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New Normal. New Thing. vol.2 クリエイターは、ニューノーマル時代になにを手に入れたのか。
MONTHLY JOURNAL NOV.2020

New Normal. New Thing. vol.2
クリエイターは、ニューノーマル時代になにを手に入れたのか。

ぼくたちの生活にコロナという言葉が飛び交い合うようになって数ヶ月。新しい生活様式と向き合うなかで、意識や価値観が変化した人も多いことでしょう。前向きにとらえれば、自分らしさを見いだせる、いい機会なのかもしれません。それは、お金の使い方にも言えることで、誰もが本当に良いものだけを買いたいと思案しているはず。そこで目利きのクリエイター4人を訪ね、消費動向や心境にどんな変化があったのか伺ってみました。新時代の方位磁針となるのは、意外と身近なモノなのかもしれません。

  • Photo_Masaru Katou
  • Text_Shogo Komatsu
  • Edit_Shun Koda

PROFILE

尾崎雄飛

1980年生まれ。愛知県出身。セレクトショップのバイヤーを経て、〈フィルメランジェ(FilMelange)〉の設立に携わる。2011年に独立し、フリーランスのデザイナーとして多方面で活躍しつつ、2012年に自身のブランド〈サンカッケー(SUN/kakke)〉を立ち上げた。2015年には〈ヤングアンドオルセン ザ ドライグッズ ストア(YOUNG & OLSEN The DRYGOODS STORE)〉をスタート。

トレーニングをゲーム感覚で楽しむApple Watch。

ー ひとつめはApple Watch。意外と言いますか、あまりを付けている印象がありませんでした。

尾崎: 腕時計はアンティークの機械式が好きで、いろんなものを付けたいんですよね。最新ガジェットも、〈アップル〉社製品も好きですけど、Apple Watchは毎日付けることに意味があると思っているから、必要ないと思っていました。

〈エルメス(HERMES)〉のレザーストラップにカスタマイズ。機械式腕時計では選ばないオレンジを選んだそうだ。同梱されているシリコンのスポーツバンドには、裏面に〈エルメス〉のボタンのデザインが施されている。

ー そんななか購入に至った理由はなんだったんですか?

尾崎: 1月に脚の靭帯の手術をしたんですけど、自粛期間中に時間があったのでリハビリに力を入れていたら、だんだんトレーニングが楽しくなって。それで買いました。それと、〈タニタ〉の体重計には、Apple Watchと連動する専用アプリがあって、体重や体脂肪、筋肉量や水分量なども数値で表示されるんです。すると、鍛えれば鍛えるほど、数値が変わっていく様子がゲーム感覚で、もっと楽しくなったんですよね。

ー 日常的ではなく、トレーニング用として着用されているんですね。

尾崎: そうなんです。体内年齢も測定できるんですけど、最初に測ったときは実年齢よりも上でかなりショックだったんですよ。しっかり3食とっているし、運動もするから、健康だと思っていたけど、数値を見ると、理想とかけ離れていることに気づきました。それから体内年齢と実年齢を近づけようと頑張りました。Apple Watchを買ったおかげで、楽しみながらリハビリができたし、きちんと健康と向き合えました。

陶芸品を飾る余裕。

ー こちらは、どなたの作品ですか?

尾崎: 浜名一憲さんです。僕は陶芸品が好きで、窯元や作家さんを伺って直接購入していました。お気に入りのものを使って、コーヒーとかを飲むのが好きで。でも、コロナで家にいる時間が増えてから、作品を飾る意味も考えるようになって、実用以外の陶芸品も買うようになりました。

ー 鑑賞も用途のひとつということですね。

尾崎: これまで鑑賞といえば、絵や写真ばかりでしたが、陶器を飾るのもいいなと思って。なにの上に飾るか、下にはなにを敷くかって、構成を考えるのも楽しいです。おかげで、昔から古い布を集めるのが好きだったんですけど、それを選ぶ幅が広がりました。飾る楽しみを知って、より陶器が好きになりました。

千葉県いすみ市を拠点に、陶芸作品やアンチョビソース「セグロのクサレ」をつくっている浜名一憲さんの一品。尾崎さんは、和の器に、あえて海外で購入した布を敷くなどして、レイアウト全体で鑑賞するのを楽しんでいるそう。

つくり手の顔が分かるものがいい。

尾崎さんが「モンテクリスティ カスタム ハット ワークス」で制作したのはこれで4つ目。季節に合わせた素材でオーダーしているとのこと。こちらは、まだ被っていないそうで、これからの季節にコーディネートするのが楽しみと話す。

ー このハットは、どちらで購入したものですか?

尾崎: アメリカのニューメキシコのサンタフェにある帽子屋、「モンテクリスティ カスタム ハット ワークス」のオーダー品です。ロックダウンによって、このお店も経営が大変だったみたいで、少しでも支えになりたいと思って購入したうちのひとつ。これまでにいくつかつくっているから、僕の型が工房にあるので、メールで連絡してつくってもらいました。本当は直接伺ってオーダーしたかったんですけどね。

ー 選んだ素材について教えてください。

尾崎: 素材は、ビーバーファーフェルトで、ベルトは真鍮のバックルが付いたクロコダイルレザー。それと裏地はベージュで頼んだはずが赤になっていて。たまたま参考として見せた画像の裏地が赤だったから、勘違いしちゃったみたいです(笑)。今回の教訓としては、やっぱり直接行ったほうがいい(笑)。

ー でも、買って支援するという考え方、素敵ですね。

尾崎: もともと、知り合いのためにお金を使いたいって考え方があったんですが、その気持ちがさらに強くなりました。飲み屋も、いつも同じお店に行くようにしていて、営業できなかった時期はお弁当を頼んだり、スナックなら先にボトルをまとめて入れたりしていました。大変そうだからって、ただ支援金を渡すのはちょっと無粋な気がしちゃって。商売というテーブルのうえでやり取りした方が、どちらにとっても心地よいものになると思っています。

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