アフターコロナの映像について。
ー コロナによって、ファッションにおける映像の重要度が変わったと思うんですが。
三原:僕の場合は、映像というジャンルが新鮮でしたね。簡単に言うと新しいおもちゃを見つけた感覚です。この2シーズンくらいで、色々なブランドの映像を観たんですが、それぞれの熱量が全然違うことがわかります。同じ映像というステージなんだけど、やる気のある・なしがはっきり表れている。
それは、予算の問題ではありません。やはり、それが映ってしまう映像って残酷だなと。ファッションって場所やモデルに予算を使って、ランウェイで盛り上げることができる。でも、映像はそういうわけにはいかない。低予算でもかっこいいブランドはかっこいいし、逆にお金をかけても、うーんっていうブランドもあります。だから、予算って結局何なんだろうって考えたり、キャスティングの問題含めて、一番いいバランスって何だろうとか、いろいろ考えるのがすごい楽しくなりましたね。

ー これから先、映像発表も増えるんでしょうかね。
三原:コロナ次第では、フィジカルじゃない発表が増えたりするのかもしれないけど、とりあえず言えるのは、パンドラの匣を開けちゃったってこと。これまで、ミラノとかパリとかでやらなきゃいけないという強迫観念があったけど、そこじゃなくてもできちゃうことがわかりましたよね。 本当にその威厳を保つことが重要かとか、それよりも重要なことがあるんじゃないかということを考えるようになりました。とにかく、映像は発展途上なので、ちゃんとした答えがないんですけど、僕は新しいおもちゃを得た感覚で映像を楽しみたいなとも思ってます。
ー 林さんはいかがですか?
林:三原さんのいうとおり、まだ誰も“答え”を見つけていない。いろいろな視点で、思い思いに発信しています。でも、そもそも答えって何だろうと疑問に思っていて、それぞれのブランドがそれぞれのスタンスで出している現状もいいなぁと。 例えば、すごいお金をかけて、30分の映像になっちゃいましたというのも、そのブランドの考えですし。断定できることはあまりないけど、一個あるとしたら、みんなが難しいと思っているのは、ディテールを見せるということ。あと、スポーツブランドじゃなくても何か機能を感じさせなきゃいけないこと。でも、それだけだと説明動画になってしまうので、同時に世界観を伝えなきゃいけない部分とのすり合わせに、みんな試行錯誤しているんじゃないかなと。でもその世界観がないと 観る人は飽きてしまうので、映像としてちゃんと楽しませることも大事だと思います。

三原:言ってしまうとファッションの映像って、業界の人しか見てないと思うんです。それは、もったいないと思うところもあります。例えばパリコレクションもショーケースとして、大きくなり過ぎた部分も。インビテーションがないと入れないし、時間を指定して映像を配信しても、世界でたった数百人しか観ていないなんてこともあります。映像の世界は、林さんの言うとおり、今はカオスな状態だなと。あと思うのは、問題も存在してないのに、その答えを見出そうとしているかもしれないなと。結局は、いいか悪いかだけが問題なだけかもしれません。
ー ファッションの映像以外もご覧になりますか?
三原:YouTubeとかでくだらない映像を観てますね。やっぱり〈ミハラヤスヒロ〉の映像は下品だから(笑)。でも、下世話な映像の中にも、ちゃんと見返すと編集をすごい頑張ってるなぁとか思いますし、どうやって、下世話感を出てるかっていうのは気になりますね(笑)。