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toffの9年間と、TFとしての0日目。
Talk About The Store

toffの9年間と、TFとしての0日目。

祐天寺と学芸大学のちょうど中間の五本木エリアにあるセレクトショップ「トフ(toff)」は、11月19日に9周年を迎え、慣れ親しんだ「トフ」という名前から「ティーエフ(TF)」へとショップ名が変わります。しかし、「名前は変わっても、スタンスは変わりません」とスタッフの岡本さん、鈴木さんは声を揃えます。そう言い切る理由はどうしてなんだろう。そして、“好立地”とは決して言えない場所ながら、人々を惹きつける所以はなんなんだろうか。そんなことが知りたくて、お二人とともに予約制オーダーサロン「ニートハウス」と中目黒のカセットテープ店「ワルツ」を訪ねました。さらに「トフ」のディレクターを務めるパリ在住の関 隼平さんを招いてインスタライブも敢行。そこから見えてきたものは、“人がいい店をつくる”という至極当たり前のことでした。

  • Photo_Hiroshi Nakamura
  • Text_Shogo Komatsu
  • Edit_Shun Koda

meets NEAT HOUSE 西野大士 9周年のためにつくった、おじいちゃんが穿いてそうなスラックス。

PROFILE

西野大士

1983年生まれ。兵庫県淡路島生まれ。小学校の教師をしつつ、ファッションを学び、大手ブランドなどのPRに。その後はPR会社「NISHINOYA」を立ち上げ、パンツブランド〈ニート(NEAT)〉のデザイナーとしても活動開始。2020年春夏シーズンから、ニューブランド〈ドレス(DRESS)〉を旗揚げ。今年9月に完全予約制の〈ニート〉直営店〈ニートハウス〉をオープン。

PROFILE

西野大士

1983年生まれ。兵庫県淡路島生まれ。小学校の教師をしつつ、ファッションを学び、大手ブランドなどのPRに。その後はPR会社「NISHINOYA」を立ち上げ、パンツブランド〈ニート(NEAT)〉のデザイナーとしても活動開始。2020年春夏シーズンから、ニューブランド〈ドレス(DRESS)〉を旗揚げ。今年9月に完全予約制の〈ニート〉直営店〈ニートハウス〉をオープン。

ー 今日はパリにいる「トフ」のディレクター関さんにもリモートで参加してもらっています。〈ニートハウス〉は今年9月にオープンしましたが、関さんはまだ足を運ばれてないですよね?

関: いえ、ちょうど前回フランスに戻る直前にオープンされたので、ご挨拶だけさせていただきました。でも、オーダーする時間はなかったので、それは次の楽しみにしています。

西野: ありがとうございます。

関: 予約制のオーダーサロンっていうのが斬新でおもしろいですよね。2時間っていう贅沢で特別な時間を過ごせそう。実際に足を運んでみると圧倒的な生地の量で、ファンからしたら堪らないですよね。

鈴木: 僕らは今日初めて伺ったんですけど、本当に生地の量が多くて驚きました。入った瞬間から2人で「かっこいい~!」って(笑)。あと、内装のデザイナーが気になりました。

西野: デザイナーは迎えず、僕たちでつくったんですよ。「ニートハウス」って名前なので、家っぽくしたいと思っていて、オープンする前に決め込むより、オープンしてからこんな棚や台があったほうが便利だねって言いながら、徐々に変えていったんです。

岡本: 僕らが別注をつくらせてもらったときは、生地スワッチで見ていたので、これだけの数が揃っていると迫力がありますね。

ヴィンテージファブリックをはじめ、英「テイラー&ロッジ(TAYLOR&LODGE)」や伊「ロロ・ピアーナ(LORO PIANA)」といった名門メーカーの生地も多く取り揃える。詳しくはこちらの記事にて。

ー 西野さんと関さんの付き合いは長いんですか?

西野: 今年の1月に「パークス パリ」で開催した〈ウィークエンド パリ〉に出品させてもらったのが最初です。その打ち合わせが1年前で、以前から知ってはいたんですが、お会いしたのはその時が初めてでした。そこで、関さんがディレクションしている「トフ」さんでおもしろい取り組みができたらいいですねって話になって。

関: 僕も前々から〈ニート〉は気になっていました。僕自身はデニムパンツばかり穿くんですけど、「トフ」の2人はスラックスをよく穿いていて。オリジナルのスラックスをつくろうかって話も上がったんですけど、やっぱり難しくて。ちょうどそのタイミングに西野さんとお会いできたので、相談させてもらいました。断られるかなって思いましたけど(笑)。

西野: いやいやいや、そんな(笑)。

iPhoneを片手に持つ「トフ」のバイヤー岡本 碧さんと、右側が同じくバイヤーの鈴木雄介さん。

鈴木: 実は「トフ」って〈ニート〉を取り扱ってないんですよね。

西野: そうなんですよ。〈ニート〉はディーラーさんが増えてきて、いまは新規の取扱店を増やしていないこともあって。インラインを普通に取り扱うより、別注はどうですか? って話をいただいて。

鈴木: 先にインラインを取り扱ってから別注を依頼するっていうのが普通ですが、生意気にもいきなり別注をやらせてくださいって頼んだんですよ。

ー 業界的には前代未聞ですよね。

西野: かもしれないですね。でも、個人的にはその概念に縛らず、それぞれのお店でしか買えないものだけでいいと思うんですよね。いざ別注で何をつくるかって話が進んだら、“おじいちゃんが穿いてそうなスラックス”ってお題をいただいて(笑)。

ー いいテーマですね(笑)。

鈴木: そのテーマとともに、色味はブラウンかグレーで、と打ち合わせのときにお伝えしていて。

西野: ちょうどインラインで、イギリスの〈バウアー・ローバック〉社の生地を使っていたんです。そこの生地がイメージに合いそうだったので、ブラウンとグレー系を中心に数十種類の生地を提案させていただいて。今回のブルーグレーはお二人の中ですんなりと決まったんですか?

鈴木: それぞれで気になる色を選んでたんですけど、このブルーグレーがいいって一致しました。

西野: そうだったんですね! 素材感も最高にいいんですよ。織り糸にブルーとネイビーとグレーが使われていて、綺麗なんです。何よりテーマがいい(笑)。

岡本: 単純に僕らが欲しかったんですよ(笑)。古着屋で名前やイニシャルが入っているようなイメージのパンツ。「ニート」さんのラインナップに、ネイビーやブラックはあるので、それ以外のカラーをつくりたかったっていうのもあって。

西野: あとはテーマをいただいたときにシルエットも絶対にコレだと思いました。今年の秋冬の新作の“スタンダード”っていうモデルで、ややテーパードしているシルエットです。〈ニート〉には、深いツーインタックが入ったテーパードとワイドストレートのシルエットがあるんですけど、これはその中間。おじいちゃんって、こういうシルエットのパンツに、〈スポルディング〉のシューズを履いてる感じがするんですよね。

鈴木: 本当に生意気なんですけど、シルエットも別注できたらなって話してたんですよ。少しだけテーパードしているシルエットがいいよねって。そうしたら、インラインに新しく“スタンダード”が登場してて、それがまさに理想通りのシルエットでした。

西野: え !? そうだったんですね。

鈴木: 展示会で“スタンダード”を穿いたら、めっちゃいいじゃん! って思ったんですよ。

西野: 関さんは意見が割れませんでしたか?

関: 基本的に「トフ」は、2人が好きなものを売るべきだと思っているんです。僕がいいなと思っても、彼らがうなずかないとやりません。逆に彼らが熱意を持っていれば、僕も同意します。でも、なんとなくやりたいって雰囲気を察したら、止めますし。僕はディレクターとしてやらせてもらっていますけど、すべてのジャッジを下しているわけじゃないんです。

鈴木: 取り扱いはしていないものの、僕らのお客さんは〈ニート〉のパンツを穿かれている方が多いですし、西野さんのスタイルが好きって方もたくさんいます。単純に憧れる存在っていうのが〈ニート〉であって、それが西野さんでもあります。僕らもそれを学んで、憧れられるような存在にならないといけないな、と感じています。

ー 西野さんにとって初の直営店ですが、お客さんと直接対面してみて、いかがですか?

西野: 今まで卸しがメインだったので、お客さんの顔が見えてなかったんですけど、直接お会いしてお話できるようになったのは大きいです。

鈴木: 確かに。今までディーラーさんとしか会ってなかったら、お客さんまで分からないですよね。僕らはずっと店頭にいるので、仕入れるときにお客さんの顔が浮かぶこともあるんですけど。

西野: めちゃくちゃ仲良くなれますね(笑)。2時間もあるから、そのまま飲みに行きたいくらい話し込んじゃいます。「トフ」さんは、顧客さんが多いイメージです。

岡本: 本当に支えていただいています。僕らは実際に飲みに行っています(笑)。

ー 今後は、どんなお店を目指したいですか?

西野: こじんまりとやっていきたいです。ここでたくさん売りたいってことでもなくて、ずっと〈ニート〉を好きでいてくれている人たちが、来られる場所にしたいです。基本は予約制ですけど、誰でも来店できるイベントを開催したいと思っていますし。例えば、一時期ペンキ加工をしていたこともあるので、その体験イベントとか。もっと〈ニート〉を好きになってくれて、世界観を広げられる場所にしていきたいです。

鈴木: 僕らは名前が変わりますけど、スタンスはあまり変わらないと思います。今のお客さんを大事にしながら、これからお店に来てくれるお客さんにとっては、何か新鮮な提案ができればいいなと思います。

岡本: 五本木がすごくいい街なので、マイペースにやっていきたいですね。みなさんがおもしろいと思っていただけるようにアイデアを出していきたいです。

ニートハウス

住所:東京都渋谷区神宮前(住所非公開)
電話番号:非公開
ご予約はこちらから

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