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奥深きレギュラーTシャツの世界2。
Dig It Regular T-Shirt

奥深きレギュラーTシャツの世界2。

10人いれば10通りのセレクト基準が存在するのが古着。とりわけ“年代”や“希少性”といった誰かの物差しではなく“それをどう楽しむのか?”という点を問われるのが、レギュラー古着と呼ばれるカテゴリーです。このたび、その象徴たるレギュラーTシャツにフォーカスした古着イベント「ドレギュラーTシャツ展」が約1年ぶりにカムバック! そこで同イベントを主催する「ドゥージョー(dojoe)」の中野さん、「ウェーバー(weber)」の畠中さん、「アノラック(AnoLuck)」のizmtさんの3名を再びお招きし、イベントに出品するTシャツの注目ポイント、そしてレギュラーTシャツの楽しみ方について語って頂きました。少し視点をずらすだけで浮き彫りになる、レギュラー(=普通)に秘められたイレギュラー(=おもしろさ)。……なんて深く考えず、まずは一読あれ。

  • Text_Tommy
  • Edit_Yosuke Ishii

込められた“メッセージ性”と“プリント技術”に注目。

Selected by AnoLuck
Item01_Bush Moron T-Shirt

Izmt: 最後はぼくだね。1枚目はこれ。ジョージ・H・ブッシュ元大統領のおでこに“MORON”と書かれているんだけど、てっきりマロン=栗だと思っていたら、実は栗は英語でチェストナット。調べたら、スラングで馬鹿なヤツっていう意味みたいだね(笑)

畠中: ずいぶんストレートだな(笑)

Izmt: 多分イベントや集会で着た後は捨てるという性質のモノだったんじゃないかなと。要は彼に対して批判的な人が作っているんだけど、これを着るわけですよね。……ということは自分の嫌いな人物の顔が常に胸に居座っていると。嫌いなやつをプリントして四六時中一緒になきゃいけないっていうのは……普通なら拷問ですよ。

中野: 読みが深いなぁ(笑)

畠中: 真面目にこれをデザインして作ってるわけだもんね。

Izmt: これがチェ・ゲバラだったらわかるんだけどね。さっきの中野くんの孫やねんTと近いものはあるよなっていう。

中野: ブッシュって嫌われているから、こういう否定的なメッセージがプリントされたTシャツがメチャクチャ多いよね。逆にオバマ元大統領の場合は肯定的なメッセージのTシャツが多い。

畠中: トランプ元大統領は?

中野: やっぱり否定的なメッセージが多いね(笑)

Izmt: ちなみに写真を撮っている時に気付いたんだけど……置く際に歪ませて撮ると、なおさらおもしろい。

畠中: (笑)。お札で遊ぶあの感じね。よく気付いたね……(笑)

Item02_Andy Warhol Super Star T-Shirt

中野: これは絶対売れるやつでしょ!

畠中: アンディ・ウォーホルもので、フロントのプリントが“Super Star”だもんね。間違いなくイイやつ。

Izmt: これでサイズがXLだったら、もっと良かったんだけど……。

中野: ペンシルバニア州ピッツバーグにあるんだよね、このミュージアムって。もしかしたらデザインもこのまま変わらず、いまだにこれが売ってるかもしれないね。

Item03_ Niagara Falls T-Shirt

Izmt: 次はナイアガラの滝がモチーフなんだけど、これを選んだ理由は簡単。ぼくが大滝詠一のことが好きだから。ただそれだけなんですけど…ちょっとライセンス部分を見てもらってもいい?

畠中: 「サウザン シルクスクリーン インク」と記されているけど……ってこれ、よく見るとプリント技術がスゴくない?

Izmt: そう。ドット分解されていて、よく見ると細かな色がいっぱい入っているしね。

畠中: パープルとピンクとブルーと水を表現するセンスが抜群だね。

Izmt: CMYKに分解しているけれど、CMYKの色で入れてないっていう部分にこだわりを感じるなぁ。あえて違う色を当てていったことで、こういった絶妙な色が出たんだろうね。グラデーション部分もドット分解だし。

中野: これ1987年のでしょ。80年代から90年代はこういった感じで、どこのプリント会社も技術力の高さをアピールしがちだよね。

Izmt: それでいて、ちょっと甘さのある所もポイント。この頑張っている感じが好きだなぁ。

畠中: なんだろうね。この、どことなく漂う大滝詠一感は。

Item04_ Delta Air Line T-Shirt

Izmt: これもプリント技術がすごいシリーズ。「デルタ航空」のTシャツなんですが、特色分解のリングプリントと呼ばれるモノですね。ボディをグルリと1周してプリントされているからリング(=輪)。既存のボディにデザインするのがすごく難しい技術を、しかも両面とも柄を変えてやっちゃうんだからスゴイですよね。プリントのモチーフは多分、航路のある国名とそれをモチーフにしたイラスト。富士山と鳥居は日本だね。

畠中: 本当だ! これは面白いね。なんか若干滲んで見えるのは気のせいかな?

Izmt: きっとプリントがずれているんだと思うな。完璧に合っていたら、こんな風にはならない。とはいえ、リングプリントの性質上、これが限界だろうなって。

畠中: 中野君の“ミスプリント”とも通ずると。

中野: いやいや、こっちの方が全然レベルが高いよ。普通あってもシマウマモチーフとか1版、2版なのに、これに至っては多色使いだもん。

畠中: ちなみに、同じことを日本でできるプリント会社はないからね。大体どこも横幅の最大値が40センチで、それ以上をプリントしてくれる会社ってないと思うんだよね。

中野: 脇部分の割れ目も相当ギリギリを攻めているもんね。大体こういうのって、インクが出てなかったりしてプリントも擦れがちなんだけど、これはすごくキレイで上手。これまた80年代から90年代の“シルクスクリーンドヤ期”の作品だね。

畠中: ドヤ期って(笑)。なにはともあれプリントが可愛いということで。

Item05_Amy Grant Discharge Print T-Shirt

中野: いよいよラストだね。

Izmt: 一見ただのプリントTに見えるでしょ。でも実は、人物のベース部分が抜染プリントになっています。で、ジャケットとテキスト部分だけ、若干ラバープリントを使用。普通だったら「顔もラバーでいいじゃん!」ってなるんだけどね。

中野: また、スゴイのを出してきたね。ところでこの人は誰なの?

Izmt: いや、それがぼくもこの人のことはまったく知らない(笑)。どうも歌手みたいなんだけどさ。

畠中: エイミー・グラントかぁ……聞いたことがあるような、ないような。

中野: 抜染プリントなんだけど、色の抜き方が非常に斬新。古着でも有名な〈モスキートヘッド〉なんかは一旦、色を白まで抜いてからプリントをしているんだけど、これはドット状にブリーチして色抜いたままデザインを作るという発想が本当にスゴイ!

畠中: えっ、それはどういうこと?

Izmt: ブリーチ剤を使用する場合、洗う必要があるんだよね。そうしないと色が抜けないんだけど、その結果、版ずれも起こるわけ。でもこれの場合は、洗わない抜染液を使っているんじゃないかな。それにしても袖部分にまでプリントが乗っかっているしなぁ……どうやったのか不思議で。

中野: これは絶対マネできないよ。現行品でも見ないし、革新的な抜染プリントTシャツのやり方だね。しかもこれを量産して販売していたわけでしょ?

畠中: そうなるとクオリティにも個体差がありそう。せっかくなら、もう1枚見つけて欲しいなぁ。それで見比べてみたいよね。

INFORMATION

ドレギュラーTシャツ展Ⅱ

会期:7月10日(土)、11日(日)
場所:dojoe
住所:東京都渋谷区元代々木町9-8
電話:03-6884-2425
dojoe-tokyo.com

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