PROFILE
1985年生まれ。文化服装学院卒業後、「M&M CUSTOM PERFORMANCE」のアパレル企画に所属。2005年に〈タグスワーキングパーティー〉を立ち上げ、翌年からアパレルラインを展開。現在はファッションだけに留まらず、飲食店や美容院などのロゴデザイン、印刷物、ウェブなどの制作も手がけるグラフィックデザイナーとして活躍。多角的な視点からのアイディアを視覚芸術と応用芸術を組み合わせることで表現活動をおこなう。
厳しい時代にこそ、
真価を発揮するアート。

左から、Sign Tee(Special Edition)¥15,000+TAX、Gogh Message Tote Bag ¥8,000+TAX、The Yellow House Tee ¥13,000+TAX、Tree Roots Shirt ¥25,000+TAX
ー 〈タグスワーキングパーティー〉と「ゴッホ美術館」の新コレクションでは、白地のウェアをキャンバスに見立ててグラフィックをプリントしたそうですね。
森岡:今、アートの力を大きく感じています。古典的な絵画にも、現代的なグラフィティにも、アートには不思議な癒しの力がある。これまで、大きな災害で茫然自失としたときにも、支えになってくれたものです。
しかしコロナ禍で多くの美術館が閉鎖されてしまった。今作は自分と同じように心の落ち着きどころを失ってしまったひとたちに語りかけたい気持ちで作ったコレクションです。例えば、電車の中で誰かがこのTシャツを着ていたら、その後ろ姿を見て癒されるひとがいるかもしれない。そんな想いからデザインを練り上げています。
ー 時代にメッセージを送りながら、アートをファッションに昇華していますね。モダンなタイポグラフィと、やわらかなカラーパレットの組み合わせが新鮮です。それぞれ引用したソースについて教えてください。
森岡:今回のコラボレーションではゴッホ美術館の所蔵から《黄色い家》《木の根と幹》《グラスの中のアーモンドの花》《モンマルトルの夕日》の4作品をピックアップしました。さらにゴッホの手記からは、それぞれの絵画にマッチする言葉を選んでいます。絵画を通じて学べることや人々のパワーとなるものを、僕なりのメッセージとしてコラージュしています。
ー タイポグラフィにもメッセージが込められているんですね。
森岡:例えば《木の根と幹》の絵画には「聞くべきは画家の言葉ではなく自然の言葉」という意味のタイポグラフィをプリントしました。自然には敵わないことを受け入れ、何が出来るか考えていきたい今の状況に対する表現です。《グラスの中のアーモンドの花》の絵画には「好きなものは好きなだけ愛するのがいい」という言葉を。家の中でも創作や趣味に没頭できるという希望のメッセージを込めています。

ー 《黄色い家》の絵画も印象的ですが、どのような意味が込められていますか?
森岡:ある種、〈タグスワーキングパーティー〉の象徴としてつくりました。青はブランドのイメージカラーのひとつ。対比となる色の存在によって、初めて自分を認識していくことの隠喩ですね。これまで多角的な視点でプロダクトを作ってきたので、「黄色と橙色がなければ、青色もない」という言葉にハッとして。哲学に共感したんです。
ー なるほど、たしかなストーリーがありますね。このコレクションは「トレーディング ミュージアム コム デ ギャルソン 東京ミッドタウン」「ディストリクト ユナイテッドアローズ」での取り扱いだとか。
森岡:僕自身が大好きなショップに置いていただけることは、とても嬉しいです。「ディストリクト」さんのセレクトを日頃からリスペクトしていますし、〈コム デ ギャルソン〉さんに関しては僕が学生時代から川久保玲さんの言葉には大きな影響を受けてきました。このタイミングで、尊敬するショップで展開ができて感慨深いです。