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雄弁な本棚。vol.1 森永邦彦(アンリアレイジ デザイナー)
Bookshelf may be yourself.

雄弁な本棚。
vol.1 森永邦彦(アンリアレイジ デザイナー)

優れたクリエイターは、どんな本を読み、何を血肉としてきたのか。ときにひとを狂わせ、ときにひとを成長させる本というものについてのインタビュー。本棚を見せてもらうことは、そのひとの心の内を少しだけ覗かせてもらうことなのかもしれません。

本を通して、自分と異なる視点から世界を見る。

ー 最近は新しい本をどのように購入されるんですか。

Kindleですね、いまでも葛藤はあるんですが。やっぱりものとしてあったほうが入ってくるので。なので、Kindleでも好きな箇所はスクリーンショットした後にプリントアウトして貼ったり、LINEとかでも言われて印象に残った印象に残ったことばはプリントアウトしてノートに整理したりしています。物体化するのが好きなんです。

ー ここ最近、なにか面白かった本はありましたか?

去年単行本になった又吉直樹さんの『人間』ですね。連載で読むべきだなと思って、その期間だけ新聞も購読していました。これまで好きな作家の作品を連載として日々読んでいくという行為と、自分の毎日の生活が交差するという経験はなかったので新鮮でした。

ー 自分の考えをスイッチできることが楽しさに繋がるんですかね。

やはり自分と異なる視点で世界を見れるっていうのは、醍醐味ですね。毎日両極端の葛藤があって。それは、自分らしいものをつくりたいという欲求と、自分の思考回路とは違う、服づくりを知らない状態で服をつくってみたいという欲求。他人からするとらしくないって言われて難しいんですが、本の場合は読むことで、普段の自分とは違う脳を使っている感覚があるので面白いですね。

ー Kindleに新聞と続きました。では、ウェブと本での棲み分けはありますか?

家でひとり、本を読む時間が好きでして。本を読みながらも、ことばと自分が対話できている感覚があるんです。読むスピードは遅いので、時間はかなりかかる方だと思います。一方、ウェブは量重視ですね。ジャンルを限定しないで、いろいろなものを摂取しています。会社のチームにも共有した方がいいと考えていて、毎週月曜に自分が新たに触れたものを報告したりしています。しかも、割と長文です。

ー それでは、会社とご自宅の蔵書はどのように分けているのでしょうか。

会社にあるのは、テーマに関連していたり、仕事ですぐに使えるものが入ってます。仕事をするなかで、本が目に触れているといいと思うので、忘れないためにという意味合いもありますね。ここの本棚はもう一杯なので、たまに中身を入れ替えたりもしています。自宅の本棚には漫画が多いですね。漫画は物語重視派で、最近また『サンクチュアリ』を全巻とか『火の鳥』も読み返して、改めて頭がショートするほど、そのすごさを感じました。

ー ファッションはシーズンという半年の短いスパンで、方や本は長い間読まれるものですよね。そのあたりはどう感じていますか?

何度でも読みたくなる本と何度でも着たくなる服というのは、近いようでいて結構遠いと思っています。本は10年、20年、30年と越えていける。けど、服は何度着たいと思っても、本に比べると短い期間ですよね。たとえば20年着続けたらかなり長い部類ですし。そういう意味で、寿命の違いは感じます。本は100年前のものでも、すごく感情移入することができる。ファッションはそうではないので、そういうことをファッションでできたら幸せだなと思って、服をつくってます。

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