同じようなファッションで通い続けて、認識されやすいようにする。
ー 先ほどのオレンジのストラップの他にも、取材にまつわる道具を持ってきていただきました。
丸山:海外取材にはこのたばこケースを持っていきます。雨が降っても濡れないし、ポケットに入れておいても、くしゃくしゃにならないんです。自分は電子たばこに移行したんですけど、国によっては違法だから、紙たばこにします。スラムは蚊が多いことがよくあるので、蚊よけに煙をくゆらすことも。たばこは通貨の代わりになるというか、謝礼がわりによくあげたりするので、くしゃくしゃにならない方がいいんです。濡れてダメになると、お金が使えなくなるようなものなんで。

ー そう聞くと、大事だなと思いますね。
丸山:取材相手で違法な取引をやるような人と折衝する時に、このたばこケースがあると話が1つ広がるんですよ。「それ何?」「たばこケースだよ」「日本人はたばこを大事にするのか?」「いやいや、雨から守るため」「おれにくれよ」「やだよ(笑)」とかね。たばこケースは安くて、作業着の店のレジ横とかで売ってます。

ー お財布から出していただいた、このカードみたいなのは何ですか?
丸山:イスタンブールで入手した栓抜きです。〈ポーター〉の小ぶりな財布を使っているんですが、この栓抜きを差し込んでおけば、お尻のポケットに入れていても他のカードが割れません。以前、クレジットカードを割ったことがあるんですが、海外で使えないのは地獄なんでね。座るところが椅子ならいいのですが、ガタガタしたところだとけっこう割れますから。
ー 海外取材等で旅行する時のアイテムは、現地調達することが多いのでしょうか?
丸山:Tシャツや靴下、下着、歯ブラシなどの消耗品はそうしていますね。昔は上着などもそうしていましたが、取材相手に印象付けないといけないので、いまはそういきません。数日取材したとしても、東洋人だとちゃんと自分だと認識されないことがあるんです。同じようなファッションで通い続けて、認識されやすいようにしています。キャップも印象付けとしてかぶっていますが、それを避けたいわざと外して手ぬぐいを首に巻くこともありますね。


ー 丸山さんは昔からバックパッカーとして旅をされていたんですよね。その時といまとでは、旅のスタイルに変化がありましたか?
丸山:昔はできる範囲内で取材のような旅をしていました。でも、いまは取材ありきというか、興味ありきで、自分が行きたい場所、見たいものがあって行っています。なので、いまでは行かされる旅というのは滅多にないですね。たとえば、アメリカをただ旅行したいのではなくて、アメリカのこれが見たいというのがあって、確認しに行く。スタイルが変わったというより、やり方が効率的にはなったかな。
ー それは考古学を学んでいた学生時代からでしょうか?
丸山:大学時代も取材みたいにリサーチしたり、誰かの話を聞いたりしていたんですが、いま思えば稚拙でしたね。気持ちとしてはいまも当時も同じだけど、テクニック面や、取材の掲載先が確保できていたりと自分を取り巻く環境が変わったのも大きいです。