PROFILE
ベーシスト、歌手、プロデューサーとして活動する河原太朗のソロ・プロジェクト。2017年より始動させ、同年12月にソロ初EP『Red Focus』を発表。国内大型フェスへ出演するなど活躍の場を一気にひろげる。今年9月には、待望の新アルバム『LIFE LESS LONELY』をリリース。Instagram:@tanaakin
TENDREなのか河原太朗なのかはどっちでもいい。
ー 〈ファーストダウン〉が生まれたのが80年代なんですけど、河原さんはその辺の音楽との接点はありますか?
河原: 両親が音楽好きで、家でずっと音楽が流れてたんです。そこで流れてたのが80年代のブラックミュージック、アル・ジャロウとかスティービー・ワンダーとかでした。それが自分の音楽のルーツでもあります。
ー 新作の『LIFE LESS LONELY』もそうですけど、最近はいろんなジャンルを横断してなって印象があります。ヒップホップのにおいもあったり。
河原: ソウルにせよR&Bにせよポップスにせよ、どのジャンルも構成美があるじゃないですか。ただヒップホップは特に自由。音楽の作り方のセオリー自体を壊していく人が多いというか。だからある種のうらやましさというか「ズルいな、いいな」って思いはずっとあって。
ー なるほど。サンプリングなんかも影響を受けたひとつですか?


河原: それは意識せずとも、曲作りの中で馴染んできたことでしたね。ドラムの音を作るにも生のドラムを録音して引っ張ってきたりとか。TENDREの活動では、そんな作り方が初めから自然と出来ていました。いいところをピックアップして、新しい形で紡いでいくことは、リスペクトすべきカルチャーですよね。
ー アルバム『LIFE LESS LONELY』でもKANDYTOWNのRyohuさんと、一緒にやられてましたよね。
河原: Ryohuとは二十歳の頃からの仲なんです。そこから一緒に曲を作り始めるようになって、教えてもらいながら、自分でもそっちの音を探るようになっていって。
で、一見汚い言葉でも、佇まいに品のあるヒップホップが好きなんですよ。それこそ、KANDYTOWNなんかは上手いなーと思ってしまいます。例えば「俺はダメなやつ」だと歌っていても、佇まいが洗練されていたりする。そういうバランス感、好きですね。
ー 以前、新木場コーストでもRyohuさんとライブをされていましたよね。

河原: バンドのイベントで呼んでいただいたんです。僕はフリースタイルでサックスを吹いて、Ryohuがそれにラップを乗っけて。バンド系のリスナーが多い中で、それでもみんな自然と乗ってくれてて。「ヒップホップでアゲルってこういうことか」と、何となく掴んだ日でしたね。
ー 土台にR&Bがあると思うんですけど、そのルーツとは違う音って、すんなり受け入れられるものですか?
河原: 未知への抵抗って全くないんです。イメージやビジュアルにとらわれることはなくて、そこに流れている音がかっこよかったら飛び込んでいく。自分のジャンルを決めつけたり、凝り固まったりしたくないですよね。変な足枷を作ってしまうと何も出来なくなるし、思考も狭まりますから。面白そうなところには傾くし、こっちに来てくれそうな人がいたら呼びたい。まだまだ、いろいろ出来るんだろうなと思ってます。
ー これからも変化し続けると。
河原: 偏っちゃいけないっていうのが、自分のテーマにあります。カッコいい音楽をやっている人から気付きを得ることって多いですしね。
ー 過去と現在で、作曲や作詞をする上で、明確な意識の変化はありますか?
河原: 個としてのメッセージを出していこうという思いは強くなってる気がします。だから、置き換えるとTENDREなのか河原太朗なのかはどうでもよくて。自分の中にある像を、ただ形にしていきたいですね。10年後、20年後に残っていたら勝ちだし、自分との戦いでもあります。