PROFILE

東京生まれ。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業後、(株)資生堂宣伝部入社。ロンドンのデザインスタジオMadeThoughtに1年間出向後、帰国。2005年よりフリーランスのアートディレクター/グラフィックデザイナー。
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フラットな目線でデザインしてくれるという確信。
ー 金子さんは「ザ・レクリエーションストア」の立ち上げのために親交のあるクリエイターをアサインしていますが、平林さんだけは初めてのお仕事だったそうですね。なぜ平林さんにオファーしたのでしょうか。
金子: 〈アウトドアプロダクツ〉は50年近くの歴史があるシンプルなバッグブランドということで、それを現代に再構築して新たに発信していくためにはどうしようかと考えたとき、真っ先に平林さんにお願いしたいと思ったんですね。バッグやグッズのデザインをお願いした〈テンベア(TEMBEA)〉の早崎篤史さんのプロダクトは道具に近い感覚でデザインされていて。機能として存在するデザインが偶然かわいいというか。その感覚ってアウトドアの理念だと思っていて。

ー 機能としてつくられたものが結果としてかっこいい、かわいいということですか?
金子: そうですね。その感覚を共有できる人たちにお願いしたかったんです。そこでロゴとかのアートディレクションも、どなたかのフィルターを介して再発信したいということで、平林さんにお願いしたいなと。平林さんが手がけてきた仕事を拝見すると、やはりかっこつけるためではなく機能としてのデザインを感じていたので、〈アウトドアプロダクツ〉に関してもフラットな目線で見ていただけるという確信がありました。その意味でも平林さんしかいないだろうと。〈アウトドアプロダクツ〉はある種デザインされていない無垢なものなので、そこに興味を示していただけるんじゃないかなと。最初の打ち合わせは久々にめちゃくちゃ緊張しました(笑)。内心はドキドキでしたけど、どこか自信があったんです。
ー 平林さんとしては、今回のお仕事を受けられた要因としては何が大きかったのでしょうか。
平林: わたし、基本的に仕事は断らないんですよ。仕事の種類ではなく、精神的にアップアップになっちゃってできない、というようなことはあるんですが。今回は単純に好きな分野だったということが大きくて。わたしは自分では全く絵も描かないしコラージュもしない。自分から表現したいものって何もないんです。お題があって、そのために何かをつくるというタイプ。見たことがないものをつくるというよりは、要素を整理して世界観をつくるという仕事も好きですし、プロダクトもメンズの方が圧倒的に好き。これはわたしの先入観かもしれないけど、メンズの仕事って女性アートディレクターに依頼がほとんどないんですよ。

金子: たしかに、メンズブランドの女性アートディレクターっていないかもしれないです。
平林: わたしの場合、レディースとメンズが一緒になっているブランドのアートディレクションはありますけどね。〈アウトドアプロダクツ〉はユニセックスだけどスタッフは男性チームだったので、男性メインでこういうプロダクトが好きな女子を待っているという切り口なのかなと思ったんです。そういうのも実は好きなんですよ。
金子: 「レショップ」でも女性デザイナーにメンズの洋服を無理やりつくってもらうことがあるんです。やっぱり女性には男性では出せないバランス感がにじみ出てくるというか。その意味では、平林さんにお願いして何が起こるんだろうという期待感はかなりありました。