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ザ・レクリエーションストアに見る、デザインと機能の関係。 vol.2 平林奈緒美
OUTDOOR PRODUCTS The Recreation Store

ザ・レクリエーションストアに見る、デザインと機能の関係。
vol.2 平林奈緒美

1973年に創業され、いまなお幅広い世代に愛されるバッグブランド〈アウトドアプロダクツ(OUTDOOR PRODUCTS)〉。そのフラッグシップショップ「ザ・レクリエーションストア(The Recreation Store)」がオープンして1ヶ月が経とうとしています。平林奈緒美氏がアートディレクションを監修し、バッグやグッズのデザインは〈テンベア(TEMBEA)〉の早崎篤史氏。そして、ウェアは〈ブラームス(blurhms)〉の村上圭吾氏が手がけるなど、第一線で活躍するプロフェショナルが集結しました。
全3回でお届けする第2回には、ストアロゴをはじめとするアートディレクションを手がけた平林奈緒美氏が登場します。ハイブランドからセレクトショップ、ファッション以外にも数々のブランディングをビジュアル面から支えている敏腕アートディレクター。その確かな審美眼とデザインアプローチを「ザ・レクリエーションストア」のディレクターである金子恵治氏との対談から紐解きます。

  • Photo_Shinsaku Yasujima
  • Text_Shota Kato
  • Edit_Shun Koda

カラフルな蛍光色で機能をデザインする

ー 下げ札も特徴的ですが、商品のサイズに関係なくワンサイズでデザインしていますよね。

平林: 最後に下げ札をつくった覚えがあるんですけど、たしか「量販店感」みたいなことを話しましたよね。量販店の中で使っているものってコスパが良くて機能的な故に、結果魅力的なものってあるじゃないですか。商品の大きさに合わせて下げ札の大きさも変えるみたいな、一般的なアパレスショップでするような気配りは、逆にこのブランドには必要ないって思ったんです。

金子: 最初にご提案いただいた、バッグに付いてくるいろいろな下げ札をひとつにまとめてしまうというアイデアも秀逸でしたけど、この量販店風のデザインが一番好きですね。バッグのサイズによって色違いの蛍光色のシールが貼ってあって、これでサイズ表記がわかるという。プロダクト感ってこれだよなって。

ー 平林さんのデザインにはモノクロの印象が強いので、部分的にでも蛍光色を使っているのは意外でした。

平林: わたしにとって蛍光色って色じゃないんですよね。白と黒と同じというか。デザインの選択肢でもあるし、自分がモノを買う選択肢でもあるんです。なんでだろう。

金子: “蛍光色は色じゃない”、すごい一言ですね! 確かに文房具のポストイットは蛍光色ですし、工事現場の制服なんかもそうですね。ファッションというよりはプロダクト的な色なのかも。ぼくらからはその発想に至らないので、グラフィックからの視点で言ってもらえるといろいろ気付きがありますね。

ー 貴重な経験ですね。それをバッグに特化した環境で積めているのも大きいんじゃないかと思います。

金子: そうですね。「ザ・レクリエーションストア」の店頭に立ってみて、バッグの接客がめちゃくちゃ楽しいということに気づいたんですよ。洋服はいろいろな思惑やサイズ、好みがあって、その人のストライクゾーンは狭くなると思うんです。でも、バッグを選ぶ要因は、用途と色くらいなのでシンプルなんですよね。だから、こちらからお客様に声をかけることに抵抗がないというか。「何に使うんですか?」「どんな色が好きなんですか?」「車のトランクに入れっぱなしにしてもかっこいいですよ」という感じに。「この革ジャン、こうだからかっこいいんですよ」とは違って、コミュニケーションしやすいんです。平林さんは気になるバッグありましたか?

平林: わたし、着る服に合わせてカバンを変えたりしないんです。すごく荷物が多いので、それを入れ替えるのは事故の原因になるし、そんなことに時間を使うのがもったいなくて。布のトートはいっぱいあるけど、基本的には小さい斜めがけ、ノートパソコンを入れる大きいバッグ、旅行用の極端に大きいバッグ、この3つなんですね。でも、〈アウトドアプロダクツ〉のバッグを見てみると、目的に合わせていろんな大きなを持っているのも良いなと思いました。これなんかはバンドエイドを入れたりするのに便利そうだし(笑)、大きいボストンバッグにはテニスのラケットがすっぽり入るな、と思ったり。

金子: いやあ、シンプルですね。逆にぼくはめちゃくちゃバッグを持ってるんですよね。洋服の数も少ないんですか?

平林: 量はありますよ。でも、基本はセットアップなんです。これとこれを合わせたら楽しいんだろうなという気持ちは一切なくて(笑)。気に入ったものは一度に3つくらい買っちゃうんです。着るもの、予備、予備の予備という具合に。それに上下で劣化具合が変わってくるのが嫌なので、トップスしか着ていなくても、パンツも一緒に洗って、洗濯の回数を一緒にしています。

金子: ぼくにはない発想で、勉強になります。

ー 金子さんが平林さんを接客したらどうなるんでしょうね。

金子: こてんぱんにされるかもしれないな(笑)。

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