501をうまく穿けない人たちの悩みをきちんと理解してつくってくれる。
ー 金子さんは〈スタビライザージーンズ〉に対してどんな印象をお持ちでしたか?
金子:「ウィズム」で取り扱いをしているのは知っていました。いまって昔のアイテムを復刻でつくる人たちがごまんといるなかで、矢實さんはそういう枠組みではないなぁという印象を持っていましたね。現行品としてのジーンズを実直につくっているブランドだなと。それはぼくがいま〈LE〉でやっていることと共鳴する部分があると思ったんです。
ー なるほど。矢實さんはいま金子さんが仰った“現行品”という部分に対して、どんな気持ちをお持ちですか?

矢實:これは話していいことなのか分からないんですが…、とあるデニムメーカーが某大手デニムブランドに訴えられたことがあるらしいんです。商標に抵触するということみたいなんですけど、そういう話を聞くと、自分がデニムのブランドをやるなら、きちんと自分らしさというかアイデンティティのあるものづくりをしないといけないというのはずっと思っているんです。それがぼくの現行品の捉え方ですね。ただ、ダメージ加工が入っていたりとか、真新しいものをつくるわけでもなく、ぼく自身はクラシックなものが好きなので、そうしたアイテムに敬意を払いながら現行品という意識でものづくりしています。
金子:小森さんも現行品について共感してましたよね。
小森:「ウィズム」で買ったことあるんですよ、〈スタビライザージーンズ〉を。スキニーっぽいシルエットのやつなんですけど。
矢實:「タイトテーパード」と呼んでいるモデルですね。
小森:スキニーを穿きたいけど、ちょっと抵抗があるなっていうときにお店で見つけて。〈スタビライザージーンズ〉は男らしさがあって、ぼくでも手に取りやすかったですね。
ー 〈LE〉はいつも小森さんが監修をしながらアイテムをつくっていますが、今回のデニムをつくるにあたって矢實さんとの役回りの違いはどういったところにありますか?

小森:今回ぼくは501が似合わない代表としてコメントをしました。
ー 似合わない代表?
金子:今回は生地も特別なんですけど、シルエットを2つ用意しているところも特別なんです。小森さんとデニムについて話してると、「501が穿けない」ってよく言うんですよ。
小森:ぼくはお尻の肉付きがあまりよくなくて、O脚なんです。太腿も細くて、結果501が似合わない。でも金子さんは真逆で、自転車に乗っているし足腰がしっかりしているから501がすごく似合うんです。海外のモデルが穿いていて、シルエットがテーパードに見えることがあるじゃないですか。そんな感じ。ぼくの場合はフレアに見える。自分の体のいびつさが如実にでちゃうんです。

金子:ぼくは若い頃から穿いているジーパンだったのでなんとも思ってなかったんですけど、よくよく話を聞くと、うちのスタッフにも「501が似合わないんです」っていう子が結構いて。だったらそうした人たちでも穿きやすいシルエットをつくろうということで、2フィット用意することにしたんです。
実はそこにも矢實さんにお願いしたかった理由があって、矢實さんはパタンナーでもあるんですよね。だから501をうまく穿けない人たちの悩みをきちんと理解してつくってくれるんじゃないかと思って相談したら、明快に答えをいただきました。ここをこうすれば解決しますよ、と。
ー 具体的にシルエットについて比較していきたいのですが、まずはこちらが501を参考にしたというスタンダードなフィットのTYPE:KKです。


〈LE〉 デニム(TYPE:KK) ¥18,000+TAX
ー 一方で、こちらが501に対してニガテ意識を持っている方に向けたフィットですが、具体的にどんなところを変えていますか?


〈LE〉 デニム(TYPE:CO) ¥18,000+TAX
矢實:いじってるのはほぼ腰回りだけですね。通常の501はお尻にゆとりがあるんです。だからお尻の肉が少ない人が穿くと、余計そのゆとりが目立って綺麗なたるみが出ないんですよ。だからそれを摘んで削ってあげて、お尻がフラットに見えるようにしました。そうすると形のいいバックスタイルになるんです。そうやっていじった後に小森さんから「裾幅も調整したほうがいい」というアドバイスをいただいて、裾幅も若干細くしています。
金子:一瞬で解決しましたよね。
小森:調整後に穿いてみたら、まったく問題なかったですね。
金子:501がニガテだったうちのスタッフもこれなら穿けると言ってました。