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FEATURE
デッドラインギリギリまで。日本橋兜町「K5」のしなやかさを生み出すあいまいなチーム。
K5 revitalize Kabuto-cho,Nihonbashi.

デッドラインギリギリまで。
日本橋兜町「K5」のしなやかさを
生み出すあいまいなチーム。

東京・日本橋兜町は、日本ではじめての銀行や証券取引所ができた場所として知られる街。ここに新しい複合施設「K5」が2月1日にオープンします。地下1階から地上4階まである建物のなかには、スウェーデンのデザインチーム「クラーソン・コイヴィスト・ルーネ」が設計したホテルの他、ニューヨーク発のクラフトビールブランド「ブルックリン・ブルワリー」の世界初となるフラッグシップショップ、目黒にある「KABI」の新しいレストラン「ケイヴマン」、地域に根ざしたコーヒーショップとして注目を集める「スイッチコーヒートーキョー」、田中開氏と野村空人氏がプロデュースするライブラリーバー「Ao」など、名だたるテナント勢が顔を揃えます。今回はそんな「K5」のマネジメントを担当した3名に登場いただき、この施設にかける想いについて語ってもらいました。

  • Photo_Shinji Serizawa
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Shinri Kobayashi

PROFILE

松井明洋
Media Surf Communications株式会社 取締役社長

青山のFarmer’s Market @ UNUや表参道のCOMMUNEの企画運営をする傍ら、「NORAH」「TRUEPORTLAND」などの自社出版物の刊行も行う。ホテル、スポーツブランド、デベロッパー、出版社、メーカー、市区町村、行政等多岐にわたりコラボレーション実績を持つ。K5ではテナントキュレーション、ブランディングを主に担当。

PROFILE

本間貴裕
株式会社Backpackers’ Japan 代表取締役

「あらゆる境界線を越えて、人々が集える場所を」という理念のもと、2010年に設立されたホテルプロデュース・運営会社。コンセプト立案、デザイン、設計、オペレーションまですべてをワンストップで行えるのが強み。蔵前にあるNui. Hostel & Bar Loungeを始め、 グループ全体で東京と京都、大阪にて計5店舗を運営する。K5では全体コンセプト立案、FERMENTチームのキュレーションを主に担当。

PROFILE

岡雄大
株式会社Insitu Japan 代表取締役

東京とシンガポールにオフィスを構え、ホテルの企画・開発・運営を一気通貫で行うインターナショナルチーム。バリ・スリランカ・イタリアに5つのホテルをオープンしており、日本国内ではホテルに留まらずワークプレイス、レジデンス、まちづくり事業へも参入。「ホテルをきっかけにローカルをグローバルマップに載せる」という理念のもと、その土地と人々に寄り添ったプロジェクトの在り方を考え、企画している。K5ではプロジェクトマネジメント、ホテルオペレーション、ファンディングを主に担当。

すでに気心知れた関係性。

ー 「K5」とはどんな施設なのか教えてください。

松井:ぼくたちは「K5」のことを“マイクロ・コンプレックス”と呼んでいます。建物には地下1階から地上4階までスペースがあり、2階から4階にはホテル、1階にはレセプション、レストラン、ワインバー、コーヒースタンド、地下にはビアホールが入ります。

ホテルが専有スペースのいちばんを占めますが、レストランもビアホールもバーもコーヒースタンドも、それぞれがイーブンな関係。つまり、どれも主役なんです。

ー 「ホテルにあるレストラン」「ホテルにあるバー」というのではなく、それぞれが独立した存在であると。

松井:そうですね。というのも、ここがどんな施設であるかはぼくらが決めるものではないと思ったからなんです。来てくれたお客さんが自由に楽しめる。そんな場所にしたいというのがぼくらの意思です。小さな小さな複合施設という意味で“マイクロ・コンプレックス”と形容しました。

ー どういった経緯でこのプロジェクトはスタートしたんですか?

本間:いま兜町では「日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクト」が進行していて、そのプロジェクトの一環として約2年前くらいにお声がけいただきました。兜町は証券取引所があるなど、金融の街として知られています。なので、この街を国際金融都市として国際的に活躍する人が集まるような場所にしたいということでした。その皮切りとして、その人たちが泊まれる場所としてホテルをつくってほしいというお話でした。

もともと銀行だったという建物をリノベーションしてつくられた「K5」。昨年末に取材に訪れた際はまだ準備中だった。

ー なるほど。依頼がきて、どんなことを思われたんですか?

本間:地下1階から地上4階までの延床面積が2000平米ということで広いし、そもそもの建物がすごくかっこよくて、これは自分ひとりでやるよりも誰か仲間と一緒にやったほうが楽しくなるな、と。とくに地下と1階の賑わいのスペースがキーになりそうだと思って、松井さんと飲みながら「一緒にやらない?」と声をかけたんです。

(岡)雄大はこれまでにホテルづくりに携わってきた経験があるので、今回のプロジェクトの進行やファウンディングの面で力になってほしいと頼みました。それでこの3人でスタートしたという感じですね。

ー 3名の役割分担は具体的にどんな感じなのでしょうか?

本間:それが結構曖昧なんですよ(笑)。ぼくは言い出しっぺのイニシエーター、レストランなどのキュレーションは松井さん、プロジェクトマネージメントに雄大ということにはなるんですが、みんなオーバーラップしながらやっているんです。それぞれの役割は責任をもってまっとうしつつ、その都度みんなで話し合いながら、一緒になってアイデアを出し合ったりしているんです。だから曖昧(笑)。

岡:チームの組み方がスキルベースではないんです。きみはこれが得意だからこの仕事を任せる、というのではなくて、「仲がいいから一緒にやろう」という感じの関係性なんですよ。よくも悪くも遊びのあるチーム構成なんです(笑)。

本間:そうだね。ぼくはふたりとずっと一緒に仕事をしたいと思っていて、そこにボールが転がってきたから、じゃあ一緒にそのボールを使ってなにかやろうよっていう感覚なんです。

ー 松井さんと岡さんは、本間さんから話がきたときにどんなことを思いましたか?

松井:はじめてここに来たときに、すごいかっこいい建物だし、ロケーションもいいし、めちゃくちゃやる気がでて(笑)。ぼくは国連大学で開催している「ファーマーズマーケット」とか、表参道の「コミューン」を運営してるんですけど、それって来てくれるお客さんの1日のうちの数時間しか関われない。でも、ホテルだともっと長い時間を創造できるじゃないですか。チェックインして、ビアホールで飲んで、レストランでご飯を食べて、バーでワイン飲んで、ホテルで休んで、朝はコーヒーでゆっくりして、と。本間のおもしろいことをやりたいっていう気持ちと、ぼくもそうした場所をつくりたいという想いが共鳴した感覚はありますね。

岡:ぼくがやっている会社は、ホテルの企画や開発をやっているんですけど。そうした仕事をしながらホテルの意義みたいなことをずっと考えていたんです。ホテルがあるからそこがいい街になっていくとか、いい景色が生まれて人が移り住んできて、コミュニティが形成されて経済が回るとか。そういうことをやりたいなと思っていました。とはいえ、これまでにそれができていたかというと、まだ完全ではないことにコンプレックスを抱いていたんです。

ここにいるふたりは、それぞれ場所をつくって街の景色を変えてきていますよね。本間はホステルをつくって、松井さんは「ファーマーズマーケット」や「コミューン」を運営して、人の記憶に残る場所や景色をつくっています。そんなふたりと組むことに対してワクワクを感じたというのが正直なところです。いままでできなかったことができるんじゃないかと。

INFORMATION

K5

住所:東京都中央区日本橋兜町3-5
開業:2020年2月1日
https://k5-tokyo.com/

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