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FEATURE
New Normal. New Thing. vol.2 クリエイターは、ニューノーマル時代になにを手に入れたのか。
MONTHLY JOURNAL NOV.2020

New Normal. New Thing. vol.2
クリエイターは、ニューノーマル時代になにを手に入れたのか。

ぼくたちの生活にコロナという言葉が飛び交い合うようになって数ヶ月。新しい生活様式と向き合うなかで、意識や価値観が変化した人も多いことでしょう。前向きにとらえれば、自分らしさを見いだせる、いい機会なのかもしれません。それは、お金の使い方にも言えることで、誰もが本当に良いものだけを買いたいと思案しているはず。そこで目利きのクリエイター4人を訪ね、消費動向や心境にどんな変化があったのか伺ってみました。新時代の方位磁針となるのは、意外と身近なモノなのかもしれません。

  • Photo_Masaru Katou
  • Text_Shogo Komatsu
  • Edit_Shun Koda

PROFILE

ハイロック

群馬県出身。〈ア ベイシング エイプ(A BATHING APE®)〉のグラフィックデザインを務め、2011年からデザイン業を主体に、マルチクリエイターとして活動。情報サイト『HIVISION』を運営し、グッドデザインアイテムや最新ガジェットを発信している。その他、オンラインサロン「ハイロック 大人の部活動 THE FUTURE CLUB」も主宰して、生活に刺激を与えるデザインとモノを紹介。

子どもの頃のワクワクを再確認。

ー ハイロックさんは感度の高いアンテナをお持ちですが、なにかこれまでの嗜好と違うものをキャッチするようになりましたか?

ハイロック: 僕は外に出た方がいろんなアイデアが湧いてくるので、家の中でジッとしていることはあまりないんですよね。でも、外出自粛期間があったから、いいタイミングだと思って大人になってから触れていなかった漫画を買ってみました。改めて読んでみると、やっぱりいいですね。

『推しの子』(集英社)。地方都市で産婦人科医として働くゴローの前に、彼の“推し”であり、活動休止中のアイドル・星野アイが現れるところから物語は始まる。「予想外の展開がおもしろかった。久しぶりに漫画を読んで、刺激になりました」。

ー 買ったのが、週刊ヤングジャンプで連載されている『推しの子』です。

ハイロック: SNSでおすすめしている投稿を見かけて買ってみました。序盤から、ウルトラC級の着地から始まっている物語で、おもしろかったです。漫画のストーリーは、王道より突拍子もない展開が好きなんですよ。

ー タイトルは“推しメンの子ども”って意味なんですね。かなり気になります!

ハイロック: どこでも作業できる仕事が多いので、外でばかり過ごしていましたが、家で腰を据えてじっくり読む余裕ができたのがよかったです。

“あえて”の手間を楽しむ。

ー DVDプレイヤーもピックアップしていただきました。

ハイロック: これも漫画と同じで、家で過ごす時間を楽しむために買ったもの。僕は昭和生まれなので、さまざまなものの進化を見て育つことができました。音楽だったら、カセットテープからCDになって、いまやストリーミング配信の時代。だけど、便利になったものに逆行して、あえての手間を加えるようにしています。ワンクリックで動画が再生されるのではなく、DVDを選んで、セットして再生するという過程を含めたパッケージとして作品を楽しんでいます。

お気に入りは、ジブリスタジオを追っているドキュメンタリー。「10本以上持っています。宮崎駿さんの人間らしさや、それを取り巻くスタジオの模様に、クリエイターとして勇気をもらえて、心の処方箋になっています」。そう話すハイロックさんだが、ジブリ作品は観たことがないそう。

ー どんな作品を観ていますか?

ハイロック: 観る作品は、ドキュメンタリーがメイン。芸術性をうたっているような作品だったら、大きなスクリーンで観ますが、ドキュメンタリーならソファに座ったり、ベッドに寝転んだりしながらでも楽しめますからね。この大きさで十分。サイズ的にも本を読む感覚に似ているから、没頭しやすいんです。こういうのも意外といいですよ。

アナログとデジタルの魅力。

残したいアイデアが浮かんだら紙のメモ帳を使用しているが、ちょっとしたメモや、家族への書き置きには電子メモを使用している。使用用途に最適なサイズを選ぶのも、ハイロックさんのモノ選びの基準になっている。

ー そのアナログ感を楽しむというところで、電子メモ自体はデジタルですけど、感覚としては手書きですもんね。

ハイロック: iPadやiPhoneなどのデバイスでもメモは取れるけど、僕はデザインという仕事をやっているからなおさら、手書きの重要性を大事にしています。ただ、未来へ向かうデジタルを否定するつもりはありません。iPadはすべてのシリーズを持っていて、触らずに紙派と言っているわけではないので、どちらの良さも分かっています。

ー ハイロックさんが言うと、説得力が増す気がします。

ハイロック: 家で考える時間が増えたので、発想をアイデアとして書き起こすために、以前よりいろんなメモ帳を買うようになったんです。そのなかでも、デジタルとアナログの狭間に位置するのが、この電子メモ。特にアプリと連動しているものではなく、書いたら消さなければならないシンプルな操作性が魅力です。

ないならつくる、クリエーションの気づき。

ー 自粛期間も、手と頭を動かし続けていたんですね。

ハイロック: そうですね。インプットとアウトプットは繰り返していました。そこで思いついたのが、このカッターマットなんです。工作が好きで、子どものころから必ず机の上にカッターマットを置いているんですけど、四角のものしかないなと気づいて。カッターマットでグッドデザイン賞を受賞している〈ミワックス〉さんに連絡してみたら、作ってもらえることになり、オリジナルの形とデザインで別注しました。

『HIVISION』別注のカッターマット。〈ミワックス〉特有のドットを残しながら、ロゴを大きく配置している。全4色で展開され、すべて完売。カッターマットにもデザインを取り入れる発想は、ハイロックさんならでは。

ー かなりオシャレですね。

ハイロック: 普通のカッターマットは方眼だけど、〈ミワックス〉さんは1センチ間隔のドットが配置されているから、もともとオシャレなんですよ。この別注品は、YouTubeチャンネル『HIVISION』でなにかを紹介するときの背景としても使っています。ちょっとクラフトチックになるんですよね。

ハイロック: 工作以外にも、カメラをやっている人だったらアイテム撮りに使っていたり、インテリアの敷物にしていたり、いろんな使い方をしている人たちがいるみたいです。

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