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雄弁な本棚。vol.1 森永邦彦(アンリアレイジ デザイナー)
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雄弁な本棚。
vol.1 森永邦彦(アンリアレイジ デザイナー)

優れたクリエイターは、どんな本を読み、何を血肉としてきたのか。ときにひとを狂わせ、ときにひとを成長させる本というものについてのインタビュー。本棚を見せてもらうことは、そのひとの心の内を少しだけ覗かせてもらうことなのかもしれません。

PROFILE

森永邦彦
アンリアレイジ デザイナー

1980年、東京都国立市出身。 早稲田大学社会科学部卒業。予備校講師の紹介から神田恵介に憧れ、大学在学中にバンタンデザイン研究所に通い服づくりをはじめ、〈アンリアレイジ(ANREALAGE)〉をスタート。ブランド名はA REAL-日常、UN REAL-非日常、AGE-時代を意味する。日常の中にあって非現実的な日常のふとした捩れに眼を向け、見逃してしまいそうな些事からデザインの起点を抄いとる。藤子不二雄のSF(すこしふしぎ)からの影響を公言。フイナムには初登場となる。

ファッションを切り口に社会を扱っていた「ジャップ」。

ー 森永さんは子供のころ、どのように本と接してたんでしょうか。

原体験という意味では、父が市立図書館で館長をやっていたので、たくさんの本が家にありました。ひとりっ子だったこともあり、本を読むひとり時間が多かったですね。小学生時代は藤子・F・不二雄ひと筋といった感じで『ドラえもん』が好きでしたが、手塚治虫さんが地元に公演にいらしたのをきっかけに、手塚漫画も好きになったり。その後、中学生になると文学も読むようになって、きっかけは思い出せないのですが、梶井基次郎や太宰治を読んでましたね。

ー そういった作家のどのようなところが響いたのでしょう。

日常が変容する話が好きなんです。“サイエンスフィクション”のSFではなく、“少し不思議”なSFですね。自分の日常はほとんど変わってないのに、そのひとの心の中だけで劇的に変わっている、というような話が好きで。なので、梶井基次郎の『檸檬』とか衝撃的でした。あと、藤子・F・不二雄の『SF短編集』に描かれているような、普通の日常感が失われていくなかで、日常を見つめていくという話がお気に入りでした。

ー そのころはファッション関係の本などは読んでいましたか?

高校が私服の学校だったので、そこでようやく自分の意思で服を買うようになりました。そのあたりから『ジャップ』という雑誌を読んでいたんですが、ファッションだけに限らず、というよりファッションを通じて社会やカルチャーに切り込んで、闘っている姿勢が好きでした。そうして、自分の好きなものとファッションが重なっていったという感じです。

ー 1980年生まれということは、時代的に裏原全盛期ですね。

そうです。当時、すでに『宝島』でジョニオさんが連載を始められていて、それも読んでいました。高校時代は原宿まで服を買いに行って、お店の行列に並んで、でも結局服買えなくて。キャットストリートに行くとそれが2万円とかで売られている現象に、ファッションってすごいなと感じていました。

ー ファッションにまつわるエネルギーが渦巻いていたんですね。

ただ、裏原の渦の中にはいたんですけど、なんだろう…「ノーウェア(NOWHERE)」とかのお店に行っても服のことはわからないけどなんとか買って、買えたひとは5倍くらいの値段で売っていて、というのも見たりしていて。その普通じゃないファッションのカルチャーに触れて、ファッションというのはとんでもなく深い世界なんだろうなという印象でした。

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