“ザ・リュック” なデザインです。
中室:今日は上出さんに使用感を語っていただこうと思って、事前に希望のモデルをお渡ししていました。
ー 選ばれたのはビジネストリップのシーンを想定したPROラインのバックパックですね。
上出:ぼくは普段鞄を持たないので、どうしても鞄を持たなきゃいけない時は旅行の時くらい。ですので鞄を買う時は必ず一番大きなものを買います。

上出さんが〈モノリス〉のラインナップの中から選んだのはバックパック。その中の最上位モデル、プロのLサイズだ。たくさんの荷物が入る収納スペースに加え、使い勝手の良いオーガナイザーが備えられている。
ー 実際に使ってみた感想をお聞かせいただけますか。
上出:驚きはないです。でも、あえてそうしているんだろうなと感じました。というのも、つくりはきれいだし、構造も気が利いている。
その “あえて”、と感じる点は、〈アイヴォル〉も〈モノリス〉も双方に言えることですが、どちらもぱっと見は、誰もが想像しやすい基本の形がベースになっていて見た目はあえて昔ながらで、つくりは現代といった手法。
こうやって言ってしまうと簡単に聞こえるけど、ぼくはこういうのはルールがあると思っています。
例えば、昔のスニーカーの見た目は大好きだけど、いまとなっては履き心地がちょっと…ってことがあります。でも、定番として人気があるからファンは仮に履き心地が悪くてもいろいろ変えることを極端に嫌う。
これをぼくは “定番の袋小路” と呼んでいます。定番故に進化することを禁止されてしまう状況。
中室のディレクションが上手いなぁと感じるのは、その “定番の袋小路” に入ってしまった商品を実際に中室自分自身が愛用しているが故に見た目を変えていない。意図的に古いまま。だけど、〈アイヴォル〉を掛けた人だけが、〈モノリス〉を背負った人だけが、気づくことのできる進化のさせ方です。
これはディレクションしている中室自身が定番を実際に愛用してかつ、厳しいファンの取り締まりを理解してないとできない。中室自身、革靴やクラシックなガーメントを愛用したりしているのでユーザーの気持ちと一致しているんだと思います。
何かをつくるときに大切なことは、何をするかと同様に何をしないか明確にすることである、とぼくは考えていますが、〈アイヴォル〉も〈モノリス〉も中室のそういう “あえてしない” という意思を感じました。ぼくは “こうしました!” ってポイントよりも、“あえてしない” ポイントの方が好きだし、プロダクトの完成度を上げることって、そういうことが大切だなと思います。

ー 〈テアトラ〉はテクノロジーを駆使し、新たなライフスタイルにフィットする服をつくりました。〈モノリス〉も同じ匂いがします。
上出:残念ながらその見方は正しくありません。というのも、過去のものを現代化する、というのが〈モノリス〉だったり〈アイヴォル〉だったりするとすれば、〈テアトラ〉はソースを過去に求めていないからです。しかしどちらが正しいということではありません。それぞれに意味があると考えます。
ー 絞り込んだ構成、そしてスタイルやシーンを設定した提案は通じるところがありそうです。〈モノリス〉にはSTANDARD、OFFICE、PROという柱があって、そこにデザインやテクノロジーが紐付けされています。ラインナップは全部で31種類ですね。