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時代は健康なのか。6人のクリエイティブを支える健康白書。後編
What the Health?

時代は健康なのか。6人のクリエイティブを支える健康白書。後編

猛威を振るうコロナウイルスをまえに、自粛の日々がつづいています。それに伴い、さまざまなものに対する考え方を見直す機会も増え、とくに健康に対する意識はそのアップデートが必要不可欠となりました。幕を開けたばかりのニューノーマル時代ですが、その変化をいち早く察知し、順応しようと先鞭をつけるクリエイターたちがいます。彼ら彼女らは何を考え、どう行動したのか、そしてそれぞれのものづくりにどんな影響を及ぼしたのでしょうか。それを知るべく、今年1月、6人のクリエイターにインタビューを敢行しました。後編では、熊谷隆さん、谷尻誠さん、新羅慎二さんの3人が登場です。(3月24日発売の雑誌『フイナム アンプラグド Vol.12』より抜粋)

  • Text_Shun Koda(熊谷隆志)、Shinri Kobayashi(谷尻誠)、Taiyo Nagashima(新羅慎二)
  • Illustration_Yoshimi Hatori

No.2 谷尻誠

PROFILE

SUPPOSE DESIGN OFFICE」共同主宰。空間デザインのほか、オンラインサロン「社外取締役」や空間デザイン情報検索サービス「TECTURE」など、その仕事は多岐にわたる。
Instagram:@tanijirimakoto

よりよく働き、遊びたい。そのためには健康でなきゃ。

以前は、明け方5時まで飲んだくれて帰宅することも珍しくなかった。それでも午前10時にはちゃんと出社して働いていたのだから、問題ないでしょとも思っていた。そんな乱れた生活を送っていた谷尻さんに健康意識を芽生えさせたのは健康オタクの奥様の言葉だった。

「会社の未来のためにも食生活を変えたら? 体づくりも仕事のうちだよ」

おそらく奥様は谷尻さんがどんな言葉にだったら反応するか、確信があったのだろう。谷尻さんの心を動かし、健康の重要性を気付かせるには、大好きな仕事に絡めた方がいいということを。

「健康を意識したら、もっと楽しく働きたいという思いが強くなりました。それには体力が必要だということも」

健康に楽しく働きたい谷尻さんは、遊ぶことの重要性を説く。

「建築設計の仕事は、オファーがあってはじめて動ける受動的なもの。でも、ぼくは自らもっと能動的に提案していきたい。そのために大切なのは、遊ぶこと。提案というのは、こっちの方が楽しいですよ、気持ちいいですよとお客様におすすめすることだと思うんですが、仕事ばかりでちゃんと遊んでないひとは、いい提案はできないんじゃないかな。まずは自分が楽しまなきゃ、相手は絶対に喜んでくれません。あちこち行って、いろんな遊びを楽しむことが、提案にいい影響を与えてくれるはず。そして、もちろん遊ぶためには、健康でいることは欠かせまん」

実際に谷尻さんは、好きなキャンプやアウトドアの経験から、『DAICHI』というプロジェクトを立ち上げた。絶景地に別荘をつくり、週末だけそこで過ごす。空いているときは、ひとに貸すというサービスだ。

そもそも提案体質だという谷尻さんにとって、いまより何かをよくしようとアップデートしていくことは、物事の大小にかかわらず、当然のことなのだろう。それは、こんな健康面においてもはっきりと表れている。

「体のことを考えて、ビールを太りにくいレモンサワーに代えました。そもそもビールを飲んでいたのは、炭酸が理由だと気づいた。であれば、レモンサワーでいいなと」

スタッフのための社食堂。自分のための自宅サウナ。

以前と比べ、遥かに健康的な生活を送るようになったが、会社のトップとして、次にフォーカスしたのは家族とも言える社員の健康だった。

「ぼくらの仕事は、食事をしたり、くつろいだりする場を設計すること。でも、そんなものをつくっているひとが、ご飯はコンビニということも少なくありません。ぼく自身の生活は、健康的なものになりました。でも、会社のスタッフのなかには、ちゃんとしたご飯を食べていないひとも多くて。これじゃ、いい会社になる気がしませんでした」

こうした状況を変えるべく、つくったのが「社食堂」だ。社員と社会の食堂というダブルミーニングであり、社員やここに来るひとたちの健康を司る食堂になればいい、そんな願いが込められている。

「社員は、肉か魚かを選ぶだけで、あとは野菜や味噌汁とかが勝手についてきます。メニューをたくさんつくって、好きなものを選ばせるのはよくない。たとえば、唐揚げが好きなひとは、唐揚げばかりをオーダーしちゃうので、健康に悪い。スタッフは、家族みたいなものだと思ってて、子供の健康を考えるお母さんは、子供の注文なんて受け付けないですよね(笑)。これを食べなさい、と出すだけです」

よりよくするためのアイデアが湧いたら、仕事やプライベートなど関係なく、次々と具現化していく。それは「アイデアに価値はない」が、谷尻さんの信条だからだ。アイデアは形になって、はじめて価値を持つ。だから、考えているだけでなく、形にしていくそのスピード感も重要だという。最近では、なんと自宅にサウナをつくってしまったそうだ。

「いま、週3回か4回はサウナに入ってます。きっかけは、知人の別荘に遊びに行ったときに、ととのえ親方とサウナ師匠に入り方を教えてもらって、味わった快感です。サウナのあとのご飯があまりにおいしすぎて! 感覚が研ぎ澄まされて、脳がクリアになる感じが本当に心地よかった。だからいつでも入れるように、自宅につくりました」

話を聞けば聞くほど、つねに前向きで行動が早い。メンタルヘルスは、安定していて健康そのものだ。

「ぼく、超ポジティブなんです。それに無理もしません。たとえば、いくらお金が稼げても嫌な仕事はやりませんし、辛いことは排除します。成長するための負荷は楽しみますけど、心身ともに気持ちよく健康でいたいですね」

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