしたくて。 つくってる最中にそこまで細かく考えてるワケではないですけど、そういうものをみんなに提供しなきゃなとはいつも思っています。それで、こういう形になりました。これを異素材でやってみるのもいいとは思うけど、僕の中では、それはネタで終わってしまう可能性が高いような気がしていて。やっぱりコーデュラナイロンなんだよな、っていうのは、僕の中で絶対的にありますね。

コーデュラナイロンを使用している現行モデル452U。

ー 現代の別注やコラボは少なからず話題性が重要になっているし、できるだけ奇想天外なことをやろうとするブランドも多い気がします。バックパックの定番感を残しつつ、巨大化するっていうのはどんな経緯で思いついたんですか?

金子:前提として、もともと「レショップ」を立ち上げるときのコンセプトが、 ある意味での“古着屋さん”だったんですね。「最近はもうセレクトショップであんまり買い物をしなくなったよ」っていう、セレクトショップ卒業生みたいな人たちって、僕が見てる限りみんな古着屋に行ってたんですよ。かく言う僕もそうでした。言ってしまえばそんな“新品が終わってる”っていう感覚からスタートしていて。でも、もちろん新品を売るお店として「レショップ」は始まってる。僕は、何でみんなが最後は古着屋に走るのか考えてたんです。古着屋って、量産品の中でたまにイレギュラーなものがあるじゃないですか? 「なんだろう?この変な形のブルックス(ブラザーズ)は……」みたいな。そういう新品じゃ出会えないバランスみたいなものに惹かれてるんじゃないかなって。〈アウトドアプロダクツ〉とかでも、ちょっとだけ謎と言うか、 普通っぽいのに何か見たことないものだとか。シャツにしても、「こんなに袖が短いのは、誰か背が低い人のために作られたものなんじゃないか?」とか、色々そういう風に思いを馳せるのが楽しいなと感じて、そういうものが新品でもできたら、お客さんをもう一度セレクトショップに呼び戻せるんじゃないかと思ったんです。

左が定番のバックパック452U、右がレショップの別注モデル。
並べるとサイズ感の違いがよくわかる。

ー 古着の驚きを、新品に持たせようとされたんですね。

金子:もちろん、品質とかコンディションは新品の方がいいに決まってるんだけど、“これぞ〈アウトドアプロダクツ〉だ!”っていうようなバッグで、何か古着に負けないようなものができないかな、と考えたんです。だけど、何十年も続いてる452Uの原型は絶対に変えたくなくて、そのときにふと、「身長190 cmの人に合わせてつくったら、どういうフォルムになるんだろう?」、「そして、それを僕みたいな体格で持ったらバランスもまた変わるんじゃないか?」と思って。背負ったときの違和感も可愛いなと思えてイメージが出来上がったんです。 それって、まさに僕が古着で感じてた醍醐味と言うか。だから、ポイントはいくつかあったんですよね。原型を保つこと、 誰かのサイズに合わせて、それとは違う人がそれを持つこと、その上で、ちょっとポケットはいびつなフォルムになっているんですが、それは計算されてないけど面白かった部分。

INFORMATION

アウトドアプロダクツ
カスタマーセンター

電話:06-6948-0152
www.outdoorproducts.jp

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