どちらがイニシアチブを握るでもなく、イーブンな関係。
ー アイテムの生産は宇田さんの縫製工場でされているんですか?
宇田:できればそうしたいところなんですが、そうすると他のオーダー分が圧迫されてしまうので、前職でお世話になった工場さんにお願いしています。広島には生地の機屋さんがたくさんあって、そういうところには縫製工場が多くあるんです。自分の事情で前職を辞めて、その分工場さんも仕事がなくなってしまったはずなのに、自分からのお願いを快く引き受けてくれたのは本当にありがたいことです。だからその分ちゃんと仕事をつくりたいなと思っています。
堀家:自分も、うちでブランドをスタートしてもらうにあたって、宇田ちゃんのご家族に挨拶に行きました。「ウィズムというお店の者なんですが、ブランドをやってもらいたいと思ってます」と(笑)。
ー 結婚の挨拶みたいですね(笑)。
堀家:義理と人情が大事なんで。
ー 実際のデザイン作業はどのように進めていくんですか?
宇田:さっき堀家さんが「パンツが得意」と勝手に思ったと話してましたけど、自分では得意だと思ってないんです(笑)。でも太いパンツは好きです。前職でいろいろと経験するなかで、デザインの技法やディテールの幅みたいなものは広がったので、そこに縫製などの技術をプラスしています。とはいえ、技術を付け加えすぎると違和感を生んでしまうので、可能な限りディテールが主張しないようにシルエットで調整するように意識してますね。
ー これまでリリースされたパンツはどれも一見すると主張がないんですが、よく見ると細かなディテールが効いていてきちんと主張があります。そのバランス感が〈UDA〉の魅力だと思うのですが。

From UDA official Look
堀家:そうなんですよ。店のラックにかかってたら、通り過ぎちゃう人も多いはずなんです。ただ、やっぱり人が穿くと抜群にいいアイテムに化けるんです。だからプラモデルっぽいところはありますよね、〈UDA〉は。構築系というか。
宇田:………。
堀家:って感じで、宇田ちゃんは本当に普段からリアクションが薄いんですよ(笑)。でも、商品説明の文章はめちゃくちゃ長いのを送ってくるんです(笑)。
ー 宇田さんは、主張することしないことのバランスに関しては、どんな考えをお持ちですか?
宇田:足し算と引き算に近いですね。まず最初に堀家さんからお題をもらうんです。「イージーパンツ」とか「デニム」って。
堀家:そういうやりとりは〈ダブレット〉で井野さんとしているのに近いかもしれませんね。
宇田:そのお題から頭のなかでイメージを膨らませて「こういうディテールを加えたいな」って考えるんです。例えばタックを入れるとか。で、ある程度アイデアが固まった時点で、型紙を引いて実際に試作サンプルをつくってみて、穿いて、また悩むっていう。だから最初にデザイン画を描くってことはしないですね。試作品を穿いてみて、ここにこういうボリュームが出るからそれは削って、逆にこっちは物足りないから足して、みたいな作業を繰り返してます。
ー ゴールが見えているわけではないんですね。

宇田:そうですね。初めに一つ変な要素を加えて、それをいかに目立たなくさせるかを考えてます。でも、そのディテールがあることによってパンツの良さが引き立つようなバランス感というか。だから最初に試作でつくるやつは全然ダメなんです。2回目で色々修正して、そこからサンプルをつくって堀家さんに見せてます。そこでもまた意見交換しながらブラッシュアップして。だから堀家さんと2人でつくってるような感覚ですね。
堀家:俺は東京にいて宇田ちゃんは広島、会いに行こうと思ってもすぐに会える距離じゃない。距離が近いと苦労が見えちゃうんですよ。知らなくていいことまで知っちゃうというか。だからこそいい関係性が保てているのかなと思います。どちらがイニシアチブを握るでもなく、俺は店のことを考えて、宇田ちゃんは服のことを考えたうえで意見を出し合えるので。
ー こうしてずっと継続できているということは、いいものができている証拠ですよね。
堀家:そうなんです。うちのスタッフも〈UDA〉のことをすごく愛しているので。現場にいる人たちが彼の熱意をお客さんに伝えられるっていうのは非常にありがたいことです。