インターネット上にはない情報を汲み取って形にするという作業をしたい。
ー 今回の企画を通して得られたものなどはありますか?
山根:やっぱりすごく楽しかったのと、ものづくりをする人間として、いろんな人のやり方を見たことで勉強にもなりました。ぼくは「1+1=2」というのは当たり前だと思っていて、コラボレートするにしても、自分たちでスタッフを組んでビジュアルをつくるにしても、それが「10」になればいいなと思うんです。今回それができたし、納得いくものができたので早く発表したかったんですよ(笑)。
ー 10年という歳月の中でブランドとして成長を感じられて、お客さん側も「〈エフシーイー〉といえばこういうブランド」というイメージのようなものが出来上がっていると思います。今後、そのイメージをどうしていきたいか、最後に教えてください。
山根:ぼくらは実際に旅をしながらいろんな国を訪れて、そこで得たものをデザインに活かしています。それはレコードを掘る行為と同じだと思うんですよ。昔、バンドのレコードやZINEが欲しくてライブハウスまでわざわざ行って、バンドからそれを直接買うみたいなことをよくしていて、その延長線上にいまがある。インターネット上にはない情報を自分たちなりに汲み取って形にするという作業をやりたいんです。そういう活動って買い物をするときの真理というか、本質に辿り着くための道しるべだとぼくは思うんです。

ー なるほど。
山根:ひとつのレコードを買うのに、インターネットを経由するのか、現場に直接行くのかではプロセスが異なりますよね。買い物という行為がすごく簡単になってしまっているのは、ぼくらの業界にとっては危機だと思っているので、そうした本質を探る行為、さらにはそういうプロセスを経た上でできたものだというのをしっかりと伝えていきたいですね。
ー 表面だけでなく、ということですね。
山根:買って、着て、終わり、というのも否定はしないです。ただ、そのブランドがどんな気持ち、過程でものづくりをしているか、というのを知ってくれたら嬉しいです。ぼくらは自分たちの旅の記録としてZINEをつくったりとか、関係者に送るDMはテーマとなった土地の郵便局から送ったようなデザインにしたりしていて、こういういままでつくったものを集めて発表する機会をつくりたいなと思っています。そうやって〈エフシーイー〉のアイテムができるまでの道筋を気にかけてもらえたら幸せですね。

イギリスをテーマにした2020年春夏コレクションのポストカード。山根さんと一緒に現地に足を運んだ、写真家・大辻隆広さんが撮影したカットをアートディレクターの平林奈緒美さんがデザイン。