Style 03
Ryota Yamada × IRISH SETTER 6” MOC-TOE #8875
PROFILE

1980年生まれ。文化服装学院を卒業後、大手セレクトショップに入社。販売職を経験した後に、スタイリスト小沢宏氏に師事。2007年に独立し、現在はさまざまな媒体で活躍中。靴に対しても一家言あり、トレンドよりも自身のスタンダードを大切にしている。
靴としてすごくベーシックだから、なんでもいける強さがある。
ー 山田さんの最近の足元事情を知りたいです。
山田: ずっとスニーカーばかり履いています。子供が生まれてからは余計その傾向が強くなってますね。
ー スニーカーの中でもバルカナイズ製法の、誰もが知る定番アイテムを履いている印象があります。
山田: そうですね。ボリュームがないスニーカーが好きかもしれません。でも、ハイテク系のアイテムもまったく履かないというわけではないんですが、ぼく自身、「いまこれを履かなきゃ」っていう感覚が年齢と共に薄れてきていて、自分のなかの定番の中からその時の気分に合うものをチョイスしています。


ー では、シューズのトレンドはどう眺めていますか?
山田: やっぱりスニーカーの勢いは強く感じますね。トレンドというよりも、それとは別でひとつのシーンができあがったみたいな感じがします。コレクターたちがいて、その人たちのあいだでレアスニーカーが盛り上がっている、みたいな。でも、結局そういうアイテムって何年も履けないですよね。「いまそれ履いちゃうの?」っていうような気恥ずかしさがあります。
ー ブーツの盛り上がりは感じますか?
山田: これだけスニーカーが盛り上がっていたら、その反動はあるでしょうね。あとは短靴とかを履きたいという人も増えているような気がします。でも〈レッド・ウィング〉はもはや定番の位置付けだから、履いていてマイナスになることはないと思うんです。
ー 定番であるがゆえに、街になじみますよね。
山田: そうですね。だからこそ、どんなタイミングで買ってもいいというか。寝かせていても、スニーカーみたいに加水分解することもないですし。

ー 山田さんが〈レッド・ウィング〉をはじめて履いたのはいつのことですか?
山田: 高校の入学祝いとして祖母に買ってもらったのが最初です。それが自分にとってはじめてのブーツでした。祖父母の家が吉祥寺に近くて、〈レッド・ウィング〉のお店があったんですよ。
ー 欲しかったんですか?
山田: すごく欲しかったんです。雑誌の影響ですね。『ブーン』だったかな。当時は90年代で、PUFFYとか、奥田民生さんとか、ダウンタウンの浜ちゃんも履いていて。ヴィンテージデニムに合わせているのに憧れていました。その後「ビームス」で働くようになるんですけど、シューズコーナーにずっと〈レッド・ウィング〉があって、スタッフもみんな持っているアイテムでした。
ー それ以来、履いていないですか?
山田: 吉祥寺で「アイリッシュセッター」を買って、10年くらいは手元にあったと思います。
ー 10年履けるほど丈夫ということですよね。
山田: そうですね、本当につくりがしっかりしています。その割には値段が手頃なところもいいですよね。最初の頃、ミンクオイルをすごく塗っていたのを覚えているなぁ。それこそ〈レッド・ウィング〉を通して、“ミンクオイル”とか、いろんな用語を知ったかもしない。「ミンクオイルは絶対買わなきゃダメだ」って教わって(笑)。
あと、学生時代に仙台の「リアルモンキー」っていう古着屋に行ったことがあって。そこのスタッフの人たちがみんなブーツを履いていたのが印象的でした。東北の冬場はとくに寒いから、スニーカーだと頼りないんですよね。そういう実用性みたいなところもやっぱりきちんんとしてますよね。


ー 〈レッド・ウィング〉に対してどんな印象を持っていますか?
山田: やっぱり定番ですかね。世の中って、意外と定番と呼ばれるものが少ないと思うんです。いつでも同じものが買えるというのは本当にありがたい。しかも、こういうブーツメーカーならなおさら。だからずっとあってほしいです。
ー 最近、ジワジワと〈レッド・ウィング〉を履いている人が増えているようです。
山田: そんな気はしますね。最近、先輩のスタイリストが履いているのを見ましたし。あの人が履いているということは、2年後にすごいことになっているかもしれませんね。
ー 今回「アイリッシュセッター」を履いて頂いていますが、90年代から一周回って履いてみて、どうですか?
山田: 変わらないカッコよさがありますね。たまに履いているおじさんを見かけますけど、経年変化しているのも魅力的ですよね。履きジワとか、アタリが出ている感じとか。靴としてすごくベーシックだから、なんでもいける強さがあります。とはいえ、やっぱり現代的な履き方をしたいですよね。


ー 今回、コーディネートはどんなことを意識しましたか?
山田: じつは一回わからなくなっちゃって(笑)。スエットを着て、コートを羽織るみたいな合わせ方をしてみたんですけど、自分としてはなんか普通でおもしろくなくて。ウェスタンスーツみたいなのを持っていて、それを着てみたら今度はキメキメになりすぎちゃったんです。
それで小綺麗なアイテムと合わせるといいかなと思って、このスラックスと合わせてみました。それにきれい目なシャツを羽織って。
ー 古着と現行のアイテムをミックスしたコーディネートは、「アイリッシュセッター」と相性がよさそうですね。
山田: そうですね。とにかくヴィンテージだけの組み合わせは避けたくて(笑)。でも、それはぼくらが90年代を通過しているからで、いまの若い子たちがそういう組みあわせをするのはアリだと思いますね。ベロアのスカジャンの中に適当にTシャツを着て、ジーパンは〈リーバイス®〉の「517」とかを合わせて、足元に「アイリッシュセッター」を履いていたらすごくいいと思う。ちょっと70’sっぽい要素もプラスしたりして。

ー プレーントゥと比べると、モックトゥに難しさを感じる人もいるかもしれません。そうした人にはどんなアドバイスがありますか?
山田: モカシンとか、デッキシューズのような感覚で履くのがいいかと。こういう土臭い感じというか、カントリーっぽい雰囲気はかわいくていいと思いますけどね。
ー 最後に、スタイリストとしてスタイリングを組むとしたらどんな提案をされますか?
山田: テーラードの服を合わせて提案したいです。クラシックなものよりは、化繊をつかった機能的な服とか、〈プラダ〉のようなシャープな雰囲気の服にも合いそうです。ハイブランドに古着を差すような感じがカッコよさそうですよね。

IRISH SETTER 6” MOC-TOE #8875 ¥37,900+TAX
もともとは、ワーク・ハンティング用につくられた8インチ丈の「#877」が原型。そこからさまざまなバリエーションが生まれ、進化していく中で「アイリッシュセッター」を象徴する色でもある赤茶の「オロラセット・ポーテージ」というレザーを採用した「#8875」が誕生した。モカシンタイプのつま先は余裕があって指先を動かしやすく、高い快適性が魅力の一足。