Style 02
Keiji Kaneko × IRISH SETTER 6” MOC-TOE #8173 / IS FLAGS
PROFILE
1974年生まれ。セレクトショップ「エディフィス」にてバイヤーを務めた後に独立。自身の活動を経て、2015年に「レショップ」を立ち上げる。バイイングを通してさまざまなシューズに触れており、まっすぐ筋の通ったセレクトでファッション好きを唸らせている。
意外とすっきりしたシルエットで新しい発見だった。
ー 金子さんは普段から革靴やブーツを履いている印象です。
金子: 昔から革靴ばかり履いていますね。いまは9:1くらいで圧倒的に革靴が多いです。
ー それはどうしてなんですか?
金子: 「コレがいい!」っていうものが、革靴に多いんです。ただ、スニーカーにハマったときは、ひたすらひとつのブランドを追いかけたりもします。時期によってぼくなりのブームがあるんです。ドレスシューズやエンジニアブーツ、カウボーイブーツなど、革靴やブーツのほうがジャンルが広いというのもあるかもしれません。
ー その中で〈レッド・ウィング〉にハマった時期はあったんですか?
金子: 90年代にみんな「アイリッシュセッター」を履いていて、ぼくはお金がなくて別のブランドのものを履いていたんです。だからずっと〈レッド・ウィング〉は憧れでしたね。はじめて買ったのは結構大人になってからです。
ずっとそれがコンプレックスのように頭の中にあって…。エンジニアブーツにしても、履き比べたものを見ると圧倒的に〈レッド・ウィング〉のほうがカッコいいんですよ。革質もいいですし。
ー ご自身でブーツを選ぶときに、どんなところをポイントにして選んでいますか?
金子: こういうブーツは欧米で生まれたものなので、フォルム的に日本人の体型に合わないと思うことが多々あるんです。とくにぼくなんかは、昔は体が小さくて、その割に足は平均的なサイズなので、海外の靴を履くとどうしても足元にボリュームがでてしまって。それがすごくイヤだったし、いまだにそういう感覚があるので、自分の体型に合うものを選んでます。
ボリュームのバランスというか、ギリギリきつくならないようなフィットで、なおかつ木型がスッキリしたシルエットのもの。たとえば「レショップ」でやっているカウボーイブーツなんかも、ドレスシューズのような木型のものを選んで提案しているんです。
ー 金子さんの靴の履き方には、どこかエレガントさを感じていたんですが、そこに秘密があったわけですね。
金子: 間違いなくそうですね。自分で言うのは恥ずかしいですが、エレガントというのは意識しています。
ー 〈レッド・ウィング〉はワークブーツですが、金子さんが思う“エレガントな感覚”にフィットしますか?
金子: 今回履いてみて思ったのは、意外とシュッとしているな、と。木型は変わっていないはずなんだけど、履いてみてイヤじゃなかったんですよ。いろんなワークブーツを見るなかで、もっとボリューミーなアイテムにも触れてきたから、もしかしたらその反動ですっきりして見えるのかもしれません。不思議ですよね、見てきたものや、通ってきたものによって見え方が変わってしまうというのは。いま〈レッド・ウィング〉が普通に履けるというのは、ぼくにとって新しい発見でした。
ー そもそも〈レッド・ウィング〉に対してどんな印象をお持ちでしたか?
金子: アメリカを代表するワークブーツのメーカーですね。なおかつ、日本のアメカジファッションを語る上でも欠かせないブランドですし、そういった意味ではいちばん最初に普及したブーツブランドだと思いますね。さっきも話した通り、ずっと買えなかったので、ぼくにとっては憧れでもあります。
ー これまでに何足くらい履いてこられたんですか?
金子: アメリカのフリマでオイルがギトギトのスティールトゥのレースアップブーツを買ったのと、もう一足ペコスを持っててそれは手放してしまいましたね。
ー アイリッシュセッターは今回履くのがはじめてですか?
金子: そうなんですよ、完全に買い逃してしまって(笑)。90年代以降ファッションのトレンドとして取り沙汰されることもなくて、どこかいいなぁと思いつつも、なかなか買うタイミングがなかったですね。
ー 履いてみていかがですか?
金子: 履き心地がめちゃくちゃいいですね。インソールが柔らかすぎなくて程よく気持ちいいのと、つま先の反り返しもすごくいいです。歩いたときに前に進みやすいというか。ブーツって足首に自由がないけど、この反り返しがあることで歩きやすさが確保されている気がします。
ー 現代的なファッションアイテムとして「アイリッシュセッター」を眺めたときに、どんなことを思いますか?
金子: 最近ぼくの周りでも履いている人が増えていて。知り合いのファッションディレクターや、セレクトショップのバイヤーが履いていたのを見かけました。だからジワジワきているというのは、薄々感じていたんです。いまは作家性が強い服よりも、とにかくシンプルな服が人気だから、靴もおのずとベーシックになると思うんです。
ー そうした中で、金子さんならどのようなスタイリングの提案をされるのか気になります。
金子: じつは今回「アイリッシュセッター」を履くということで、いまみたいな格好にするか、90年代風でいこうか悩んだんです。
ー 90年代というと、全身ヴィンテージに身を包むような?
金子: そうですね。L-2のジャケットにジーパンを履いて、足元は「アイリッシュセッター」みたいな。90年代当時はヴィンテージのアイテムを合わせてましたけど、現代風に着るならいまの解釈でつくられたアイテムをやっぱり合わせたいですよね。たとえばL-2を着るとしたら、〈ネクサスセブン〉が〈バズリクソンズ〉とつくったやつを合わせようと思っていたんです。すると本当のヴィンテージとはちょっと違う雰囲気になるんですよ。そうして洗練されたものを選ぶことで、単なる90年代のオマージュではなく、きちんとアップデートされた現代的なアメカジを提案できると思うんです。
ー 90年代のままではよくないと。
金子: 最近〈リーバイス®〉の「BIG E」を新調したので、それを合わせようかと思ったんですけど、なんだかしっくりこなくて。やっぱり今風に味付けされたものを合わせるのがいいと思います。
一方ではうちで扱っている〈ベルナール ザンス〉のようなスラックスに、アイリッシュセッターを合わせるのもいいかなと。トップスには〈ロロ・ピアーナ〉のカシミヤのセーターとか着たりして。そうやって真逆の合わせをするのはいつの時代もカッコいい。本来、ワークとドレス、ワークとカシミヤってまったく相容れないものですけど、そこがハズしの魅力でもあると思います。
ー あとは今回のスタイリングのように、太いパンツとの組み合わせも新しさを感じます。
金子: そうかもしれないですね。意外と合いました。それはおそらく、このパンツの生地がスエット素材がベースになっているからだと思います。スエットと「アイリッシュセッター」って、おしゃれな人が昔していた組み合わせなんですよ。
ー パンツのシルエットが太いぶん、シューズがすっきりと見えますよね。
金子: シルエットは意識しましたね。履いてみて意外とすっきりしていたんですけど、それを更にすっきりと見せたかったんです。ワークブーツのゴツさを隠したかったので。
ー それに加えて白を基調にしたコーディネートなので、クリーンな印象の中でワークブーツが引き立っているように思います。
金子: そうですね。しかもこのシューズはペンキの加工がされているので、徹底的にクリーンにしたほうがいいと思いました。一見するとラフなんだけど、よくみると上品というか。ダッフルコートもそんな感じで、佇まいは上品なんだけどシルエットはルーズなんですよ。そうゆうバランス感なら、靴も服も両方が引き立つかなと思って、今回のスタイリングにしました。
トラクショントレッド アウトソールを採用したクラシックなワークブーツ「#8173」をベースに、ハンドペイントを施した一足で、“ワーク”なムードがより強調された仕上がりが魅力。タンの内側には復刻された「アイリッシュセッタープリントラベル」をあしらっており、すでに一足持っているファンにもうれしいディテールが盛り込まれている。