勝ちパターンが見えてもずらしたい。
ー 大北さんは今回のポップアップの場をつくるうえで、どういった点に悩まれていたんですか？
大北：最初の頃は、なんとなくキヨスクとブックフェアみたいな要素があるといいな、といった話をしていたんですよ。それで、すごく早いタイミングに「ソルトアンドペッパー」のロゴも描いてもらったステファン（アーティストのStefan Marx）から、ポップアップのために頼んでいたロゴが上がってきて。でも、そこから難航しましたね。
佐藤：ぼくらとしては〈ビームスT〉単体では実現できないような表現を構築したいと思っていましたし、「ソルトアンドペッパー」とだからこそできるような展開にしたいと考えていたので、どうしましょうか、と。
大北：なかなか正解がわからなくて。美術館みたいな内装にしたら気軽に楽しんでもらえなさそうだし、アートブックを平置きで陳列するだけでは、ぐるっと店内を回って終わりになっちゃうな、と。本棚を置きつつ、壁に写真を飾ったり、空間の中央に立体物を置いてその先にアートTシャツなどのプロダクトが並んでいたら、ストレートにお客さんに伝わるかな、だとか。いろんな意味で〈ビームスT〉らしさを意識しつつ、それをどう「ソルトアンドペッパー」が提示する世界観に溶け込ませるかを考えたんです。いままでの事例から「ビームスT 原宿」の着地が見えてきましたが、そこから少しずらすようにもしています。
長辺が2メートルほどあった木箱の中身は、中央に展示されるアラン・グレゴリーの作品。緩衝材などで厳重に梱包されていた。
ー そういったやりとりや、考えの変遷を経て、空間がつくられていったんですね。
大北：そうですね。中央にアラン（アーティストのARRAN GREGORY）の全面ブラックミラーのサソリをモチーフにした立体作品『Singularity』を展示して、それを囲むように考えました。壁に小浪さん（写真家の小浪次郎）が「ソルトアンドペッパー」オープン時に展示したB0サイズの作品などを飾ったり、クリアのトタン板で小屋をつくってその中にZINEを並べたり。外にはガラステーブルの中にチョウくん（フイナムでも撮影をお願いしている写真家のCho Ongo）の作品の入れて、その上にシノさん（陶芸家のSHINO TAKEDA）の作品を置いて。特にアランの作品は個人的にも注目していただきたい作品ですね。
佐藤：けっこう前の話なんですけど、大北さんが「最近、立体のアート作品にすごく興味がある」って話をされていたときがあって、それがアランのことだったんです。それで、一緒にロンドンに行ったときに本人に会いに行きましたよね。目の前で作品を見て、めちゃくちゃカッコよくて爆アガりしちゃって（笑）。
大北：めちゃくちゃ良かったよね。イギリスの奥地のだだっ広い空間で。アランは6年ぐらい前に日本へ来ていたときに紹介してもらって、そのときに数日遊んだり、その後もポスターを買わせてもらったりしていて。『パンサー』という作品を個人でも購入したのですが、大きすぎて送ってもらうタイミングを悩んでいて、いまだに受け取れていないんです（笑）。
長辺165センチもある作品は、大人5人がかりで持ち上げ、台座に配置後は歓声が上がるほどの大盛り上がり。日付を跨ぐか跨がないかくらいの時間にも疲れを見せず、真剣な面持ちで表面を拭く佐藤さん。作品は大北さんいわく「支点が考えられていて想造以上にバランスがいい」とのこと。もちろん「ビームスT 原宿」で展示販売中。
