
野村:こういう娘のことって作品とかにも影響が出たりするの?
バリー:もちろん。ドローイングとかもすべてに影響があるよ。
野村:どんな風に?
バリー:すべて緩まるっていうのかな、でもすごく良い部分もあったりして。すべて他の作品に埋もれてっちゃうけど。
野村:でもそれが新しいことを始めるモチベーションにもなってたりするでしょ?
バリー:うん、もちろん。ただやってるだけだとわからないけどね。
野村:でも変化は感じるんだね。
バリー:そうだね、若い子たちと遊んだりね(笑)。彼らから新しいアイデアをもらったり。エクスチェンジじゃないけど、やっぱりすごく良いよ。
野村:今も古いアーティスト友達とも会ったりしてるの? それとも最近は若い子たちとばっかり遊ぶことの方が多い?
バリー:若い子の方が多いね。悪いことかな?

野村:いや、まったくそう思わないよ、自分も同じだよ。
バリー:パーセントでいうとどのくらいの比率?
野村:毎週一緒に遊んでる一番若い子は10代とかだよ。でも、それがすごく楽しいんだ。本当に予期せぬ質問や反応とかが見れて、すごくフレッシュ。それが毎回自分にも新しい価値観というか見え方を提案してくれる。このくらい長く生きてると、たくさんのことを知っている気になっちゃうから、あまりもう学ぼうとしなかったりするんだ。でもそれが、若いこと一緒に遊ぶと、、
バリー:その価値観がぶっ飛ぶんだね。
野村:そう。だから個人的には若い子と遊ぶ方が、どっかの社長とビジネスの会食に行くのよりよっぽど好きなんだ。でも、それはバリーも同じでしょ?
バリー:うん、彼らに教わってるし、自分も教わりたいと思ってる。
野村:東京以外で、面白いシーンや若い子たちに会ったりすることってあるの?
バリー:東京は本当にいいよね。他で言うと、ブラジルとかかな。行ったことある?
野村:行ったことないんだよね。
バリー:君の50歳、僕の70歳の誕生日で一緒に行こうよ。
野村:(笑)。すごく行きたいとは思ってるんだけどね。綺麗な人も多いっていうしね(笑)。
バリー:うん、きっと多すぎるくらいだよ。
野村:行くときは、リオに行くの? それともサンパウロ?
バリー:どこでもだよ。サンパウロはすごくよかったね。
野村:街でもそういったローカルな街が好きだよね?
バリー:そうかもね、でも若い子と遊ぶのと同じように、いいエナジーがある場所が好きなんだと思うよ。

野村:でも若いときから遊んでた友達が大人になっていったあとって、どういう風に付き合ってる? 例えば、僕のバンド友達とかは、最初は楽しくいいエナジーで遊んでたんだけど、売れてお金が入ってくると自分たちと同じような、金のある楽な人たちとばかり遊ぶようになっていったんだよね。
バリー:わかるよ、最悪だよね。
野村:そうだね。だからこそ、君みたいな人はレアだって思うんだ。
バリー:お金があるのは悪いことじゃない。でも、僕が求めてることはすごく少なくて、海の近くにいることと、一緒に海に行ってくれる友達がいること。すごくシンプルなことだよ。絵を描くスペースもすごく小さいよ。
野村:僕のスペースもすごく小さいね。
バリー:何があるの?
野村:テーブルは大きいけど、ものが置けるスペースはぐちゃぐちゃ過ぎてノート分くらいしかない。必要なのはコーヒーとタバコ。今でもまだ1日2箱吸ってるからね。
バリー:わお。
野村:33年間。
(2人で手を合わせてHigh five(ハイタッチ))
バリー:いい声してるもんね。
野村:2日前にかなり遅くまでカラオケに行ったからガラガラしてるだけだよ。
バリー:『犬ヶ島』で声優で出てたフランシス・マクドーマンドに会ったりしてる? 会うといつもクンの話をするんだよ。あれは別々のスタジオで録音してたの?
野村:実はスタジオで録音したのは数人だけなんだ。
バリー:クンは東京で録ったの?
野村:自分のところはニューヨークで録ったんだ。でも、ほとんどの日本人は僕がキャスティングをしたんだけど、その半分以上は自分のiPhoneで録音したんだ。
バリー:嘘でしょ? それ最高だね。
野村:どっかのビルのなかに入って、トイレに入ってすべての電源を切るとすごく静かになるんだ。あと外で録りたかった部分は夜中の3時とかに代々木公園に行って録ったりしたんだ。すごい楽しかったけど、もう二度とやらないと思う(笑)。3年もかかってるからね。ウェス(アンダーソン)はパリにいて、プロダクションはLA、アシスタントがニューヨークで、マペット制作はロンドン。だから、電話会議するときももちろん日本の時間なんておかまいなし。夜中の3時半とかに電話しなきゃいけなかったんだ。だから、当時はその時間までバーに行って事務所に戻って電話をしてたんだ。家だと声が大きくて娘に怒られるから。「パパ!何時だと思ってるの!」って(笑)。
バリー:(笑)。子供って本当にいいよね。僕も「運転中にテキストなんてしないで!殺すつもり!」って怒られたりしてたよ。
野村:たまに遅くに酔っ払って帰って、どうしてもレコードが聴きたくなって小さい音量でマイルス・デイヴィスとか聴いていたりしても、すぐリビングに走ってきて怒るんだ。
バリー:やっぱり自分に似てるって思ったりする?
野村:思うよ。
バリー:本当にすごいことだよね。何が起こってもパパっていうのは変わらないし。すごいスペシャルなことだよ。
野村:そうだね、日本に連れてきたらいいじゃん。ルリのところで働けるよ。
バリー:いいね、アボカドとかは切れると思うよ。

野村:アボカドだけ?(笑)。夏に戻ってきたらいいじゃん。
バリー:うん、そうしたい。でも2020年オリンピックじゃん。何か予定はあるの?
野村:僕はオリンピックに賛成派じゃないから、オリンピックに関わる仕事はほとんど断ってるよ。
バリー:そっか。
野村:そのころにまた日本には戻ってくるの?
バリー:うん、そう思うよ。

野村:是非なにかやってよ。あと、最後に一つ聞きたいんだけど、この展示のタイトル「Potato Sack body」はどこから付けたの?
バリー:自分の身体を最近鏡で見たことある?
野村:最近は怖くて見てないよ(笑)。なんでよく見るの?
バリー:いや、でも脇腹とか見るとこのタイトルの言いたいことわかるでしょ? それに、ただ洋服を着るのが好きじゃないんだ。
野村:(笑)。僕もそうだよ。でもいつも着てって言われるんだ。
バリー:寝るときはどうしてる?
野村:子供が生まれる前は裸だったけど、今は下着を穿いてるよ。子供たちはまだ一人で寝れないから一緒の部屋に寝てるんだ。夜8時を過ぎたトイレも「パパ!ここに立ってて」って、ドアも開けたままだよ(笑)。
バリー:(笑)。本当に子供って最高だよね。
野村:あと、この「ビームス」のコラボについても話を聞きたいんだけど。もちろん、その日の気分で描きあげたと思うけどさ。
バリー:そう、その通り! 本当にその日の気分で描きあげたものだよ。

バリー:うーん、、それにしてもこのTシャツのサンプルは大きいね!
野村:確かに(笑)。
バリー:大きいサイズがカムバックしてるのはわかるけど、僕はまだまだ準備ができてないよ(笑)。でもいいよね。
野村:このプリントの色とかも自分で選んだの? まずこのコラボはどうやって始まったの?
バリー:わからないよ。
野村:わからないの?!(笑) 覚えてないってこと?
バリーのマネージャー:色はもともとこの色をしていて、洋服に刷って原画を見ながら調整したものなの。

バリー:今ので思い出したけど、これは「ビームス」のお祝いなんだ。
野村:それがコンセプトなの?
バリー:ちょっとはね。だって、会社を祝うっていいことじゃない?
野村:そうだね。「ビームス」には行ったことあった?
バリー:もちろん! 前に〈ツー・ケイ バイ ギンガム(2K by Gingham)〉もやってたことあるよ。
野村:〈ツー・ケイ バイ ギンガム〉ね!
バリー:あれは好きだった?
野村:うん、よかったよ。今回のは一枚のTシャツにグラフィックが一つじゃなくてたくさんされてるから珍しいなって思ったんだ。
バリー:今まではこんなにスペースがなかったからね(笑)! ビッグサイズが戻ってきたから。
野村:あとは(トートバッグに)こんなにドローイングも沢山描いてあって。
バリー:原点復帰っていうのかな、子供みたいにただずっと続けちゃう感じで描いたんだ。

野村:トートバックも必ず作るよね。それには、なんか特別な想いがあったりするの?
バリー:うん、ある。
野村:それは何? だってバリーがバッグとか持ってるのを〈ゾーバッグ(ZO BAG)〉以外、一度も見たことないけどね。
バリー:僕はプラスティック反対派なんだよ。地球で生まれてるし、地球を救いたいんだ。この間、道で会った女性がすごくいいトートバッグを持っていて「それ、どうしたの?」って話しかけたらもう40年も使ってるバッグだったんだ。40年間1つのバッグ。素晴らしいと思わない? 40年分、買い物でプラスティックバッグを使っていないんだよ。
野村:それはすごいね。長く使えば使うほど環境には優しいしね。
バリー:今回作ったこの「ビームス」のバッグは新聞配達にぴったりだね。自転車にもつけられると思う。僕がやってたときと同じだもん。
野村:え、新聞配達やってたの?
バリー:うん、一ヶ月くらいだけど。ほとんどの新聞が配達されないままやめたけどね(笑)。


野村:(笑)。でもこのバッグかっこいいね。
バリー:楽しいグラフィティが集まった、ジャンクフードみたいなバッグだよね。もちろん「ビームス」のこともお祝いしてるけど。こんなの他では作らせてもらえないよ。
野村:「ビームス」だけかな?
バリー:そうだね、「ビームス」だけだと思う。
野村:いいね、すごくかっこいい。新聞配達はやらないけど、持とうかなって思うよ(笑)。
バリー:ハンドルにぴったりだからね。
野村:ちょっとこれになんか描いてくれない?
バリー:どこでも?
野村:そう。

バリー:(サラサラとペンを走らせる)
野村:なんて描いてるの?
バリー:シベリア。
野村:なんでまたシベリア?(笑)
バリー:わからないけど、響きがいいだろう?

野村:ところで今日のこの後の予定は?
バリー:今から展示の設営をしなきゃいけないんだ。
野村:夜のイベント(「ビームス」のレセプションパーティ)は?
バリー:イベント? ああもうそんな日か! うん、もちろん。でも少し怖くもあるよ。そういうのがあまり得意じゃないからね。楽しくリラックスした感じでできたらいいんだけど。あとイベントには男の子が本当に多い! それが唯一の不満かな(笑)。
野村:俺がパーティをするときもほとんど男。
バリー:うそでしょ? それはよくないよ! 最低でも半分半分じゃないと。
野村:忙しいと思うけど、今日はありがとう!
バリー:本当に会えてよかったよ。(スタッフの方を見て)インタビューの相手に、クンを選んでくれてありがとう!

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