いなたくて、“ちょっと足りてない感じ”がいい。
PROFILE
1980年生まれ。小沢宏氏に師事後、2007年に独立。雑誌やタレント、ブランドのカタログやショーでスタイリングを手掛けるなど、業界から厚い信頼を集める。プライベートではバスケが趣味、二児の父親。
Instagram:@ryotayamada______
ー 「Shelf」には、ふだんからよくいらっしゃるのですか?
そうですね。たしかアシスタントをしていた頃から、かれこれ10年以上は通っているかもしれません。仕事と仕事の合間にちょっと時間ができたら立ち寄る。そんな気軽な感じで利用しています。写真集を見ることが多いですね。
ー 写真集を見るときは、やはり仕事目線だったりしますか?
そんなこともないですよ。リファレンスにしていた時期ももちろんありますし、もしかしたら、いまでもインスパイアされてる部分はあるかもしれません。ただ、別に勉強だと思って眺めているわけではない。ほんと息抜きです。
ー 仕事抜きに、あくまで純粋に楽しんでいるということですね。好きなアーティストや年代はありますか?
とくに若い頃は、ニューカラーの頃のものをよく見ていました。アメリカっぽい風景写真。エグルストンだったりスティーブン・ショアだったり、いまでもそのあたりは変わらず好きです。結局、ものすごく普遍的だったりしますから。


ー 最近もっとも心を動かされたことは何ですか?
写真でもアートでもないんですが、奥さんの姪っ子が、ピアノの演奏会で歌をうたったときかな(笑)。自分の子どもが生まれてからは、そうしたひとつひとつに、「我が子だったら」と重ねてしまうんです。公園の遊具で楽しそうに遊んでる姿を見てるだけでも、心が動きます。
ー お子さんが生まれてから、ふだん身につける洋服が変わったりもしましたか? たとえば公園に行くなら汚れてもいいような動きやすいものを選ぶとか、以前に増してスニーカーを履くようになったとか。
服が汚れるのはまったく気にしないんですが、やっぱり、滑り台を一緒に滑れる格好はしてたいですね。といっても、ふだんから公園に行けないような服装をしているわけでもないので、丈の長いコートは避けるとか、意識するのはその程度です。

ー 山田さんは、ふだんからスニーカーをよく履いているイメージがあります。お会いするたびに違った、それも、あまり見たことのないモデルを履いていたりする。デザインや機能面における、スニーカー選びの基準はありますか?
機能や履き心地みたいなところは、あまり気にしません。基本的には、ボリュームのないローテクスニーカーが好きです。自分のなかで定番化していきたいから、あまり今っぽいものではなくて、飽きのこないシンプルなものを選ぶことが多い。そういう意味では、今日履いている〈カルフ〉のスニーカーは、デザイン的にも気に入っています。からし色の靴っていうのも、昔から好きなんですよね。
ー 20年秋冬シーズンに日本で初登場したモデル「Trampas」ですね。本日履いていただいたのは、この春登場した新色「Golden Rod」です。〈カルフ〉というブランドには、これまでどういったイメージを抱いていましたか?
レトロスポーツ的な、どこかいなたい印象ですかね、もちろんいい意味で。なんとなく、 ちょっと足りていない感じもあって、頑張りすぎてないところがいい。それでいて、カラーリングも素材使いもけっこう凝っていて、「この色とこの色を合わせるんだ!」みたいな気持ちのいい驚きもある。スポーツ用品店なんかでしか見かけないパフォーマンスラインもありますよね? 最近はトレラン用のスニーカーが街でよく履かれていますし、そっちも気になります。


ー こと足元のスタイリングにおいて、プライベートと仕事それぞれで心がけていることはありますか?
プライベートでは、とりわけ意識していることはないかもしれません。むしろ、靴に限らず、なにをどう着るかのルールはあまり設けないようにしています。一方で仕事においては、足元は、スタイリング全体をもっとも左右する要素だと思っています。たとえ靴の仕事でも、さきに洋服を組んでしまってから、最後に靴をはめ込む。それくらい重要だからこそ、スニーカーをはじめ、自分が履かないものでもついつい集めちゃいますね。