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家にとらわれない生き方に舵を切る。 NOT A HOTELという新しい暮らし。
Dual Residence

家にとらわれない生き方に舵を切る。
NOT A HOTELという新しい暮らし。

2021年春に発表されるやいなや、サービスの革新性から大きな注目を集めた「NOT A HOTEL」。その名の通り「NOT A HOTEL」が販売する物件は、自宅として使用することも、ホテルとして貸し出し収益を上げることもできるのです。すぐに10億円を超える投資が集まったということからも、その先進性と話題性がわかるでしょう。このサービスを始めたのは、EC支援サービスの「アラタナ」を創業し、「スタートトゥデイ(現ZOZO)」の傘下に入る形で、「ZOZO」のテクノロジー分野の中核を担ってきた濱渦伸次さん。そのキャリアはまさに成功者という言葉を当てはめたくなりますが、プロジェクトの始まりは、パーソナルな問題や気づきからでした。暮らしや働き方が大きく変わりつつあるこの時代に、「NOT A HOTEL」がもたらすものとは何か? そこには、これからの私たちの暮らし方を考えるヒントが散りばめられています。

  • Photo_Shintaro Yoshimatsu
  • Text_Shinri Kobayashi

観光業は、世界で一番大きな産業。

ー 前澤さんの好きなことをやれというアドバイスもこのビジネスを始める一つのきっかけだとお伺いしました。改めて、始めるまでの経緯を教えてください。

次にやるなら、自分の好きなホテルとか建築のビジネスをやりたいなと思っていました。しかも観光は、すごく大きなビジネスで、マーケットも大きい。観光業は、世界で一番のGDPのシェアの事業なんです。なのに、スタートアップ企業は、あまり多くないなと。もっと日本の良さは発信できるはずだし、日本のもっといい場所にラグジュアリーホテルを作れるはずだと思ってました。「NOT A HOTEL」の宮崎の物件を建てる土地に関して、僕らは宮崎市と2017年には提携していたんです。それからずっとプロジェクトを進めてきたんですが、銀行はお金をなかなか貸してくれない。

宮崎の物件は、一番狭い部屋でも120平米とかもあるんですね。そんなこともあって、なかなか銀行はお金を貸してくれない。可能性として誰がお金を出してくれるかと考えたら、それは買うオーナーなんじゃないないかと。だから、お金を貸してくれないという状況から、苦し紛れに考え出したのが、「NOT A HOTEL」というサービスなんです。ひょっとして貸してくれていたら「THE HOTEL」という、全然違ったサービスになっていたかもしれませんよね(笑)。

ー 別記事で、ホテル業界のデジタル化は、一周も二周も遅れているという発言もされていましたが…?

遅れてるというのは投資額が極端に低いということ。ホテル業界のマーケットは2兆円規模なんですが、そのシステムの規模は200億円ぐらいしかかけられていなくて、とても小さいんですよ。ホテル向けのシステム作りをやらないんですか? と人に聞かれるんですが、規模が小さくて…。僕らとしては、そこに行きたいわけではなく、もっと垂直にやろうと考えています。

ー ホテル業界は、まず人ありきというのが現状なんでしょうか?

ホテルの各部屋についているミニバー(冷蔵庫)があるじゃないですか。ソーダ水を何杯飲んだかとか記録をつけるアレです。「NOT A HOTEL」の場合、ドリンク一個一個にRFIDタグを付けているから、すべて自動で管理できるんです。ホテルのいろいろな不便さをテクノロジーで解決しようとしています。

ー それを推し進めていくと、コンシェルジュも要らなくなりますよね。

ホテルのフロントに問い合わせる内容は、90%以上が同じものなんですよ。例えば朝食は何時? とか、 iPhoneの充電器ありますか? とか。それを解決するためだけに、人が24時間常駐しているのは、どうなのかなと。そこは自動のチャットボットに任せて、その分だけサービスを充実させた方がいいと思うんです。だから人を減らすんじゃなくて、誰でもできるようなことは機械でやってしまう方がいいという考え方ですね。「NOT A HOTEL」も共用部をなくす分だけ部屋をよくしたりとか、いいアメニティを目指して今開発しているところですが、そういうところにお金を使うということです。例えばロビーは、人を待たせる場所だからということでどんどんお金をかけて豪華にしていったという歴史があります。だから、テクノロジーで人を待たせないようにすれば、そこは省いてもいいんじゃないかなと。

ー 聞けば聞くほど、よく考えられていますね。

「Airbnb」は、家の中の体験までは管理していないと思うんです。僕らはホテルメーカーじゃなくて、住宅メーカーだと考えています。 住むのもそうですが、貸すときにオーナー同士が簡単にやり取りできるように、リレーションも考えています。住宅メーカーであり、ホテルメーカー。プラットフォームを作っているのではなく、プロダクトを作っている感覚です。

INFORMATION

NOT A HOTEL

notahotel.com

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