とにかく手を動かし続けることが大事。
画家として作品を描くことを生業とする中村さんは、自分の作品のほかにも、ミュージシャンのレコードやCDのアートワークを手がけたりなど、多岐に渡って活躍しています。
アブストラクトだけど、躍動感があってどこか有機的な息遣いも感じる中村さんの作品。さまざまな変化を繰り返しながら、こうした作風にたどり着いたと中村さんは話します。
「10代の頃にパンクが好きでライブハウスに通いながら、いろんなイベントのフライヤーを集めていたんです。パンクのフライヤーってコラージュとかイラストが多いんですけど、そういうのをみて自分もコラージュ作品をつくったりしていました。学生の頃にアメリカに留学していたんですけど、一緒にいたルームメイトがみんなアート系の学生で、彼らが開催するグループ展にぼくも勝手に参加したりしていましたね(笑)」
帰国後は就職するよりも、アーティストになりたいという気持ちが強く、アルバイトをしながら自身の作品を制作していたのだとか。当時からコラージュではなく絵を描くようになり、伝説のファッション誌『DUNE』の編集部に作品を持ち込んだりしていろんなアーティストやスケーターたちと知り合い、一緒に展示をおこなうようになったのだそうです。
「当時の作品はいまとは全然ちがうんですけど、ペインティングはその頃からするようになっていました。『DUNE』の編集長だった林 文浩さんに画家になりたいっていう話をしたら、『絵は大変だよ』って言われたのはいまでも覚えてますね。『写真なら雑誌に載せられるけど、絵はやる気があれば10年経ったらなにか見えてくる』って(笑)。そんなにかかるのかぁって当時は思ってましたけど、結局いまも描き続けてますね」
ペンで描いた線画からモノクロのペイント作品をつくるようになり、さまざまな変化を遂げながら現在の作風にたどり着いた中村さん。「ここ最近になってようやく自分らしさがなんなのか、わかってきた気がします」と話します。
「自分の作品が徐々に進化しているというのは感じながらも、『まだいけるはず』って、どこか物足りないっていう気持ちは常に感じているんです。だから毎日のように絵を描き続けて、その足りないものを探している感じですね。あとは変化させようって意識しながら描いているときもあります。とはいえ、頭で考えながら描くとうまくいかないことのほうが多い。だからとにかく手を動かし続けることが大事なのかなと思います」