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雄弁な本棚。vol.1 森永邦彦(アンリアレイジ デザイナー)
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雄弁な本棚。
vol.1 森永邦彦(アンリアレイジ デザイナー)

優れたクリエイターは、どんな本を読み、何を血肉としてきたのか。ときにひとを狂わせ、ときにひとを成長させる本というものについてのインタビュー。本棚を見せてもらうことは、そのひとの心の内を少しだけ覗かせてもらうことなのかもしれません。

森永さんの人生に影響を与えた5冊。

神田恵介さんとの出会いから、本の読み方にも変化が訪れ、自らの思想とクリエイションを高める糧としてきた森永さん。人生を左右した本を5冊教えてもらうと、悩みながらファッション誌に漫画、エッセイ集と幅広いラインナップを紹介してくれました。

『中学英単語1850』(学研プラス)

高校入試用の英単語をセレクトした学習参考書。森永さんにとってはコレクションテーマを選ぶときの参考書。「SHADOW」「LIGHT」「REFLECT」「CLEAR」「DETAIL」「ANGLE」などこれまでのテーマはすべてこの本の中から選ばれてきた。立ち上がりを控える2020年秋冬のテーマは「BLOCK」。「コレクションのテーマは、シンプルな単語です。さらにそのテーマのことばを聞いても、その服が想像できないようなことをいつもやりたいと考えています」(森永さん)

『ジャップ / Zyappu』(光琳社出版)

今はなき光琳社出版による、社会やサブカルチャーをファッションで横串に通した雑誌。「ほぼ同時代の雑誌『DUNE』や菅付さんによる『COMPOSITE』とかも好きですが、『ジャップ』が特に好きですね。東京コレクションを平川武治さんが批評していたり、エキサイティングでした。批評性があって、とても強い。いろんなルールを壊していた雑誌だと思います」(森永さん)

『Martin Margiela:Street Special 1&2』(Street Editorial Office)

豊富な写真によって、マルタン・マルジェラの世界観を表現した絶版の一冊。「何度見返しても発見がある。自分が美しいと思っていなかったものでも、これもありだよと教えてくれます。それこそレジの袋でも、値札でも、すべてのものが美しいと。いまの時代にマルタンがいたらどう作るかなと、想いを馳せたりもします。その思想の中で、まだかけらとして残っているものを、ちがう形で作ってみたいとぼくは思います」(森永さん)

『異色短編集』藤子不二雄(小学館)

名義は藤子不二雄時代のものだが、A先生ではなく、F先生によるもの。代表作の『ドラえもん』とはある意味真逆の、ダーク、シニカルな部分が特徴の漫画。「アンリアレイジでやりたいことが詰まってます。ぼくは『ある日』というタイトルの物語が好きです。中学時代にぼくは、甲本ヒロトが好きになったんですが、ヒロトが影響を受けた一冊としておすすめしていたんです。日常の中に起こりうるちょっとした違いみたいなものを描いていて、“サイエンスフィクション”のSFではなく、“少し不思議”なSFです。次のコレクションを考える時、よく見返しています」(森永さん)

『ドロップアウトのえらいひと』森永博志(東京書籍)

手堅い生き方からドロップアウトした45人を追った、生き方参考書。若いうちに読んでおくバイブルとして多くのひとが挙げる一冊。「伯父(おじ)を知るきっかけになった本です。祖父(そふ)の秘密の書蔵で見つけたものです。森永家はわりと堅い家系なんですけど、伯父は危険分子として追放されたんです。二十歳をすぎるまでは、ぼくとも会わないよう隠されていた伯父さん。早稲田を卒業したのに、ファッションの道に進むことになった自分も、ドロップアウトのえらいひとの影響かと両親も心配していたようです。いまはそんなことはないですけど(笑)」(森永さん)

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